さっさと済ませるぞ
「ほう。今回は随分参加者が多いな。結構、結構」
演習ルーム奥のステージに登壇したのはコーエン先生だ。だが残念。ここにいるほとんどの生徒は、生徒会メンバーを見にきた野次馬だ。生徒会の登場で課題の参加者は一気に減ったはずだ。それ程までに生徒会チームは抜きん出て優秀なのである。
「さて、儂は早く帰って孫の誕生日を祝わねばならん。さっさと済ませるぞ。質問がある者は、儂以外の者に聞いてくれ」
ちゃんと仕事しろよ。あとおめでとうございます。
「今年最初の特別課題はこれだ」
コーエン先生が右手の指を鳴らすと、演習ルーム内の全ての生徒の手に、小冊子が握られていた。その表紙に大きく 「火焔兎の討伐」と書かれている。
今更コーエン先生の能力に驚く生徒もいない。それぞれ冊子をめくって内容を確認している。
「『火焔兎』ですか。たしか増殖型の魔獣ですよね」
「ぼくこれ要らないから、チームのみんなに記念にあげよう」
「面倒だなぁ」
「読みながらで構わないから聞きなさい。今回、書史学・魔獣学講師のグリーマン先生が研究のために取り寄せていた『火焔兎』が配送途中で投げ出した。諸君らにはその捕獲、討伐をお願いしたい。あと詳しいことはその冊子に書いてあるから、各自よく読んでおくように。ふむ」
滑らかに話していたコーエン先生の口調が鈍った。どうしたのかと、生徒らも視線をあげて先生を窺う。
「今回は本当に人数が多いな。生徒会もおるようだし、一般生徒には少々酷か」
講師陣から見ても生徒会は別格なのだ。
「よし。ポイント制にしよう。一体につき、捕獲は三ポイント。討伐は一ポイント。一週間後にその合計で競ってもらう。そして、特別に上位三チームまで達成証書を与える。皆、励むように」
ざわっと、生徒間にどよめきが起こった。生徒会の登場で諦めかけていた参加者達の目に希望の光が灯る。「火焔兎」は単体ならそれ程強力ではない。どのチームにも十分、挑戦する価値のある課題内容だ。
「せ、先輩! これなら私達にもチャンスがありますね!」
リーさんが嬉しそうに言うが、正直オレはただただ面倒なだけだった。




