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短編集

幼馴染

作者:

 はぁーと吐く息が白くて「ああ、冬が来たなぁ」と感じた。冷たい風が肩でそろえた私の髪を撫でる。私の名前は雨沢(あめさわ)(あき)。近所の県立柏木高校に通う二年生だ。


 「冬だなぁ・・・・」


 しみじみとつぶやく私に隣を歩いていた一つ下の幼馴染である風間勇太が子犬のような無邪気な笑顔で。


 「ねぇねぇ、アキ姉。夏の風物詩といった何を思い浮かべる?」


 私の情緒をぶち壊す。

 ええぃ!!人がせっかくしみじみと日本の四季を感じているというのにこいつは!!しかも今は十二月!!通学中のいまも雪がちらついているような中でどうして夏の風物詩なのよ!!


 「ユータ・・・。そういう質問は夏にしなさい。ナ・ツ・に!!」


 ギロリと必殺の睨みをおみまいするが生まれたときからの付き合いであるユータには通用しない。ユータはご近所・学校で「子犬のように可愛い」と女子に人気な無邪気さで私の顔を覗き込んでくる。


 「だって思いついたのが「冬」だから仕方ないよ」


 にこやかにキッパリ言い切った。・・・・ああ、そうですか。

 妙な脱力感から思わず手で顔を覆う。頭、痛い。大体こいつは昔から言うことすること突拍子がなくていつもいつも私を巻き込んで結果的にその後始末を全部私がする破目になって・・・・・・・・あ、思い出したらものすごく腹が立ってきた。

 一人ご立腹な私など知る由もないユータがひょっこりと私の顔を覗きこむ。


 「で、アキ姉。僕の質問の答えは?」


 「まだ、引っ張るか・・・・」


 しつこい奴め、と舌打ちする私だが、最終的にユータに甘い私は溜息混じりに答えてやるつもりになっていた。やれやれ、いい加減に幼馴染離れさせないといけないってわかってはいるんだけどね・・・。

 と、そこで私はユータの身長が記憶より高くなっているのに気付いた。


 「あれ?ユータ背、伸びた?」


 しげしげと隣を歩くユータと自分との身長を比べる。うん、やっぱり私より高くなっている。


 「確か去年まで私と同じくらいだったよね。うわ、いつの間に抜かされていたんだろう」


 何気にショックを受ける私にユータは呆れたように溜息を付いた。


 「あのね。高校入る前にはもうアキ姉の身長を越していたよ」


 「うそ!!・・・・いつも一緒にいたのに気付かなかった・・・・」


 それとも一緒にいたから気付かなかったのかな?


 「いや・・・でも、こう、感慨深いもんだねぇ。私の弟分も立派に成長しているんだ」


 まるっきり親戚のおばちゃんのような発言だが私の偽らざる本心だ。うんうん。年長者は若輩者をこうやって見守っていくのね。

 だが、なぜだがユータの眉がぴくりと不機嫌そうに跳ね上がる。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おとうとぶん・・・・・」


 あからさまに気に入らないといった感じにユータが黙り込む。そして本気で不本意そうに頭を掻いた。


 「アキ姉、都合よく忘れているみたいだけど僕はアキ姉の「弟」じゃない・・・僕は「男」だよ」


 真剣な声。なにかを壊しそうなほどの威力秘めたその言葉はだけどその時の私にはまったく通用しなかった。


 「へ?突然なに言い出すのよ。あんたが女だったら逆に怖いわよ」


 私の軽口にだけどユータは乗ってこなかった。見た事のないぐらい怖い真剣さで私の肩を掴む。そのせいで自然と私たちは顔を合わせる体勢になった。


 「・・・・・・・・背だってもっと高くなる。体格もきっとガッシリしてくる。僕だって大人になるんだ」


 「ユータ?」


 言いたいことが分からず首を捻る私にユータが痺れを切らしたように叫んだ。


 「つまり!いつまでも弟扱いされるほど僕は子供じゃないってことだよ!!」


 言うだけ言うとズンズンスピードをあげて先に行くユータ。・・・・弟扱いが気に入らなかったのかな?


 「やれやれ・・・難しい年頃だね。ふーむ、反抗期ってやつ?」


 年頃を考えたら有り得るね。弟っていう庇護される対象に見られるのが我慢ならないってことなのかな・・・・。


 「アキ姉!!置いていくよ!!」


 少し先でユータが立ち止まって怒鳴ってくる。・・・・・・・勝手に先に行ったのはあんたでしょうが!!カチンときた私は追いつくなりユータの首に手を回し頭に拳を念入りに押し付ける。


 「うあっ!!」


 「勝手に先に行った分際でなに偉そうにしてんのよ」


 「ば、ばか!!アキ姉!!慎みをもて!!」


 なんでか顔を真っ赤にして暴れるユータ。・・・・なにをそんなにこいつは恥かしがっているんだろう?疑問符を浮かべた私に気付いたのかユータはひどく言いにくそうに真っ赤な顔でやけくそのように叫んだ。


 「む・・・胸が顔に当たってんだよ!!」



 「・・・・・・・・・・・・へっ?」


 視線をゆっくりと下に向ける。

 ユータの顔は丁度私の胸の辺りに・・・・・・・って!!

 気付くと私は全力でユータを突き飛ばしていた。ついでに顔を真っ赤にして怒鳴りつける。


 「のぁ!!この!!ドスケベ!!」


 「自分から引き寄せたんでしょうが!!僕が殴られるのはなんかおかしいでしょ!!」


 「な、人聞きの悪いことを言うな!!」


 事態を把握した瞬間、反射的に私は手を翻しユータの後頭部を叩いていた。

辺りに小気味いい音が響き渡る。真っ赤になって怒鳴る私にユータが頭を押さえながら涙目で抗議する。だが、私の気がすまない。


 「どやかましい!!大人しく私の気が済むまで殴られなさい!!」


 「うぁ~ん!!アキ姉の横暴!!」


 逃げるユータを全力で追っかける。毎回毎回掃除当番をサボる男子を追っかけて鍛えた俊足を舐めるな!!

