木漏れ日がキラキラしてるわ
オレは目覚まし時計というものが嫌いだ。強制的に睡眠を中断され、一日を始めさせられるあの感覚。たまったものではない。もちろん、目覚まし時計が好きだと言う人間は少ないだろうが。
なので、オレは自室に目覚まし時計を置いていない。そんなものがなくても、だいたいの時間にはいつも必ず起きられる。それに……
『サクラ、おはよー! 起きなさい、もう朝よ!』
こいつがいるから目覚まし時計なんて必要がない。今日は特に機嫌が良いようだった。
「んん……、あと五時間……。」
『寝すぎよ! あと五分ならまだ可愛げがあるけど、それはふざけすぎよ!』
仕方ないだろ。昨日は色々ありすぎた。午前の時点でオレの一日のキャパシティを完全にオーバーしていた。それだけでなく、午後から忙しさは増した。そんな苛酷極まりない日の翌日だ。ベッドに張り付きたくなるのも当然だろう。
『ほら! 今日はチームのみんなと最後の作業をするでしょ。早くしないとまた遅刻しちゃうわよ!』
そうだった……。まだ仕事が残っていた。一日経っちゃうとあとはもう、ただただ面倒なだけな気がしてしまう。
『起きなさいってば! もう、頭から冷水ぶっかけるわよ!』
シンシアがだんだん本気で怒りだしてきたので、そろそろ起きることにする。
うぇ、身体がダルい。全然疲れが抜けてない。
出掛ける支度をしながら、身体の感覚を確認する。一応起きて来られないほどではなかったのが、ラッキーだ。歯を磨き、飯を食って着替える。流石に部屋着のまま仕事に向かったりはしない。手早く準備をして、部屋から出る。
『今日もいい天気ね。木漏れ日がキラキラしてるわ』
興味がないので、何とも答えない。今朝はエントランスにリーさんはいなかった。まあ、カギを持ってるわけだし当然か。
普段の休日の図書館というものは、割と混雑している。教育図書館に最も近い、北出入口の前はしかし、いつもと違って閑散としていた。今日が休館日だということをみんな知っていたのだろう。オレとしても、そういった情報はこまめに仕入れていきたい。
「おや、珍しいですね。先輩が時間前に到着されるなんて」
北出入口の前に、今日も制服をきたリーさんが待っていた。
「え、オレってそこまで時間にルーズだと思われてんの」
ええまあ、と呟くリーさんは本当に驚いているようで、今も大きな目をパチクリさせている。
その後、思い出したように、おはようございますと一礼してきた。ここまできっちり挨拶されるとなんだか照れる。
「オーガスト先輩はまだなんだな」
話題をかえよう。
「そうなんです。これまた珍しいですよ。いつも二十分前には集合場所に来られる方なんで」
へぇ、本当にあの人不良なのかなぁ。二十分前集合するワルとか聞いたことないんだけど。てか、
「リーさん、なんでそんなこと知ってるの?」
「何故って、私はオーガスト先輩がいらっしゃる十分程前には到着していることが多いので。あ、先輩来られましたね」
まじか。じゃあ、オレは毎回先輩を二十分、後半を三十分待たせてたことになるのかよ。大変よろしくないな。
「おはようございます、先輩」
「はざっす」
「ん、はよ。珍しいね。ミナセが先にいるの」
「いえ、これからは心を入れ替えます」
「? まあそう? よくわかんないけど」
じゃあ行こうか。とオーガスト先輩が促したのでオレ達もそれに続く。その手前、リーさんの眉がピクリと上がった。




