あんたに聞いてないんだけど
かつて、これ程までに空気の重い部屋があっただろうか。身体がダルい。息がつまる。早く帰りたい。誰一人声を発しない空間でありながら、二人の女子生徒が視線だけで激しく闘っている。予想以上に険悪な雰囲気だ。最悪といってもいい。
だが! 今年一年、この二人とやっていかなければならないのだ。ならば、こんなところで挫けていてはならない。この状況は打開せねば!
「えー、それじゃ、全員揃ったところだし、軽く自己紹介でも……」
「いや」
一言で斬り捨てられ、オレの心に風穴があく。銃剣かよ。
恥ずかしいからイヤってことなのかな、そういう風に思うことにしよう。
「いやって……何ですか、それは。これからチームを組むんです。ミナセ先輩にしては妥当な提案ですよ」
褒めらた気がしないでもないが、多分褒められてはいないな。
「じゃあ、そういうあなたからしなよ、優等生さん」
ピクリと、右手の少女の眉があがる。
「いいでしょう。私はチウシェン・リー。今年入学した新入生です。得意科目は書史学と文章解析学、特技は述式転化と掃除です。一年間よろしくお願いします」
思いのほか丁寧な自己紹介がされる。書史学の時にも思ったが、真面目な娘なんだなと改めて認識した。さぞこのチームは不本意だろう。自分のことは棚に上げて同情する。
「ねえ、ねえってば」
ボケっとしていて、自分に声が掛けられていることに気付いていなかった。あわてて居住まいを正して答える。
「.う、うす! 何でしょうか?」
「つぎ、あんた」
あれ、意外と乗り気か? それとも、後輩にだけやらせて、自分は帰ってしまうというやつなのだろうか。
とりあえず口を開こうとすると、横からいきなり割って入られた。
「サクラ・ミナセ。東方系の皇国人で十六歳男子。 十三歳の時に皇立図書士官学校に入学。十二歳の時に星六魔書との契約に成功した天才として大いに期待されるが、入学直後から全く学習意欲がみられず留年。現在三年目でおりながら二年生という体たらくで、しかも成績は超低空飛行。ひたすら自身の精霊とイチャイチャしてるだけの学生生活を送っている。 ですね?」
「そ、そうですね」
ものすごい剣幕に思わず敬語になってしまう。てか何でこの子、
「なに? あんた、これのストーカーなの? あと、あんたに聞いてないんだけど」
先輩は明らかに機嫌を悪くなされてました。これとか言われてる。
「フィオ・オーガスト先輩。十八歳。名門オーガスト家の長女で十一歳の年に入学。順調に好成績を維持しつつ学生生活を送る。が、三年の後半時から急に講義に出席しなくなり、留年。現在も二度目の四年生をすごしている。得意科目、苦手科目なし、ですよね」
そう、オレは今二人の女子生徒に挟まれている。二人とも見目麗しい美少女だ。だか、全く嬉しくない。むしろつらいまである。




