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がちんこじゃぞ!


「いいんじゃない。あんたの好きにすれば」


「そんな……。オーガスト先輩まで他人事のような……」


「他人事だもん」


  日付変わって本日、チーム299は変わらず少し磯臭い部屋に集まっていた。本当は今日の午前中のうちに改修工事を行なって欲しかったのだが、明日まで待って欲しいとのことだったので仕方ない。

  なので、オーガスト先輩が蹴り壊した扉も、削った床もそのままだ。


『つれないのぅ。もう少し親身になってやれば良いのに。確かお主も去年、生徒会に誘われておったじゃろう?』


「え、本当ですか!?」


 じゃろ先輩の発言に、リーさんが激しく反応する。いや、待てあんた何でいるんだ。

  興味津々に迫るリーさんに、オーガスト先輩も少したじろぐ。


「ちょっとだけ。その時同じチームだった先輩に、選挙だけは出てくれって頼まれて」


  確か去年の生徒会長選挙の時だ。なので、リーさんとは少し状況が異なる。ちなみに、この学校、生徒会選挙は春に、生徒会長選挙は秋に行われる。それでおそらく、リーさんにお声がかかったのだろう。

  去年の生徒会長選挙はよく覚えている。じゃろ先輩が大演習ルームをぶっ壊したのだ。また、オーガスト先輩の悪名の高まりがピークだった時に、生徒会長選挙に出ることになったものだから、学校中の生徒が注目していた。


『なにがちょっとじゃ。お主、えらく張り切っておったではないか。結局準決勝まで勝ち進んだくせにのう』


  ちなみにじゃろ先輩はトーナメント初戦で失権になった。


「あ、あれは。うちのチームが成績困ってたのと、オーガスト家が下手に負けられないってのもあって」


  意外だ。先輩お家のこととか気にしてるんだ。全然そんな風に見えない。


「あの、お二人共、先ほどから何の話をされてるんですか? 選挙の話ですよね?」


  リーさんはまだ知らないのか。


「うちの学校の生徒会長ってね、バトルで決めるの」


『そうじゃ!  がちんこじゃぞ!』


  そういうの好きなんだろうなぁ。二人共嬉しそうだ。


「えぇ!?  バトルって……闘うんですか?」


  最初は誰しも驚くが、よく聞けば納得する話だ。


「図書士ってのは今じゃ、軍隊より戦闘が多いからね。『強い』ってのはすごく重要なファクターなんだよ」


「そ、それは知ってますが……。じゃあ、生徒会長って言うのは」


「この学校で一番強い人のことを言うの」


『年に一度の最強決定戦じゃ。学祭とも被っておるし、まあ、完全にお祭りじゃの』


  あと、一応軍や図書士協会のスカウトへのお披露目の意味もある。


「えぇ……。じゃあ選挙じゃないじゃないですか」


  実はそうとも言えない。


「いや、投票はするよ。一人一票ちゃんともってる」


「え?  でも何か意味があるんですか?」


  おおありだ。


「誰が生徒会長になるかを当てた人に豪華景品がある」


「賭け事じゃないですか!  ふざけないで下さい!」


「いや、これが実際にあるし、胴元は校長だからね」


「なっ!?  う、うそですよね!?」


「リー」


 オーガスト先輩が優しい声でリーさんを呼ぶ。


「は、はい?」


「諦めな。ここってそう言う場所なの」


「もー!!」


 リーさんは机に突っ伏してシダバタする。こら、机が動くでしょ。


『じゃがのう。最近はこの賭けもあんまり盛り上がらんの』


  そうなのだ。大変残念なことだが。


「そ、そうですよね!  こんなことダメだって皆さん気が付いたんでしょう!」


「いや、そうじゃなくてね、優勝者が毎年決まってるんだよ」


『答えのわかっとる賭け事ほどつまらんものはないからのう。おかげて配当はないに等しいし』


  じゃろ先輩は心底残念そうだ。


「確か今年はじゃろ先輩出場禁止なんですよね。対抗馬ゼロじゃないすか」


「あ、あの、皆さん随分落ち込んでいらっしゃいますが、どういう……」


「それはね、我らが生徒会長が強すぎるってことなんだよ。姫」


  でやがった。いったいどこから入ってきたのだろう。「貴公子」トーマス・バッシュロがリーさんの手を取っていた。

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