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座標を述べよ


『今回の殲滅数と活躍に応じて成績が加算されるそうだから、頑張って下さい。だそうじゃ』


  なるほど。それならより一層張り切る生徒が増えるだろう。今話をしている間も、至る所から攻撃音が聞こえてくる。


『じゃから妾も俄然張り切っておるぞ。すでに北地区は壊滅させた』


「兎をですか。流石に仕事早いっすね」


『うん?  兎は知らんが、ひとまず北地区は妾が制圧した』


「やめてやれよ!  あんたいつか刑務所入ることになるぞ!」


  本当に何考えてんだこの人は。地域住民の避難とかちゃんと済んでるのか。もし死人なんて出ようものなら大騒ぎだぞ。


「ん。とりあえず死人は出てないみたいだね。ただ相当怒ってるみたいだけど」


 ささやくように教えてくれたのはオーガスト先輩だ。彼女は両手をそっと耳に当て、静かに耳を澄ましている。ただ、その両手の位置は、顔の横ではなく頭の上だ。


「先輩、それ……」


『あの、少し触らせてもらっていいかしら?』


 先輩のいくつものピアスがついた耳が消え、代わりに頭から銀色の犬耳が生えていた。肉体変化の述式転化だ。やべぇ。スゲェ似合ってるし、可愛いですけど。


「くすぐったいからダメ。あ、西地区に兎発見。二十体くらいいるね」


  犬の聴覚を駆使して兎の位置を次々に割り出していく。やはり、この人も飛び抜けて優秀だ。


『ほう、良かろう。座標を述べよ。妾が塵にしてくれるわ』


  一瞬ギラリと獰猛な笑みを見せたじゃろ先輩から、爆発的な図書エネルギーが生み出される。


「ここから西南西に二百六十二度、距離十三点七三キロ。近くに民家があるけど、避難はすんでるみたいだね。面倒だし、撃っちゃえば?」


『ふむ。良いじゃろぅ』


「良かねぇよ!  面倒だからで家吹き飛ばされてたまるか!」


『行くぞ』


「行っちゃダメ!」


鯨雷弾ホエール!』


  オレの制止など一切無視して、じゃろ先輩が鋭く叫ぶ。その瞬間、彼女のそばの地表から、巨大な物体が射出された。それは見上げても、全て見渡せない程の巨鯨。高速で飛び出していったそれは、視界に収まることなく一瞬で空を駆け抜けていった。

  数秒後、


「命中。良かった。民家に被害なし」


  鯨が撒き散らしていった水飛沫に濡れながら、オーガスト先輩が報告した。


『ふむ。まあ、こんなものじゃろ。なかなか良い連携じゃったではないか。次も頼むぞ』


「いや。あんたの技うるさすぎ。耳がわれるかと思った」


「ちょっとじゃろ先輩!」


  呑気に話している二人に割って入る。


「街中で鯨雷弾ホエール撃っちゃダメって言ってるだろ!」


  鯨雷弾ホエール。全長四十メートル、重さ四トンの巨大鯨を亜音速で射出する、じゃろ先輩の技だ。

  射程は約二百五十キロ。小型の図書ミサイルと同等の破壊力を発揮する。また、目標着弾までこの巨鯨は海水の塊であり、一切の迎撃を受け付けない。さらに、じゃろ先輩のさじ加減でいくらでも連射可能という驚異的なおまけつきだ。

  このじゃろ先輩の鯨雷弾ホエールに対抗するための図書兵器が五十年練られ続けているが、未だに完成の知らせはない。

 流石は星六魔書。中規模戦闘における戦略級破壊をいとも簡単に生み出す。


『何をそんなに慌てておる?  約束通り人のおる方には撃っとらんじゃろ』


「あんたの技は使用自体が図書士法で禁じられてんだよ!」


  この人が持つ禁止技は数えだしたらキリがない。それでいて、全く躊躇なくぶっ放すものだから、困るのだ。


『それに、今回はきちんと生徒会から使用許可も得ておる。安心せい』


  全然安心できねぇ。ほんの少しズレが生じただけで大惨事を起こしかねない技の使用を許可するって、図書が狙われてるからって冷静な判断力を失いすぎだ。

 本バカしかいないのか、この街は。

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