あの時があったから
今回は、日記のような文章になります。
6年前、私はマンションの5階から飛び降りたのです。
私の記憶には、ありません。
飛べると、そう思ったのでしょうか。
8年前にいなくなった姉に、会いにゆけると思ったのでしょうか。
飛び降りて、血を流して倒れていた私を見て、すぐに救急車を呼んでくれた方がいました。
夜中に運ばれて、翌日の昼過ぎまで長い時間手術をしてくれた、たくさんのお医者様達や看護士さんがいました。
『どうか、生きててくれ。』警察から電話で連絡をうけ、長い時間病院の手術室の前で祈ってくれた父がいました。
『足は、切断すると思います』、先生はそう言っていたそうですが、長い時間をかけて。私の足と私の命を守ってくれたのです。呼吸もできなくなっていた、私の。
私が意識を取り戻したのは、それから1年半後でしたね。病院のベッドに寝ていて。身体は動かなくて。飛び降りたと聞いて、カレンダーを見て。
信じられませんでした。夢だと思いました。
それから、夢のはずなのに痛みもあり、現実的な長い夢だと思いました。
友人が、お見舞いに来て。
月日が友人に、流れていて。現実なのだと理解したのです。
その時は、車椅子でした。
歩けるように、なりたかった。
自分の足で、歩きたかった。
リハビリテーションに、真剣に取り組みましたね。
私の意識がなかった時も、筋肉が固まらないようにと先生がマッサージしてくれていたと聞き、裏切りたくありませんでした。
いつも、誉められる度『おかげさまです。』と言うと『葵ちゃんが頑張張ったからだよ。』と言ってくれましたね。
本当に、感謝しています。
今、私の足で歩けることも。
本当に、たくさんの人のおかげで。
顔にはほとんど傷がないのは、お姉ちゃんが見ててくれたのかな、なんて思っていて。
危篤だった、それが信じられないくらいに、今はいきいきと生きています。
私をこの世界に戻してくれたのは、お姉ちゃんやお医者様、父と母。本当にたくさんの方がいたからなのです。
ありがとう、の思いを胸に。
この足で、歩んでいきます。
苦しかったことも、あるから。
辛かった時も、あったから。
それでもたくさんの人に支えられて、今があるから。
少しは優しくなれたかな。なんて思うのです。
昔のようには足は動かないけれど。
あの時があって、良かったと思う。