 ぐんと二人の距離が縮まる。恐らくはユータにとっては恐怖の距離。


 「待ちなさい!!逃げると余計に刑は重くなるわよ!!」


 「不可抗力だ!冤罪だ!断固僕は無罪を主張する!弁護士呼んで!!」


 「うっさい!!私が黒といえば白も黒になるのよ!!」


 「僕は潔白だ~~~~~~~~~~~~~~~!!」


 ユータの絶叫が雪の散らつく冬空に響き渡った。



 「で、全力疾走で学校まで追いかけっこしたあげくに相手には逃げられたと?」


 肩で息をして登校してきた理由を説明し終わった私に、親友の林疾風は校内外にもファンがいるという男前なお顔を微妙に歪ませていた。肩も振るえ口元は際限なく痙攣している。その様は普通の人間ならカッコイイとは言えないだろうがはやて君だと何故かカッコイイと思える。私は横目でふて腐れた顔のまま一言。


 「はやて君・・・・笑いたいなら笑っていいわよ」


 次の瞬間、はやて君は腹を抱えて爆笑した。身長百七十センチ以上あるはやて君が椅子の上で足をじたばたさせながら肩を震わせている。そんなはやて君を何事かとクラスメート達が振り返るが私が振り返るとすぐさま目線を逸らす。ふん!なによ。そんなに怖がらなくてもいいじゃない。


 一応言っておくがはやて君は「女性」である。父親似だという外見とそこらの男より男前な性格と武道家だというお祖父さんの影響である時代掛った喋り方に加え、双子のお兄さんと逆で届け出てしまった「疾風」という名前のせいで誤解を大量生産するが事実である。

 ええ、ええ。いいですよ。自分でも笑われるようなことをした自覚はありますよ~だ。

 私がふて腐れているのがわかったのかはやて君はどうにか笑いのツボから復活を果たす。・・・目じりには笑いすぎて涙がたまっていたけど・・・。


 「いや・・・相変らず雨沢の幼馴染どのは笑わしてくれる・・・。二人で漫才師としてデビューしたら売れるのではないのか?」


 「はやて君。悪いけど全然うれしくないから。ていうか私らは人を笑わせようと思っているわけじゃないし」


 「本気なら尚のこと面白い。天然ものか」


 「私らは築地のマグロか!!」


 ツボに入ったらしいはやて君がぶほっといつもの彼女からは考えられない顔で噴出した。


 「ま・・・・・・っ!!ぐっ!ははははははははははははっ!!」


 再び腹を抱え、爆笑するはやて君。それこそ水揚げされたマグロのように机の上でひくひくしていた。


 「素でここまで楽しいことをしてくれるのだから雨沢の幼馴染どのは一緒にいると退屈しない御仁なのだろうな」


 まぁ、確かに退屈はしない。だが、その倍ぐらいの騒動に巻き込まれるのは確実だ。

 十六年間巻き込まれ続けた私が言うのだからこれほど説得力がある言葉はないと思う。


 「ははっ。確かに退屈はしないだろうけど振り回されて大変よ」


 乾いた笑い声をあげる私をなにやら楽しそうにみるとはやて君が頬杖をついて人の悪い顔をしていた。


 「ふふ。本当に振り回されているのはどちらだろうな」


 「・・・・・・・・・はっ?」


 謎かけのようなはやて君の言葉に眉を潜める私にはやて君は思わず見とれるような秘密めいた笑みを浮かべるのみであった。


 「変なはやて君」


 彼女の本意がわからなくて首を傾げていると教室の入り口辺りから「がんっ!」と聞くからに痛そうな音が響いた。

 続いて聞こえてきたのは少女の「いたたた・・・」という声。聞き覚えのあり過ぎるその声に私とはやて君は同時に顔を見合わせる。


 「これって・・・・」


 「あいつしかおるまい」


 さもありなんと頷くはやて君。私たちは顔を見合わせ揃ったように溜息をついた。


 「にゅ・・・。扉が、なんで開いていないのぉ~~~~????」


教室の引き戸が開けられ一人の小柄な女子生徒が鼻を擦りながら入ってくる。

本当に小柄な・・・制服を着ていなかったら小学生に間違いそうな身長に普段はボザボザに伸びた髪のせいでわからない童顔を顔から突っ込んでぶつかった額を撫ぜるために珍しく晒している。


 「・・・相変らず、ドジね。椎ちゃん」


 「同感だ。どうしたらそう毎回毎回同じところにぶつかることが出来るんだ。多須賀」


 私とはやて君の至極真っ当な突っ込みに多須賀椎奈(たすがしいな)は涙の滲んだ目で迫力のない睨みつけをしてきた。


 「ふたりとも・・・ひどい・・・!」


 ず~んと落ち込んでしまった椎ちゃんを二人で慰めていたらすぐにHRが始まった。

 そんな中で今朝の出来事は私の中で薄れていった。

 この時、私は彼が何を思っていたのか何も知らずにいた。

 変化はすぐそこまで来ていたのに。

 何も知らずにただ私は無邪気な関係が永遠に続くとそう信じていた。


 「ア~キ~姉!!今日暇?暇だよね!!だったら僕と一緒に帰ろう!!僕、アキ姉と一緒に帰りたくて急いできたんだよ!!」


 廊下から聞こえてくる大声にHRが終わったばかりの級友達が何事かとザワメク。名指しされた本人は思わず机に顔を伏せた。


 「呼んでいるぞ」


 はやて君の声で顔をあげるがその先には笑い寸前の表情でこちらを見ているはやて君の姿があった。この笑い上戸め!!

