本以外はからきしね
「で、完成したわけだけど」
「はい」
「どう思う?」
まあ、そうなるわな。今のところただの数字の羅列である。
「別の文字に置き換えて見るのはどうですか? それぞれの作者の出身国の言葉とか」
可能性は、ある。 というか、可能性が無限にありすぎて何から手をつけていいのかさっぱりだ。そもそも、この手紙というキーワード、さらには書に焦点を当てるということ自体が間違っているかもしれない。
「気になってるんだけどさ」
かなり長いこと黙っていた先輩が口を開いた。
「はい、何でしょう?」
「うん、この本たちってさ、どれも場所を動かせない本たちなんだよね」
それは最初に先輩が実演してくれた通りだ。その後色々な方法で書を動かしたが、頑なに元の場所に戻ってきてしまった。
「でもさ、こうして抜き出すことはできるんだよね。抜いたからって、棚に飛んでいくわけでもない」
「そういえば、そうすね」
ということは、どういうことだ?
『本を調べさせたがっている、ってことかしら』
「な、なるほど!」
リーさんと二人で馬鹿みたいに叫んでしまった。
「私もそう思う」
「でも、どうしてですか。調べさせたがっているって、そもそも誰が。こんなことをするメリットがある人間なんて……」
「メリットはないかもしれないね。でも、必要はある」
「必要って……。あ、そうか!」
え、ちょっと待って女性陣で勝手に話を進めないで!
「ごめん、リーさんどういうこと?」
『あなた、本以外はからきしね』
うるせぇ。
「考えてみて下さい。これは課題ですよ。課題は我々生徒が受けなくてはいけないものですが、逆に、出されなくてはいけないものでもあるんです」
「出す? 出す側っていえば、あ」
わかった。あの人の仕業か!
「兄さんがわざわざ作った課題ってことか!」
「そういうことです! なので必ず全ての事象に意味とヒントがあるはずですよ!」




