気持ち悪いです
長く美しいエメラルドグリーンの髪をたなびかせ、白い制服にそのはち切れんばかりの肉体を押し込んだ副会長は、男女問わず絶大な人気を誇るお方だ。
抜群のプロポーションと、華麗なルックス、そして眼鏡と、良いところを全て詰め込んだような彼女は、この学校の顔でもある。
ファンクラブもいくつか存在し、かくいうオレも会員だ。
「これはこれは、女史。ぼくはですね……」
「大丈夫かしら。変なことされなかった?」
うおお! オレもあんな感じで無視されたい!
「は、はい」
会計に触れらていたリーさんの手を優しく握り、ポケットから取り出したハンカチで拭う。
「ごめんなさいね。驚かせてしまったかしら。でも、あなたに話があるのは本当なの」
「い、いえ。でも、お話って……?」
え、何かリーさんキャラ違くない? 声音が完全に乙女だ。
「簡単よ。あなた、生徒会に興味はないかしら」
先ほどまでやかましかった演習ルームが、一瞬静まり帰った。
「ええええええ!!」
数秒経て、爆発するかのような叫びがこだました。周りの生徒全てが驚きにつつまれる。
「え、生徒会にあの子が? お姉様とバッシュロ様に加えて?」
「どう言うこと! 生徒会は今のお二人でこそ完璧なのに!」
「でもよく見ろ! あの子もめちゃくちゃ可愛いぞ!」
口々にそれぞれが好き勝手話す。課題発表まであと十分もない。果たしてこの混乱は抑えられるのか?
「私が、生徒会に……?」
「そう。難しく考えなくて良いわ。今、生徒会は人手不足で。だから優秀な生徒何人かに声をかけているの。楽にしてちょうだい」
「僕としては君のような美しい人が入ってくれるなら大歓迎だよ!」
「黙ってなさい」
「あの、私は……」
何か言いかけるリーさんを、副会長は静止した。
「また後日、改めて聞きにくるわ。それまでゆっくり考えてみてちょうだいね」
「はい……」
「ありがとう。さぁ! 皆さん。そろそろ課題発表です。静粛に!」
流石は副会長。演習ルームのどよめきを、一声で鎮めてしまった。オレの心配など完全に杞憂だった。
生徒会メンバーがオレ達から離れると、自然と人だかりも移動していった。まったく、嵐のように現れ、去っていったな。実害がないだけじゃろ先輩よりはマシか。
「あ、あの、私どうしたら。というか、このハンカチは……」
まだリーさんは混乱から抜けきっていないようだ。しかしまあ、それも当然。絶世の美男子と美女にたて続けに話しかけられたのだ。鼻血出して倒れないだけ良い。オレはそういう生徒を何人も見て来ている。
「良いんじゃないかな。好きにしたらいいと思うよ」
セレンは基本てきとうだ。
「せ、先輩……」
「良いんじゃない? 好きにすれば。あと、そのハンカチくれないかな」
『ちょっとサクラ、気持ち悪い!」
シンシアに頬をつねられる。
「もう良いです。オーガスト先輩に相談します。あと、気持ち悪いです」
先ほどまで乙女モード全開だったリーさんとは思えない辛辣な発言で、彼女が正気に戻ったことが確認できた。




