一体何のつもり?
チウシェン・リーさん。白い制服を美しく着こなすことから、「制服の女神」とかいうわけのわからん称号で呼ばれており、入学十日で三つのファンクラブを持っていた程の人気ぶりだ。そう、持っていた、のだ。このファンクラブは現在活動していない。リーさん本人によって壊滅させられたからだ。彼女曰く、「勉学に全く関係ないことにうつつを抜かすなど言語道断。その性根、一から叩き直してくれる」。
彼女が具体的に何をしたのか、当事者たちは一切語らない。しかし、かつての会員達がリーさんを見つけると顔面蒼白になって逃げ出すことから、その恐ろしさは明白。総勢二百人近い数がいた三つのファンクラブを僅か一夜にして滅ぼしたことから、「制服の女神」とかけて、「征服の女神」という、これまたわけのわからん二つ名で呼ばれている。
フィオ・オーガスト先輩は、リーさんと比べて、真っ当にこわい。長い手足と整った顔立ち、美しいシルバーブロンズの長髪は輝きを放っており、様々な名家の子息から求婚されている、名門貴族出身のお嬢様だ。ここまでなら、ただの良いとこの娘さんだが、実態は大きくことなる。
まず、両耳のピアス。オシャレといえばそれまでなのだが、両耳合わせて十をこえるそれは、明らかに度が過ぎている。さらに、右腕のタトゥーは鮫の模様で威圧感がハンパじゃない。行動は冷酷非道、パシリ、カツアゲは当たり前。常に人を射殺すような視線で攻撃的な態度をとる。極めつけは、こう言った行いをしていても、講師陣から一切お咎めなしという点だ。歴戦の図書士である彼らすら手懐けてしまっていると思われるので、一般生徒なの太刀打ちできるはずもない。
こうしてオレは、校内二大問題児と一年間やっていかなくてはならなくなっているのだ。そりゃ、憐れみの視線もうけるわ。てか、この組み分け考えたやつ出てこいよ! とっちめてやる!
コツコツと机を叩いていたオーガスト先輩の指がとまった。
「あんたさぁ、一体何のつもり? さっきから人の個人情報ベラベラと」
「あら? 自己紹介がイヤだとおっしゃったのは先輩ですよ。それと、これは他の学生達から聞いたウワサ話にすぎません。今日は本来任務開始の日です。全くお互いアプローチしようとしないお二人のことを、少しでも知ろうとするのは当然のことだと思いますが」