 心の中で思いっきり叫ぶとこんどは椎ちゃんが例の害のない笑顔で柔らかく一言。


 「アキちゃん好かれているねぇ・・・・・」


 のほほんと結構的外れなコメントをする椎ちゃん。こんな好かれ方されても嬉しくない!!


 「あの・・・・・馬鹿・・・・・・・・・!!」


 唸り声のような呟きが私の口から漏れる。本気で怒ったわよ!ユータ!!

 こんな場所で大声で人の名前を呼んだりして!!


  「ア~キ姉!!無視しないでよ~~~~~~~!!」


 今や教室中の視線が私に集まっているような気さえする。これと言うのもあいつが人の名前を大声で連発するからだ。

 ほっといたら際限なく恥じをかかされそうだったので私は鞄を手に廊下に出た。


 「あ、アキ姉!!」


 犬のように無邪気に寄ってきたユータの頭に私は無言で拳骨を落とした。


 「痛っ!!なにするんだよ!!」


 突然の暴挙に涙目で反論してくるユータの襟首をムンズと掴むと私はそのまま早足で歩き出す。ユータがなにか言ってくるが無視だ。 


 「ち、ちょっとアキ姉~!放してよ~」


 チラリと教室を見ればものすごく面白そうな顔ではやて君が小さく手を振っていた。・・・・絶対に面白がっている。

 せめてもの意趣返しに睨みつけてみるが逆に微笑ましそうに見られ、微妙な敗北感。

 クスクス笑うはやて君の隣で椎ちゃんが事態に一人乗り遅れ顔面一杯に?マークを浮かべている。ああ、椎ちゃん。あなたのそういう所可愛くて好きだけどこんな時は少し羨ましいし恨めしいよ・・・・。

 そんなこと考えながら私は廊下をズンズン進んだ。


 「アキ姉~!なに、怒ってんの?」


 「怒ってない」


 「うそだ~。怒ってる」


 「怒ってないってば!」


 延々同じ様な会話を続けながら私たちはいつもの帰り道を歩いていた。


 「アキ姉、絶対に何かへそ曲げている。アキ姉って怒ると眉間にキッチリ三つ皺が出来るんだよ」


 思わず手が眉間に伸びかけ、ユータのにんまり笑いに一杯食わされたことに気付いてむっとなる。


 「思わず確かめようとしたところを見るとやっぱり怒ってたんだ」


 得意げに喋るユータにちょっとばかり腹が立つ。

 私が単純なのかこいつが巧みなのか口喧嘩でユータに勝ったことはここ数年とんと覚えがない。


 「怒ってない!!」


 ぷんとそっぽを向いて歩き出そうとした私の腕をユータの手が掴む。・・・なに?と振り返る。


 「アキ姉これから暇でしょ?」


 「ちょっと待て!!なにその断定口調!!」


 私が暇だと欠片も疑ってない辺りものすごく腹が立つ。もう、表情からして私に予定がないって確信しいているねこいつ!!


