表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/140

なに面倒がってるの


「まあ、嘘泣きはこれくらいにしておいてだな」


 鼻水をすすりながら話をもどす。


「じゃろ先輩、何度も言ってるが、オレは側室にはならない。竜宮城にもいかないし、図書士にもならない。お断りさせて頂く!」


『サクラ……!』


『お主……』


「ちょっと! 聞き捨てなりませんよ!」


  カタンと、椅子を引いてじゃろ先輩が立ち上がる。


『カッ!  良いじゃろう。基本ダメ人間なお主に潔い返事など期待しておらぬ。時間はたっぷりある。ゆっくり待つとしよう』


「いや、オレ今断ったよ?  話きいて!」


「先輩!  あとで私からもお話がありますからね!」


『カッカッカ!  良い良い!  また会いにくるぞよ!』


  じゃろ先輩は竜の尻尾をご機嫌に揺らしながら帰っていく。


『それと』


  入り口付近で振り返る。大きな瞳を片方閉じて、右手の人差し指を口元に当てて微笑んだ。


『ここのことは、生徒会には内緒じゃぞ?』


  流石は精霊。そのあまりの可愛らしい仕草に、思わず胸の鼓動が早くなる。


『それじゃあの』


  手と尻尾をひらひらさせながら、いなくなってしまった。


「私、右大臣でも良いかも……」


「!?」


『!?』


  頬を桜色に染めたリーさんの一言が、今日一番の衝撃だった。







「だから違いますって!  あれはちょっと魔が差したというか……そう!  そうです!  右大臣なんて大変なポストを用意して頂けるんです。嬉しいに決まってるじゃないですか!」


「あらそう?  リーさんって意外と権力志向なんだなぁ」


「も、もう!  怒りますよ!」


  後輩を弄って遊ぶのは楽しい。リーさんに激しく手刀をくらいながら、昼からの講義に向かう。今は、じゃろ先輩が壊した物の報告を、学生課と生徒会にしに行く途中だ。


「あ、やべ」


「どうしました?」


「証書忘れて来ちゃった。取ってくるから、リーさん先にいっておいて」


  どの道学生課には行かないといけないのだ。どうせなら証書を出しておきたい。


「そうですか。では報告は私がしておきますので。先輩はそのままサボっちゃダメですよ!」


「わかってるよ」


  次は書史学の講義だ。数日ぶりにセレンに会える機会だと言うのに、みすみす逃したりはしない。あれ、でもリーさんが報告してくれるなら、別に学生課に寄る必要もないのか。どうしよう。


『なに面倒がってるの。どうせ後でなくしたり、期日を忘れてたりしちゃうんだから、今しておきなさいな』


「それもそうだな」


  伊達にシンシアは長くオレと暮らしていない。ただ、この時珍しく前向きな判断をしたことが、後々さらなる面倒を引き起こしことになるとは、オレとシンシアは知るよしもなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
a href="http://narou.dip.jp/rank/index_rank_in.php">小説家になろう 勝手にランキング
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