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プロローグ

鈴木奏太すずきそうたさん、あなたはたった今、不幸にも亡くなりました。あなたの人生は終わったのです」

 俺は真っ白な部屋の中、唐突にとんでもないことを告げられた。


 そんなこと言われても信じられたものじゃない。

 目の前にあるのは白い事務椅子と事務机、机の上にはプリントが乗っていた。

 そして、俺の人生終了を告げた相手はその椅子に腰掛けていた。


 眼前にいるのは天使。

 見ればわかる。だって羽生えてるし。

 やはり天使というものは想像通りに美しいものらしい、腰までの艶のある長い黒髪、しっかりとした健康的な体。

 年は見た目では俺と同じくらいだろうか。

 その天使は自体が飲み込めずオロオロしている俺を見据えていた。

 ……俺は死ぬ直前の記憶を思い出してみる


 その日俺は運が悪かった。

 普段高校にも行かず引きこもっていた俺は、その日に限っては欲しい漫画の発売日で意気揚々と出かけたのだが。

 歩けば黒猫が目の前を横切り、靴紐は切れ、書店までの信号には必ずつかまる。

 とにかく運が悪かった。

 そんな折、プアアアァンとクラクションの音が聞こえた。

 そう、トラックである。


 ……そうだ。俺はトラックに轢かれて死んだんだっけ。

 はっ、そういえば俺のパソコンのデータ見られてるんじゃ……。

「あの、天使さん、俺のパソコンってどうなって……ってあれ?」

 目の前の天使はと言うと腹を抱えて笑い転げている。

「あっはははははっ、パソコンがどうなったかって?  い、今あなたの家族に見られてる所よ」

「へっ?」

 その言葉を聞いて、俺は愕然とした。

 そう、そのパソコンには俺の黒歴史が詰まっているのだ。

 この天使もどうやらそれが覗けたらしく、大笑いしている。

「あっはははは、もう何これ、おもしろすぎでしょ」

「やめろおおおお、見るなあああああ」

 絶叫し、なんとか恥ずかしさを誤魔化そうとする俺に天使が近づき、耳元でニヤニヤしながら、

「『俺の右手に宿ったこの魔王の力……もし解き放てば世界は破滅するだろう』ってなにこれ、おっかしーい」

「やめろおおおお、読むな、俺の厨二病を掘り返すんじゃなああああい」

「あっはははは、はーっ笑った笑った」

 こいつぶっ飛ばしてぇ。

「さてと、鈴木奏太さん、あなたには地獄にいってもらいます」


 …………はあ⁉︎


「ちょっと待って、なんで俺が地獄に?」

 すると天使は不思議そうな顔をして。

「なんでって、悪いことをしたからですよ? そんなこともわからないんですか?」

 悪いこと? まったく覚えがないんだが。

 小馬鹿にした顔に怒りをおぼえつつ俺が首を傾げて困っていると。


「あっ、もしかして……」

 さーっと血の気が引いた顔をして慌てて机の上のプリントを必死に見だした。

「あ、ズレてる……」

 今こいつなんて言った。

 ズレてる? なにが?

「うぅーーどうしよう、どうやって誤魔化そう」

 おいおいなんか誤魔化すとか言い出したぞ。

「えっと。鈴木 奏太さん、地獄に行ってください。お願いします」

 いや、頭下げられても困るんだが。

 と言うかお願いしますってなんだよ。

「あの、殺す相手を間違えてしまいまして……」

 おいちょっと待て、どういうことだ? 殺す相手を間違えた?

 てことは俺は間違えてこいつに殺されたってのか?

「あの……ごめんなさい!」

「ごめんなさいで済んだら警察にはいらねぇんだよ!」

 大声で叫んでしまった。いや、叫ばずにはいられなかった。

 さっきまでバカにされていた恨みも相俟あいまって。


「ちょっと! そこの罪人! うるさいわよ。黙って地獄に行きなさいよね」

 俺を罪人と思い込んでるのか他の天使が荒い口調で絡んできた。

「なんだと! こっちは間違えて殺されてんだぞ、これがうるさくせずにいられますかっての」

「なんですって? ……はぁ、また間違えたのアルカ?」

「うぅー、すみませんガルネ様」

 さっきまで俺に向けてた威厳みたいなのはどこいったんだよ。

 ていうか、またって言ったか?

 こいつ何度も人違いで殺してんのかよ。


「……あのー」

「なに?」

「間違えたのなら俺は生き返れるんでしょうか?」

 俺は少しはまともそうなガルネという天使に尋ねた。

「ああ、無理ね」

 へっ?

「ちょ、なんでだよ。間違いだったんだろ? だったら生き返らせてくれよ」

 俺は切に願った。

「うん、あなたの言いたいことも分かるんだけど無理なの。一度死んだ人は天界規定で生き返れないことになってるの。だって死んだ人が生き返ったら大変な騒ぎになるでしょう?」

 確かに一理ある。あるんだ、あるんだけども……。 頭では納得できるが心では納得いかない。


「なあ、頼むよ、生き返らせてくれ」

「あなたしつこいわね、とはいっても可哀想だし……」

 ガルネは少し考え込むと、

「あなたも異世界に行く?」

 意味のわからないことを言い出した。


「は? 異世界? それに『も』ってなんだよ」

「えっと、これからその子、アルネを罰として異世界に追放するんだけど、あなたも行きますか? ってこと」

 えっと何言ってんだこの天使。

 つまりあのバカ天使の罰に俺を巻き込もうとしてんのか?

「おことわり……」

 ……丁重に断ろうと思ったが……。

 ちょっと待てよ。

「あの、異世界ってどんなところなんでしょうか?」

 俺は素朴な疑問をぶつけてみる。

「うーん、あなたのいた世界と違うところを挙げると ……魔物がいて、魔法が使えるってところかな」

 なにそれ、超楽しそうじゃん。

 特に魔法が使えるってのが一段とゲームの世界観を醸し出してるよな。

 これはひょっとすると悪くないかもしれない。

「よし、わかった。行きます!」

 俺が豪語するとガルネは驚いた様子で、

「本当にいいの?」

 と言ってきた。

 どうやら俺が承諾したのが意外だったらしい。

 あそんな世界なら誰だって楽しそうだと感じそうなものだが。

「わかったわ、じゃあ異世界に送るからね、ほら、アルネ来なさい」

「うぅー、ガルネ様許して下さい。掃除でもなんでもしますからー」

 あのアホ天使はガルネの裾を掴んで泣きながら訴えている。

 こんな堅苦しいところより、異世界でのんびりした方が楽そうなものなのだが。

 天使にはここの方が良いのだろうか。


「じゃあ、行ってらっしゃい。たまにはあなた達のこと見ててあげるから」

 俺とアルネの足元に輝く魔法陣が現れた。

 おおっ。これで転送するのか。

 異世界生活が始まるのか。

 さらば引きこもりだった俺。

 これから異世界でのんびりと暮らして……

「では、魔王討伐へ、行ってらっしゃーい」

 ちょっと待て、魔王討伐なんて聞いてないぞ!


 そんなことを言う間も無く俺とアルネは白い光に包まれた。


読んでいただきありがとうございます。

これから少しずつ更新していきたいと思います。

初投稿作品ですので、下手な文法、稚拙な文章、誤字脱字等々あるかと思いますが暖かい目で見ていただければ幸いです。



主人公の見た目は

身長165cmと小柄

茶髪で茶色の瞳をもつ、18歳の高校生となっています。



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