 「あれ?なにか用事でもあった?」


 にこにこと邪気のない笑顔で聞いているけどこいつ絶対に答えわかって言っているよ。

 ちょっとしたプライドからなんとなく下を向いて唸る私の手をユータが引っ張る。


 「暇ならちょっと僕に付き合ってよ。楽しいもんみせてあげるからさ」


 そう言ってにやりと笑うその顔は小さい頃から散々見せ付けられた何か企んでいるときのこいつの定番笑顔で・・・・私はぐんと濃厚になった厄介事の気配に顔面蒼白になる。


 「ち、ちょっとちょっと!!ユータ今度は何を企んでいるのよ!!」


 厄介事に巻き込まれてなるものかと吼える私を引っ張りながらユータは振り向きもせずに一言。


 「僕にとって一世一代の大勝負があるんだ」


 「はっ?」と聞きかえすが答えはない。

 本気で一瞥もしないでグングン進むユータに私は何となく何も言えなくなる。ユータの背中が何も聞くなと言っている気がしたのもあった。

 だけど一番の理由はユータが私の知っているユータと違う気がしたからだ。

 繋いだ手は温かいのにユータのことなら何でも分かっていると思ったのにこんな様子を見せられたら実は何も分かってなかったんじゃないかと、そう思った。


 「さぁ~て一番目の目的地到着~!」


 「って・・・ここ小学校じゃないのよ・・・・それに一番目って・・・・」


 「まぁ、気にしないの!卒業以来じゃない?中に入ろうよ」


 グイグイと手を引っ張られ強引に小学校の中に入る。下校時刻を過ぎているのか校内に子供の姿はない。私たちは職員室で校内の見学の許可を得るとブラブラと中を見て回る。

 卒業して四年以上たつとやっぱりどこか違う学校に少し感慨深いものを感じユータに手を引っ張られたままキョロキョロと辺りを見渡す。


 「懐かしいね。ねぇ、アキ姉覚えてる?アキ姉が六年生のとき修学旅行でさ」


 「覚えているわよ。私の人生の中でベスト5に入るぐらいの悪夢だったんだから・・・・」


 そうあれは私が小六ユータが小五の時。長崎へ四泊五日の修学旅行に行くことになった私にユータが自分も一緒にいくとだだを捏ねたのだ。

 どんなに説得しても叱り飛ばしてもまったく屈せず「絶対一緒に行く!」の一点張りだったユータに私も両親も先生もえらく困った記憶がある。

 あの頃からユータは私にベッタリで教室が違うことすらも納得がいかないようだったのだから五日も私と離れているのが耐えられなかったのだろう。

 幾ら言葉を重ねても言うことをきかないユータは当日についてこようとするのを私とユータの両親が総出で止めて何とか私は修学旅行へと出かけられたのだが。

 その時、私たちはユータを甘く見すぎていたのだ。


 「あんた自分で交通機関を調べて後を追ってきたんだよね」


 そう、出発したら諦めると思ったのが間違いでこいつは自力で追っかけてきたのだ。

 ちゃんと宿泊先まで調べて、ちょこんと現われたユータの小学校五年生にあるまじき行動力と実行力に私は怒るより先にあきれ返ったものだ。


 「そういえばあんたなんであんな無茶したのよ。後で散々怒られたんでしょ?」


 五日すれば帰ってくるんだからと言う私にユータがなにやら酷く複雑怪奇な顔で振り返る。眉を潜め、じっと私を見る。


 「な、なによ・・・・」


 「アキ姉は・・・・本気で鈍いよね・・・僕、あれで気付いてくれたかと思ったのにまったく全然気付いてないみたいだし」


 「・・・・・・・・・・?何に気付いてないって?」


 顔に?マークが浮ぶ私をしばらく無言で見詰めるとユータは盛大に溜息をついた。


 「アキ姉に五日も会えないなんて冗談じゃないって思ったから追いかけたんだよ。怒られるとか後でどうなるかなんて全然考える暇なんてないぐらい強くそう想ったんだ」


 一息に喋るとユータは言葉を切り何かに期待するように私を見る。その言葉に私は


 「ユータって昔から幼馴染離れ出来ないよね。あの頃なんて一番酷かったし。修学旅行事件なんてその最たるものじゃない」


 ガックリと前を歩くユータの肩が落ちた。その背中はなぜだか煤けて見える。


 「ユータ?なに?私なんか変なこと言った?」


 「い~や!別になんでもないよ!!」


 ヤケクソのようにそう叫ぶユータに私の?マークは増える一方である。

 こんなことで凹んでいたらアキ姉と一緒になんていられないしとかぶつぶつと呟いていた。内容は声が小さすぎて私にはあまりよく聞こえなかったが。


 「でも、本当に懐かしいな・・・なんだかあの頃はとっても大きく見えていた建物がなんだか違う風にみえるよ」


 「それだけ僕らが成長したってことだよ。昔は世界にあるもの全てが大きく見えていた気がするのにね」


 静かなユータの声に私は無言で頷いた。そう、子供の頃は身の回りにあるもの全てが大きく思えた。背が伸び、視点が高くなっただけでなく心も昔とは違う。だから学校の風景が違う風に思えてしまうのだろう。


 「変わってないって思っていてもやっぱり変わっているんだね」


 「そうだね・・・だけど変わらないものだってあるよ」


 繋いだ手がぎゅっと強く握られる。


 「僕がアキ姉の側にいるってことは変わらない」


 絶対に変わらないと自信満々に断言するユータに私は思わず微笑んだ。

 「絶対に?」


 「絶対。アキ姉が嫌だって言っても僕は側にいるよ」


 ものすごく真面目な顔で言うものだから何となく茶化せない雰囲気になる。

 視線を外しながら私はぼそりと呟く。


 「どうして・・・?」


 「僕が側にいたいから。それだけだよ」


 迷いのない即答。ユータの答えに何故だが一瞬、心が苦しく感じた。

 それっきりユータはこの話題については触れなかった。

 側にいたいからと言ったユータの声は微かに緊張を孕んでいてそれが何かは分からなかったけど彼が大きな決意を込めてその言葉を言ったことは伝わった。だけど私にはそれが何を意味するのかまではわからなかった。

 

 小学校を皮切りに児童公園・よく遊びに行った駄菓子屋さん・野原など子供の頃遊んでいた場所をユータは順々に回っていった。

 最初はぶつくさ文句を言っていた私だが懐かしい場所を回るうちに昔話に花が咲き結局は一緒になって楽しんでしまった。

 そして薄暗くなっていく夕闇の中、最後に訪れたのは小さな丘の上の大木の下。

 古い記憶が私の中に蘇る。


 「懐かしいね。「秘密の場所」だ」


 目を細め、眼下に広がる街並みを見る。ここは街の中で一番景色が綺麗な場所。子供の頃の私とユータだけの「秘密の場所」。昔は毎日のように遊びに来ていた場所だ。

 あんなに大好きな場所だったのに不思議と思い出さなくなっていた。


 「アキ姉・・・・覚えている?僕が昔ここでアキ姉とした約束」


 また、古い話を持ち出してきたな。確かあれって私が小学校上がる前の

話だったよ。

 クスクスと緩みそうになる口元を何とか引き締めながら私は「もちろん」と答える。


 「『ずっと大人になっても側にいる』そう、約束したよね」


 それは他愛の無い子供の約束。


 『指きりげんまん嘘ついたらはりせんぼんの~~ます!指きった!』


 幼い声が耳に蘇ってくる。


 「思えばユータとはあんたが生まれた時からの付き合いだよね。本当に長い間一緒に過ごしてきた」


 「うん・・・そうだね・・・・」


 大きな木の幹に寄りかかって空を見上げる。ユータも同じように寄りかかる。二人背中合わせに暮れていく冬の空を見上げていた。

 頭の上で夜風が梢を鳴らすのをただ二人、静かに聴いていた。


 「きっとさ、こらからもずっと同じように一緒にいるんだろうね。あの約束通りにさ」


 大人になっても私たちの関係は変わらない。お隣同士で幼馴染でユータは甘えん坊の弟分。

 賑やかで楽しい日々。

 懐かしい約束を思い出し私はそんなことを口にしていた。ユータも同じ気持ちだと疑いもせずに。


 「・・・『同じ』?」


 手痛いしっぺ返しはすぐにきた。

 ひどく低いユータの声が聞こえたかと思うと耳のすぐ側で「バーン」と幹を叩く音がして、私は肩を震わせた。

 気付くと私の目の前には怖い顔をしたユータが幹に手を付いて立っていた。

 

