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水精霊空想観察記録  作者: 夏目りほ
第一章
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これはすごいな……


「恋文の技法」を戻す場所は簡単に見つかった。ミリモは作品数が多いし、人気作ばかりだ。例の棚のすぐ隣が定位置のようだった。


「それじゃあ、戻しますよって、本当に私でいいんですか?  これで終わっちゃうかもしれませんよ?」


  リーさんが窺うようにこちらを見てくる。


「いいよ。今回あんたが一番貢献度低いし」


  うっと、リーさんがうめく。そうなのだ。自信満々だった彼女だが、終わってみれば成果は大して挙げていない。銀の時計を発見したくらいだ。


「まあ、リーさんが取ってきた課題だからね。リーさんに締めてもらうのがいいんじゃないかな」


  オレはあまり意地悪なことは言わない。先輩は昼間の仕返しも含んでいるのだろう。


「くっ!  何ですか二人共ニヤニヤして!  いいですよ、次こそは私がガッツリ課題達成してみせますから!  とりゃ!」


  おっといけない。顔が緩んでしまっていたか。まあ、ここは先輩として当然といったところかな。発言の割に気の抜けた掛け声で、リーさんが本を棚に差し戻した。すると、


「あ!」


「へぇ」


「これはすごいな……」


  変化したのは隣の例の棚だ。全ての書が一瞬溶けるように消えていき、一度本棚が空になる。そこからまた少しずつ書がポツポツと出現していき、ものの数十秒で棚が全て元どおり埋まった。


「これは、全部綺麗に並べ替えられていますね。いつの間にか棚も九段から八段に戻っています。どういう仕掛けなんでしょう」


 リーさんが手で触りながら確認する。おそらく何らかの述式転化なのだろうが、オレなんかでは想像もつかない。


「はぁー、終わった、終わった。やっと帰れる!」


 先輩が背をそらして大きく伸びをする。美しい胸のラインが強調されて、思わず目をそらした。


「え?  ちょっと待って下さい。まだ終わりじゃありませんよ!  書架整理の仕事は残って……」


 棚の前でブツブツ述式を検証していたリーさんが慌てて振り返る。確かに、リーさんの言う通りまだ仕事はも終わっていないように思えるが、


「リーさん、あれ見てみなよ」


  少し遠く、仮眠室の方を指差す。


「え?  あれって……、あぁ!」


 仮眠室の扉の前には、巨大な張り紙がはられており、大きな文字で「お疲れ様。課題達成おめでとう」と書かれていた。

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