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魔王な俺とダメ勇者  作者: 変態紳士
西の大陸編
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サラサ村事件簿①

シャルと出会い、お互いのことを話しながらずっと歩いていた。


話したことを少しずつまとめてみよう。

シャルは16歳。ジュダ教の本拠地がある【メザリア】出身らしい。剣は苦手で魔法が少し使えるようだ。魔法が使えるってすごいと思った。

魔法には初級、中級、上級といった風に規模や強さでランクが存在する。

シャルはほとんどの全ての初級魔法を使う事ができるらしい。

魔法が使えたなら先ほどのパピーとの戦闘、楽に勝てるのではとおもったが、初級魔法でもある程度の集中が必要で、一人で魔法をメインに戦うのは難しいようだ。


シャルが話すには、勇者はほとんどの人が魔法を使う事ができ、能力や魔法を駆使して戦える。各勇者にはだいたい得意な魔法があり、その魔法に至ってはだいたい上のランクの魔法を使う事ができる。

いざ勇者に追われた時のために覚えておこう。


あとシャルは物知りだ。分からない事をシャルに聞いたら丁寧に教えてくれる。

本人はダメ勇者ダメ勇者と呼ばれる中、自身ができる事を知るために、勉学には力を入れたようだ。知識は大きな武器になると思い、普通の人が知らないような事も平気で答える事が出来るのがこの勇者だ。



そんな事話考えていると、村の入り口が見えてきた。

同時に俺の腹からグゥゥ〜と気持ちのいい音が聞こえた。

「飯がくえるぞー、やっほーい」


時刻は夕方。朝から何も食べてないことを思い出した。


考える事やシャルとの出会いで空腹を忘れていたが、お腹の自己主張により取り敢えずご飯を食べれるところに行こうと思う。


「ここは、【サラサ村】だよ。この村は農産物の輸出が多い村だね。名物は村の伝統で味付けをされた野菜炒めだよ」



本当にシャルは物知りだ。俺なんか村とか町の名前すら覚えてないのに・・名物や特徴まで覚えてるの尊敬します。



サラサ村に入りあたりを見渡す。

数件の民家らしきものと村のあちらこちらにある柵のされた畑。農家をする上でとても便利で頼もしい牛も何匹かみえる。

村の畑仕事をしていた人たちが話し合ってる姿も見え、とってものどかな所だと感じることができる。

気になるところは畑の柵が所々壊されているとこくらいだろうか。


畑仕事をしていた人たちが集まって話をしているとこにシャルは向かっていき声をかけている。



「すみませーん。私たち旅のものなんですがこの村に宿はありますか?」



「あんたたち旅人かい。こんな村に旅人とはめずらしいな」


「この村の宿なんだが、だいぶ前に一つだけあったんだがもうやってないなー」


「なんたって何もない村だもんな」


旅人が珍しいのか村の人たちは一気に話しかけてくれる。

この村に宿はないのか・・さてどこで野宿するか。




「わしの家で良ければ泊まるか?幸いなことに布団と飯くらいなら用意出来るぞ」



集まって話していた村人の1人のおっさんがそういった。


「さすが村長、珍しく頼りになります」


どうやらこのおっさんがこの村の村長らしい。


どうするのか気になりシャルに目で訴えてみる。

シャルは俺の視線に気がついたのかこっちを向いて笑った。


「よろしいのですか?」


「あぁ、構わないよ。この村は今厄介な事があってね。泊める代わりと言っては何だが、村の者たちに楽しみの一つでも与えてやってくれ」



「ありがとうございます。私たちにできる事なら喜んで」


「恩にきるぜ、村長さん」


今晩泊まる場所はこの村長の家に決まった。

村の厄介な事が気になるが後で聞ける事なら聞いてみよう。


「ならばワシは今から準備をしてくるので、村の者たちと適当に話しといてくれ。ワシの家はあの畑の隣のやつだから、いい感じの時に来てくれ」


「よっ、村長かっこいいー」

「そんなところに憧れるー」


「お前らうるさい」


村長と村とのやりとりを見る限り、この村は和気藹々としている。

この村長は村人との関係が良好なのだ。

いい雰囲気の村じゃないか。あっ、お腹すいて来た。


「旅人さんはお名前は?」

「どこに向かってるの?」

「2人は夫婦なの?」


すごい質問の数。



「私はシャルティナ。気軽にシャルって呼んでください。こっちの男がアルク。今は首都、メルギドに向かっていますよ。最後の質問は秘密です」



口に人差し指なんて当てて秘密などの可愛いい仕草でシャルは村人たちと話している。

律儀に質問に答えて、シャルは人と接するのに慣れてる事が見受けられる。


ところで、最後の質問はなんで否定しないの?


シャルと村人たちが談笑してる中、木の陰にいて俺のことをじっと見ている少年に気がついた。

少年と目が合い、俺は少年に近づいてみる。


「どうした少年よ。何か気になることあるか」


子供と話す時は目線を合わすためしゃがんで話す。

子供の信頼を得るためには目線を合わすことが大事という事を、アルクは理解している。


「お兄ちゃん強いの?」


急にどうしたのだろう。何故このような少年がこんなことを聞くのか。疑問を胸に答える。


「ぼちぼちは強いぞ。」


そう答えると少年は目を輝かせ、


「だったらお願いがあるの。今この村を襲ってる魔物をやっつけて欲しいの」


村を襲う魔物?