 「ユ、ユータ?」

 

 ドクンと心臓の音が聴こえた。いつもと明らかに雰囲気の違うユータに私は動揺して声が上擦る。そんな私を見たことのないような冷たい目でユータは見ていた。

 

 「『同じ』が・・・いいの?」

 

 ユータの手が私の髪を一筋つまみあげ、そしてそのまま頬に触れた。触れられた途端に電流でも流れたように私の体が震えてしまう。

 そんな私を見てもユータは何も言わずに少しだけ目を細めた。


 「僕は・・・・『同じ』じゃ嫌だ」


 ユータに触れられた頬が熱い。胸の奥で何かがざわついている。予感がした。


 ソノサキヲキイテハイケナイ



 「俺は『変わりたい』。僕は貴女のことがずっと・・・・」


 「駄目!!」


 気付いたらそう叫んでユータの胸を押していた。駄目だ。聞いてはいけない。聞いたら変わらないといけない。


 「アキ・・・・」

 

 耳を塞いで必死に頭を振る。

 

 「お願い、言わないで・・・・」

 

 ユータが何を言おうとしているのか分からないけど聞くのが怖かった。

 聞いたら終わってしまいそうで。

 もう二度と今の関係には戻れないと理屈でなくそう悟っていた。

 

 「お願いだから・・・」

 

 変わりたくない。壊したくなんてない。

 

 「・・・・・壊さないで」

 

 この心地の良い関係を。

 ぎゅっと強く目を瞑っていたからその時、ユータの顔にどんな表情が浮んでいたのか私は見なかった。

 

 「・・・・・ゴメン・・・・・」

 

 小さな謝罪と共に私の体はユータの腕の中に閉じ込められた。冷え切った身体にユータの体温がよく感じられた。 

 昔は私の方が身長も体格も大きかった。子供の頃のユータは華奢で女の子みたいでそんな彼の前を歩いて私は手を繋いで引っ張っていた。なのに今、私の身体はユータにすっぽりと納まっている。強い力。大きな手。一つ一つが自分とはまったく作りの違う身体。

 私の知っている・・・いや、知っていると思っていたユータとは全然違う。

 朝にユータに身長を抜かされていることに気付いた時のあの寂しいような驚きのようななんとも説明できない気持ちが再び出てくる。それも朝より何十倍も強く。


『僕はアキ姉の「弟」じゃない・・・僕は「男」だよ』


ああ、あのセリフの意味は・・・・・。



 「僕は壊すよ・・・・・・」


 何もかもが分かってしまった。ユータが何を言いたいのか、なにを壊すのか・・・・なにを望んでいるのかを。

 胸が苦しくて涙が零れた。抱きしめられていたからユータの顔が見えない。それに私は心底安心していた。

だから覚えているのは声と強く抱きしめられた感覚とたった一つの言葉。


 「好きだ」


 そのたった一言だけが私の中に刻みこまれた。


 ずっと側にいて、とても居心地のよい関係だった。ずっとずっとそれが続いていくんだと疑いなく信じていた。

 学校を卒業しても大人になってもずっとこのままでいられるとそう、思い込んだ。

 私は「変わらない」と信じていた。でもユータは違った。

 彼は「変わること」を望んでいた。そして変えるための言葉を彼

は紡いだ。それまでの関係が崩れることを覚悟の上でユータは自分

の想いを私に伝えた。

 私たちの関係は壊れ、そして再び築き直している。

 でも叩き付けたガラスが元通りには戻らないように私たちもまったく同じ関係には戻れない。

 直ったそれがどんな姿になるのかは私の出す答えで決まる。




ドアを開けるなり私は服も着替えずにベットに倒れこんだ。何もする気が起きない。考えるのがひどく億劫だった。

 ボンヤリと床に放り投げた鞄を見ていた。

 ユータの告白の後、私はユータを突き飛ばすとそのまま走ってその場から逃げ出した。

 いま思えばかなり酷い対応の仕方だ。責められても仕方がない。だけど、ユータは私を追いかけては来なかった。・・・・・・・正直、心底安心した。

 

 「バカ・・・・いきなり何言ってくるのよ・・・・」

 

 いつからそんな対象として見られていたのだろう。どうして私だったんだろう。

 ユータはあの関係を壊すのが怖くはなかったのだろうか?

 考えるのが億劫だったのにも関わらず気付くとユータのことを考えているのに気付き私は顔を枕に埋めた。

 いやだ。考えたくない。何も、考えたくないのに。

 涙が出てきて止まらなかった。

 声を押し殺して枕に顔を埋めてどれぐらいたっただろうかトントンとドアをノックする音と共に母さんが入ってきた。

 

 「秋、ちょっといい・・・って貴女制服のままで寝ていたの?」

 

 驚いたような母さんの声に返事をするのも億劫で私は黙って頷いた。

 そんな私を母さんが心配気に見つめる。

 

 「大丈夫?調子でも悪いの?」

 

 枕に顔を埋めたまま否定しようとして・・・・突っ込まれたら答えられないと気付き頷く。

 嘘を付くのは心苦しいがここは騙されてもらいたい。

 絶対に本当のことは言えないから。

 母さんはちょっと困ったように頬に手をやった。

 

 「あらあら・・・なんだか勇太くんが貴女に用があるって今、下に来ているんだけど・・・・・どうしましょう?」

 

 「勇太」という言葉に体がびっくと震える。どうしようと心が苦しくなって引っ込んでいた涙が再び滲んできた。

ぎゅうとシーツを強く握るとどうにか冷静な声を作れた。

 

 「・・・悪いんだけど・・・どうにも、調子が悪いから・・・母さん代わりに用事聞いといてくれる?」

 

