表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あの時があったから

作者: 星乃 葵

今回は、日記のような文章になります。


6年前、私はマンションの5階から飛び降りたのです。

私の記憶には、ありません。

飛べると、そう思ったのでしょうか。

8年前にいなくなった姉に、会いにゆけると思ったのでしょうか。



飛び降りて、血を流して倒れていた私を見て、すぐに救急車を呼んでくれた方がいました。

夜中に運ばれて、翌日の昼過ぎまで長い時間手術をしてくれた、たくさんのお医者様達や看護士さんがいました。

『どうか、生きててくれ。』警察から電話で連絡をうけ、長い時間病院の手術室の前で祈ってくれた父がいました。

『足は、切断すると思います』、先生はそう言っていたそうですが、長い時間をかけて。私の足と私の命を守ってくれたのです。呼吸もできなくなっていた、私の。


私が意識を取り戻したのは、それから1年半後でしたね。病院のベッドに寝ていて。身体は動かなくて。飛び降りたと聞いて、カレンダーを見て。

信じられませんでした。夢だと思いました。


それから、夢のはずなのに痛みもあり、現実的な長い夢だと思いました。


友人が、お見舞いに来て。

月日が友人に、流れていて。現実なのだと理解したのです。


その時は、車椅子でした。

歩けるように、なりたかった。

自分の足で、歩きたかった。


リハビリテーションに、真剣に取り組みましたね。

私の意識がなかった時も、筋肉が固まらないようにと先生がマッサージしてくれていたと聞き、裏切りたくありませんでした。

いつも、誉められる度『おかげさまです。』と言うと『葵ちゃんが頑張張ったからだよ。』と言ってくれましたね。

本当に、感謝しています。


今、私の足で歩けることも。

本当に、たくさんの人のおかげで。


顔にはほとんど傷がないのは、お姉ちゃんが見ててくれたのかな、なんて思っていて。


危篤だった、それが信じられないくらいに、今はいきいきと生きています。


私をこの世界に戻してくれたのは、お姉ちゃんやお医者様、父と母。本当にたくさんの方がいたからなのです。


ありがとう、の思いを胸に。

この足で、歩んでいきます。



苦しかったことも、あるから。

辛かった時も、あったから。

それでもたくさんの人に支えられて、今があるから。

少しは優しくなれたかな。なんて思うのです。



昔のようには足は動かないけれど。


あの時があって、良かったと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