ここら辺の魔物は強いものなんてほとんどいないはずだ。



「どんな魔物が襲ってるんだい?頑張っちゃうから教えて欲しいな」


「えっとね・・お母さんとかはうぉーうるふとか言ってたの。その魔物がいるからみんなこの村を離れるしかないとか言ってたの。でもお父さんは村を守らなきゃって戦うとか言ってたの。僕もこの村が好きだから・・だから・・」


【ウォーウルフ】とな。記憶の片隅では聞いたことあるような気がする。確か狼のような外見で、すごく強いとかだったような。

村の抱えている厄介な事ってこの事だったのか。



「よし、お兄さんに任せなさい。その魔物がどこにいるかとかわかるか」


少年を安心させるために、俺は少年の頭を撫でてやる。


「えっとね、いつも夜に村の畑を荒らしに来てるの」



なるほど、それで畑の柵が所々壊れていたのか。

今晩はこの村のパトロールかな。



「わかったぜ。あとはお兄さんに任せて、安心して待ってな」


「お兄ちゃんありがと。約束だよ。」


少年は笑顔になった。

子供の笑顔は気持ちがいいね。


そろそろシャルと村人の談笑も終わったようで俺は少年に別れを告げねばならない。


「じゃあ行くな、約束は守ってやっからな」



シャルのとこに戻ると、シャルは村人たちと話してる間に何処かへと消えた俺が気になって居たのだろうか。俺の姿を見つけると、


「あっ、アルクどこにいたの」


「まぁ、いろいろとな」


「まぁいいや。取り敢えず村長さんのとこにお邪魔しちゃおっか。」


簡単にやりとりをし村人たちに別れを告げ、村長が先ほど行って居た家に向かうことにした。


村長のお家



「おっ、来たか。腹が減っただろう。飯を作っとるから食ってくれ」


村長の家は割と大きく、普段使ってる部屋とは別に空いてる部屋が3部屋もあるらしい。


「男のお前さんはあっちの部屋。女の方はあっちの部屋を用意した。風呂は沸かしすぎて今冷ましとるけん飯でも食うぞ」


村長さんそんな至れり尽くせりで、頭上がらない。


「一つ決まりごとがあって、日が暮れたら何があっても家を出るんじゃないぞ。これだけは守るんじゃぞ」


この村長、関係ない旅人を巻き込まないようにしてくれてるんだろうか。

この村が魔物に襲われている事を知っている俺としては、この決まりは部外者を守るためにあるのだという事を察せる。


「はーい」

隣にいるシャルが元気な声で返事をしていた。


簡単な自己紹介をして晩御飯がだされた。


晩御飯は伝統の味付け、名物の野菜炒めを出してくれた。

この野菜たちの火加減、野菜独自の旨さとそれに絡まれたタレが美味すぎる。

思わず美味い美味いと食べていたら



「そりゃあ良かった。もう食えなくなるかもだししっかり食べときな」


どうにも引っかかる言い方だ。

もう食えなくなる。この村が滅ぶ可能性が高いという事を村長が思っているのだろうか。



食事の後、シャルは風呂に入った。

「久しぶりのお湯だー。」とか言いながら行ったのおそらく長風呂になるのであろう。



今は村長と2人きり。シャルがいない今の内にちょっと話してみよう。


「村長さんよ」



「なんじゃ?」


「この村は終わるのか?」


先ほど村長の言った言葉。あの野菜炒めが食べれなくなるという発言だ。


「お主は・・この村の厄介事をきいたのか?」


俺は無言でうなづく。



「ならば知っておろう。あの魔物は勇者か国の兵士の軍。あるいはギルドにいる有名なやつらではないと無理じゃ。助けることのできるやつらはこんな村なんかに手をかける奴はおらぬ」


勇者と国の兵士はわかる。だがギルドとはなんだ。


後でシャルに聞いてみよう。


「じゃがただ村を見捨てるというものがおらなさすぎてな。この村の者は女子供を除き戦うことを選んでしまったのだ。近々、戦いそして負ける」


「なぜ逃げないんだ」


「みなはこの村が好きだったんだな。命をかけてでも守る大切な場所なんだろう」


大切な場所・・・大切なもののために命をかけるのか。




「あっ、お主ら旅人を巻き込む気はないからの。これは村の者が決めたことじゃ。犠牲なんてものは少なくていいんじゃよ」



「そうか」


「あと旅に出るなら明るくなってからにしとくのじゃぞ。夜は絶対にダメじゃ」


「わかったよ、村長さん。わざわざありがとな」



話していたらシャルがお風呂から上がったらしく、部屋に入って来た。


「お風呂ありがとうございます。お風呂とっても気持ちよかったよ。アルクも頂いてきなよ」


「おぉ、そうじゃぞ。早くお風呂に入って寝るのじゃ。

シャルちゃんも早く寝るんじゃ。夜更かしは美貌を損なうのじゃ」


「わかりました。それではお先に」

そう言いシャルは部屋に戻った。眠かったのだろうか。


「じゃあ俺もいただくぜ」


「いってこいいってこい」


シャルと俺の扱い微妙に違うくない?



その後は風呂に入り、俺も部屋で待機していた。


日も暮れしばらく経った。

そろそろ約束を守りに行かなくちゃ。


双剣と外套を手に俺はこっそりと部屋を出る


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