 一生懸命いつも通りなんともない声を出そうとするがやはり完全に動揺が隠せない。だが逆にそれが調子の悪い印象を強めてくれたのか母さんが納得してくれた。

 

 「そうね。じゃあ私が聞いとくわ。後で夕飯を持ってきてあげるから服を着替えてベットに寝ときなさい」

 

 「うん・・・・ごめんね。母さん」

  

 「?こういう時はアリガトウでしょ?変な子ね」

 

 ふふと笑いながら出て行く母さんの後ろ姿にもう一度だけ小さく「ごめんね」と囁く。

 不意に目頭が熱くなった。あ、と思ったときには大粒の涙が握り締めた拳に落ちて弾けた。

 

 「・・・・・・最低っ・・・・・・・・・!」

 

 本当に私、最低だ。でも、逢いたくなかった。逢ってもどういう顔していいのか分からない。

 でもそう考える自分が自分の気持ちしか考えてないのもわかるから余計に自己嫌悪が強くなっていく。

 

 「本当に・・・最低だっ!私!」

 

 自分が傷つくのが嫌だからユータを傷つける方を選んでいる。

 ぽたぽたと止まらない涙が嫌だ。泣くなんて私らしくない。泣くよりももっと適切な行動があるだろうと思うのにただ泣く以外できない。ノロノロとカーテンを開いて下を覗く。母さんに小さく一礼しているユータが見える。ほんのついさっきまでユータと一緒にいてそして告白されたなんて嘘みたいだ。

 こつんと窓におでこをくっつける。

 ひんやりした感じが気持ちいい。

 夢だと思いたい。だけど、夢じゃないんだ。

 

 「・・・・・っ!」

 

 ユータがコッチを見上げる。一瞬だけ瞳が合った。その瞳に得体の知れない恐怖を感じて私は黙って カーテンを閉めた。閉めて、そのままその場に崩れ落ちる。握りこんだ拳に涙が落ちて弾けた。

 どうしようもない気持ちに私はただ泣き続けていた。


 ジャンジャンジャン!!

 突然鳴り響いた軽快な音に涙が引っ込んでしまう。床に投げたままの鞄の中から聞こえてきていた。


 「あ、携帯・・・」


 着信を見るとはやて君からだった。    

 通話ボタンを押すと相変らずの美声が聞こえてきた。

 

 「雨沢か?夜分遅くにすまない」

 

 いつものはやて君の耳に心地よい声が携帯から聞こえてきて私の目がまた潤んでくる。

 

 「はやて君・・・・・・・・・・・・」

 

 「宿題の事で少々聞きたいことが・・・雨沢?どうした?声が沈んでいるぞ?」

 

 気遣うようなはやて君の声に甘えたくなる。だけどぐっと堪えて私はなんでもないと口にした。

 はやて君はしばらく黙り込んでいたがやがて用事を切り出し私は短くそれに答える。

 

 「そうか・・・ありがとう。ところで雨沢。ここから先は自分の独り言だから気にするなよ」

 

 「え?」

 

 突然のことで私は目が点になった。

 

 「苦しくなったらいつでも頼れ」

 

 「――――っ!!」

 

 全部、見透かされたかのようなセリフに堪えていた涙がまた溢れ出す。必死に嗚咽を堪える私に気付いているのだろうけどはやて君は触れないでくれた。

 優しい低めの声が私の耳を擽る。

 

 「自分はいつだってお前の味方だから愚痴も弱音も悩みも何時間だって聞いてやる。どうしようもなくなったらいつでも呼べ。どんな時でもどんな場所からだって駆けつけてやる」

 

 「はや・・て、君・・・・」

 

 「なんだ?」

 

 優しい私を気遣ってくれていると分かる声が心に温かく染みる。

 

 「・・・・・・・・・・・・ありがとう」

 

 「独り言だと言っただろ?礼を言われる理由が分からないな」

 

 優しい親友はおどけてそう言った。

 私は涙を拭うといつものように憎まれ口を叩いた。

 

 「はやて君が男だったら私絶対に惚れていたわ。ものすごい口説き文句だったもの」

 

 「・・・・・・口説いたつもりはない。純粋な励ましのつもりだった。それに私は女人を口説く趣味はないと何度言えば理解する」

 

 憮然とした口調から眉を顰めたぶつちょう面が思い浮かぶ。きっと電話口で苦り切った顔をしているに違いない。

 

 「無意識のタラシが一番たち悪いわね」

 

 「あ~~~め~~~ざ~~~~わ~~~~~~~!!」

 

 「あははは。ゴメンゴメン!」

 

 「まぁ、いい。元気が出たみたいだしな。何があったのか知らんが落ち込みすぎるなよ」

 

 「うん。ありがと。・・・・お休みなさい」

 

 「ああ、また明日」

 

 はやて君のおかげで気持ちが大分浮上していた。

 私は立ち上がるとベランダに出て身をのり出してお隣を見る。隣のユータの部屋がよく見えるが寝ているのか電気がついていない。昔はベランダからよくお互いに行き来していたけど中学に上がる頃にはさすがにしなくなっていた。

 じっとユータの部屋を見つめる。いま、あそこにユータはいるのだろうか?なにを考えている?

 物思いに耽ってしまう。

 ユータの気持ちに対する答えはどうなのだろうか?

 ユータの「好き」と私の「好き」。

 違いはなに?

 私はどうしたいの?

 ユータとどういう関係を築きたいの?

