ぼくと君
ある昼休み、昼寝をしようと屋上に向かったぼくは
とてもキレイな、やさしい歌を聞いてしまった。
なんとそれを歌っていたのは・・・
僕は屋上で歌っているクラスメイトをぼうぜんと見つめていた。
耳には彼女のすずやかな歌声が流れる。
彼女はぼくに気付いてないのかずっとぼくに背をむけたまま
手すりにもたれかかって歌っていた。
「あの・・・さっ桜木!」
「!?」
ピタリと歌声が止んだ。彼女はゆっくり顔だけ振り返る。
彼女の澄んだ目がぼくを見つめる。
(あっ・・・。なっ何か話さないと・・・。えっと・・・。)
ぼくはしどろもどろ彼女に話しかけた。
「あっ・・・あの、何をし....」
「珍しいわね?」
「え?」
彼女はぼくの言葉をさえぎって体ごとぼくに向けた。
「普段誰も立ち寄らないもに。本当にめずらしい。あなた何をしに?」
(ぼくが聞こうとしたことまるっきり返された・・・)
「えっと・・・昼寝です・・・」
「昼寝?」
「ハッハイ・・・」
ぼくはなぜか恥ずかしくなって俯いた、そして、思い切って
ぼくは彼女に聞いた。
「きっ・・・君は何をしているの?」
「歌ってた」
きっぱり返された。
(それは、わかってる。ぼくが聞きたいのはどうしてかなのに・・・)
自分の情けなさにため息をつく。
「・・・」
「・・・」
二人の間に気まずい空気が流れる。グラウンドの方からは生徒が
サッカーしたりしている声が聞こえる。
(もう昼寝を諦めて教室に帰ろう・・・)
そう思い、ぼくが屋上を出ようと背を向けた時、彼女が駆け寄ってぼくの腕を掴んだ。
「えぇ?!」
がっしりっと掴んでいて振り払えない。
(ちょ・・・えっ!?な、何?!)
「あなた私の歌聞いていたでしょう?」
(やっぱり気付いてたのかな・・・?)
「どうだった?」
「え?」
突然の質問に驚く。頭の中が一瞬真っ白になった。
「下手だった?ダサかった?」
彼女はズラズラと言葉を並べる。
(こっこわ・・・)
「別に・・・ヘタじゃなかったよ?むしろ上手だった・・・」
ぼくは、彼女の鋭い目に怖気付きながら答えた。
彼女は「本当に?」と聞き返す。
「本当にキレイな声だったよ!もういい?!」
ぼくはヤケになって無理矢理腕を振り払った。
彼女は少し悲しそうな顔になって「ごめん・・・」と小さく呟いた。
見慣れない彼女の常用にチクリと胸が痛んだ。
(ちょっときつかったかな・・・)
謝ろうと口を開いた直後、昼休み終了のチャイムが鳴った。
「・・・。」
「あっ・・・!」
ぼくをすり抜けて彼女は足早に階段を駆け下りていった。
チャイムが鳴り終わってもぼくは1人ポツンと立ち尽くしていた。
まだ耳に残る彼女の歌を思い出しながら。




