あんたら付き合うの?
「オーガスト先輩、また随分と夜更かしをされたようですね!」
「ん、まあ別に」
「別に、じゃありません。規則正しい生活をして下さいと何度言えばわかるんですか!」
リーさん、先輩の声マネ似てるな。しかし、これは長くなりそうだ。先日からコツコツ作り続けている花弁の栞の仕上げでもしてようかな。
「うるさいなぁ。夜更かしなんかしてないって」
「嘘はいけませんよ。いつもはされてないお化粧をされているのがいい証拠です。目の下のクマを隠すためにしてきましたね。髪のすきかたも、少し甘さがありますし、一目見れ
ばわかりますよ!」
リーさんだからわかるのか、女子だからわかるのか。オレは全くわからなかった。そう言えば、オレの周りって化粧しない女の子ばかりだよな。シンシアはもちろん、オーガスト先輩、じゃろ先輩、ドラグスピアさん。まあ、みんな素材がいいからな。でも意外とリーさんは薄化粧してるんだよな。
「もう! わかったから! あんたは私のははう、じゃない、お母さんか!」
「う!」
おそらく痛いところを突かれたのだろう。リーさんの攻勢が著しく弱まる。
止めるなら今がチャンスだろう。
「もういいすか、二人共。オレは今日さっさと終わらせて帰りたいんですよ」
「むぅ、そうでした。まだ仕事が残ってましたね」
リーさんがお説教を止めると、オーガスト先輩が露骨に安堵した。
「それに、オーガスト先輩には私たちから報告もありますし」
リーさんがあまりにニコニコしながら言うものだから、オレまで嬉しくなってしまう。
「なに? あんたら付き合うの? おめでとう」
オレとリーさんの表情が凍りついた。
「ちょっっ!? な、なにを! なにを言ってるんですか!? 違います、違いますよ!」
耳まで真っ赤になってリーさんが否定する。オレも頬が熱くなるのを抑えられない。リーさんが彼女かぁ、やべ、想像するだけでなんか全身に震えが起きた。
「例の棚についての謎が解けたんです! その報告ですよ! ミ ナセ先輩は何故青くなってるんですか、腹立たしい!」
いや、だってリーさんだよ? 青くもなるっての。
「え、あんたらも解けたの?」
ニヤニヤ笑っていたオーガスト先輩の言葉に驚きの一言が加えられていた。「あんたらも」ってことは……
「ま、もしかしてオーガスト先輩も解読されたんですか?」
「うん、昨日ちょっと考えてたら、ね?」
「本当ですか!?」
リーさんと二人で驚愕する。
「私なんて、理解するのですら、かなり時間
がかかったのに」
少しヘコんでいるリーさんだが、直ぐに顔をあげて立ち直る。
「答え合わせです! まだ、本当に正解かどうかわかりませんからね!」
立ち直ったのとは少し違うようだ。彼女のささやかな意地が見て取れた。
三人がそれぞれ互いを見回す。そして、せーので一斉に口をひらいた。
「銀の時計のなか!」