 自分に問いかけてみても答えは返ってこない。

 冷たい夜風だけが私の耳元を通り過ぎていった。


 


 教室に入った私を見るなりはやて君と椎ちゃんが目を丸くした。

 

 「・・・・・雨沢。目の下がすごいことになっているぞ」

 

 「眠気覚ましのガムがあるよ?食べる?」

 

 椎ちゃんがくれた眠気覚ましのガムを噛みつつ私はチラリと昨日の出来事を思い返す。

あの後、布団に入った後もずっと眠れず、一晩考えても答えは出なかったのは我ながら情けないと思う。

 今朝、ユータは迎えにこなかった。多分、昨日自分の気持ちを暴

露してしまったから顔を合わせづらいからだと思う。それは分かる

わよ。だけど。

 

 「いい逃げって卑怯じゃない・・・」

 

 知らず知らずのうちに頬がふくれっ面になる。

 卑怯だ。それにこの問題になったらどうもアイツに主導権握られているような気がするし、いつものようにポンポン物言えないし心臓はバクバクするし顔は赤くなるし本気で心臓破裂して死ぬんじゃないかと思うようなセリフやら行動やらが増えているし!

 告白から今までを振り返ってみると出るわ出るわ文句。溢れんばかりである。

 

 「ねぇ、はやて君・・・アキちゃんが百面相しているよ?なんで?」

 

 「何かあったのは確かなんだが自分にも詳細はわからん。しかし実に興味深いな。一つとして同じ表情をしない」


 冷静に観察している友人二人には気付かないで私はユータへの文句をツラツラと心の中で挙げていた。

 そうよ。大体、ちょーっと前まで泣きながらアキ姉アキ姉って私の後をついて来てくせにいきなり全く知らない男の子の顔して。


 「ずるいじゃない」


 こっちは弟分とか幼馴染としてのユータしか知らなかったのに不意打ちもいいところだ。あんなの見せられたら・・・動揺するのは当たり前じゃない。


 「本気で・・・ずるいよ」


 忘れられない表情ばかり見せて。こっちばかりドキドキさせられて本気でユータはズルイ。


 「あ~!わからん!!本気でややこしいな!おい!!」


 頭を抱えて叫ぶ私をはやて君と椎ちゃんがギョッと見ると再びこそこそ顔を寄せ合う。


 「これは、相当重症?」


 「う~む。昨日、一体なにがあったんだ?」

 

 二人とも私の相談に乗ってくれる気、あるの?ないの?ていうか微妙に二人が私から距離とっているように見えるのは気のせいですか!!

 

 「いや、今日の雨沢はどこか言動がぶっ飛んでいるから近寄りがたいのだ」

 

 「う~ん。アキちゃん・・顔がとっても悩んでいるよ?」

 

 それってなにですか?今日の私は奇行が多いんで近寄りたくないと?それに椎ちゃん・・・悩んでいる顔の人間から貴女は距離をとるのですか?

 いかん。寝不足と悩みすぎで思考回路がネガティブになっている。

 ブンブンと頭を振って気をしっかり持とうとするが目の前が益々クラリとしただけで何も効果はなかった。って、あれ?本気で目の前が真っ暗に・・・

 

 「おい!雨沢!!」

 

 「アキちゃん!」

 

 慌てたような二人の声もどこか遠くに感じる。

 ああ、そういえば昨日から何も食べてない・・・・・・。

 夕飯・朝ごはん抜きに加え寝不足だもんね。そりゃ目も回るわ。納得。


 チャイムが鳴り、はやて君と椎ちゃんが心配そうな顔で保健室に現われた。窓の外を見ると夕日がグラウンドを染めていた。・・・・どれぐらい眠っていたの?

 二人は私が教室でぶっ倒れたので慌てて保健室に担ぎ込んだことを教えてくれた。ついでに私が丸一日眠りこけていたことも教えてくれた。

 

 「原因は寝不足と貧血だ・・・自己管理がなってないぞ!」

 

 はやて君・・・・顔がすごく怖いんですけど・・・・・・。

 

 「アキちゃん!!本当に本当にほんと~に心配したんだからね!!保健の先生は大丈夫だって言ってたけどものすごく青い顔してるし手とかすごい冷たかったし・・・全然目、覚まさないから怖かったんだから!!」

 

 ポロポロと大粒の涙を流しながら私にしがみ付いて来る椎ちゃんを抱きとめながら私はものすごく二人に心配を掛けたんだなと実感した。

 

 「ごめんね・・・。心配かけちゃって」

 

 「本当だよ」

 

 「まったくだ」

 

 打てば響くように二人がそう返してくる。そのタイミングのよさに思わず私は噴出してしまい。続いて二人も笑いだし保健室に三つの笑い声が響いた。

 ひとしきり笑った後、はやて君が真剣な顔で切り出した。

 

 「で、何が原因でぶっ倒れるまで考え込んだんだ」

 

 ぶはっ!いきなり直球勝負ですか!はやて君!!

 

 「あ、私も知りたい~~~!!」

 

 絶対に私が心配とかじゃなくて好奇心から訊いているでしょ!椎ちゃん!!

 

 「~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」


 真っ赤な顔で俯いて私が洗いざらい白状するまでそんなに時間はいらなかった。


  

 


 「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

 話終えると三者三様な沈黙が場を満たした。

 

 「想像以上、だな。大分煮詰まっているとは思ったがそこまでとは・・・・」

 

 「えっと・・・アキちゃんは幼馴染くんに告白されてそのことで寝食忘れて悩みに悩んでその挙句教室でぶっ倒れてはやて君に運び込まれたんだね」

 

 なんか自分の行動を第三者の視点から言葉にされるとものすごく恥ずかしいんだけど!

 シーツと握り締めて悶絶しかけている私を無視して「ふむ」と腕を組み考え込むはやて君。

 

 「ここで問題なのは雨沢が幼馴染殿をどう思っているのか答えが出せないことなんだな?」

 

 頷く私にはやて君は「難しい問題だな」と口元に手をやった。

 

 「恋というものは厄介なものらしいからな・・・・」

 

 しみじみとそう言うはやて君の物言いはどこか物語を語っているみたいで実感はない。

 

 「まぁ、難しい問題なのは確かだ・・・。こればっかりは数学のように決まった答えがあるわけでもないらしいからな・・・」

 

 なんかよく考えてみれば私も椎ちゃんもはやて君も恋愛関係はまるきり縁がない人生を送ってきているのよね。

 こりゃ、相談する相手を間違えた?と思いかけたその時、私の制服の裾をクイクイと引くものがあった。横を見ると椎ちゃんがきらきらと私を見上げていた。

 

 「・・・・・・椎ちゃん?」

 

 私の背筋になにやら嫌な予感が走る。

 同じ不穏なものを感じたのかはやて君が心持ち身を引くがそれよりも速く椎ちゃんが私の手を取る。

 

 「あのね。アキちゃん。私思うんだけど・・・・・・・頭で考えるのをやめてみない?」

 

 「「・・・・・・・・はぁ?」」

 

 うろん気な声が別の口から二つあがった。そんな友人二人を椎ちゃんは真剣なだけど目だけはキラキラさせながら握り拳で語る。

 

 「ほら、アキちゃんてすご~~~~~~~~く、頭いいじゃない?」

 

 なんかいきなり脈絡のない話に跳んだな・・・。

 

 「それに計画性もあるし、しっかりしてるし、みんなのリーダーって感じじゃない?アキちゃんって物事を論理的に考えていくでしょ?」

 

 確かに私は計画を立て、実行し問題があればそれを解決するための最良な手段を考える。だけど、これとユータの告白とどんな関連性が・・・・?

 

 「でもね。恋愛ではそれって逆に邪魔なの」

 

 まるで私の思考を呼んだかのような椎ちゃんが意気込んで答える。

 

 「恋愛って頭で考えるものじゃなくて心。感情で感じるものなのよ」

 

 「え、で、でも・・・・・」

 

 「でもじゃないの!!ほら、どっかの誰かも言ってたじゃない。「考えるより感じるんだ!」って!」

 

 いや、それ、多分恋愛のことじゃないと思うよ。

 突っ込みそうになる私を遮るように椎ちゃんがにこやかに続ける。

 

 「ねぇ、アキちゃんは幼馴染くんのこと、好き?嫌い?シンプルに考えてみて」

 

 柔らかいのんびりとした椎ちゃんの口調に飲まれたのか私は随分と素直に彼女の言うとおりにしてみた。でてくる答えは。

 

 「好きだよ。・・・ユータの気持ちと同じ好きかどうかはわからないけど・・・」

 

 そう、「好き」なのだ。それだけは間違いない。

 

 「じゃあ、一緒にいてドキドキしたりする」

 

 「そりゃ・・・告白されてからずっとドキドキしぱなしだし・・・・それに・・・」

 

 「それに?」

 

 「それに・・・・なんだかユータが違う風に見えて困る」

 

 「どんな風に見えるの?」

 

 この時私は自分のことで一杯一杯で椎ちゃんが私を誘導尋問していることも外で立ち聞きしている人物がいることにも全く気付かなかった。

 

 「~~~~~~~~まったく知らない男の子に見える。ずっと弟みたいだって思っていたのに急に全然知らない男の子に告白されたみたいで・・・どうしたらいいのか分からなくなるの。確かユータのはずなのに私の知らないとこ一杯あって困る」

 

 椎ちゃんが慰めるように私の肩を叩いた。

  

 「アキちゃん。最後の質問。今、幼馴染くんのこと弟のようだって思える?」

 

 私は言葉の意味を考えるよりも早く答えていた。

 

 「・・・・・・・・思える訳ないじゃない!!」

 

 思えるはずがない。思えない。理由なんてわかんないけどもう、そんな風には思えない。

 

 「そっか・・・・私はアキちゃんの気持ちわかっちゃった」

  

 「・・・・遺憾ながら自分も」

 

 驚いて顔をあげると二人はしょうがないなぁと言わんばかりの表情で保健室の外に声を掛ける。

 

 「という訳だからあとは君の頑張り次第~~~」

 

 「お膳立てはしたのだから上手く生かせよ」

 

 私が事態を把握するより早く出て行く二人と入れ違いに入ってきたのは・・・・。

 

 「ユータ・・・!!なんで・・・・・・」

 

 「アキ姉が倒れた時点であの二人が血相変えて僕のところにやってきて有無を言わさず連れてきたんだよ」

 

 それから休憩時間ごとに様子を見に来ていたとユータは言った。

 

 「ってことはもしかして・・・今までの話全部!!」

 

 叫ぶ私にユータは困ったように頬をかいた。

 

 「うん・・ごめん。全部聞いていた」

 

 恥ずかしすぎる!!!!

 

 真っ赤になって思わず叫んだ私にユータが慌てて近寄ろうとするもんだから私はさらに叫んで彼から距離をとる。

 

 あれ?なんだろう?どうしてだろう?なんだかものすごく恥ずかしいですよ?

 

 さっき自分が言ったことを思い返し、羞恥心で死んでしまいたくなる。

 恥ずかしさの余りユータから逃げた私だったけどどうやらユータにはそれが気にくわなかったらしく彼は怖いほどの笑顔で私のいるベットに乗ってきた。

 

 「ち、ちょっと!!ユータ!!!!!!何考えてんのよ!!」

 

 「アキの方こそなに考えているの?」

 

 にやにやと意地悪そうに聞いてくるユータが心底憎い。

 っていうか絶対にこいつ分かっていて聞いている!

 

 「~~~~~~~~~~~~~~っ!ユータのドスケベ!!」

 

 気付いたら顔を毛布で隠しながら悔し紛れにそんなことを叫んでいた。だけどユータはしれっとしたもので。

 

 「男は皆好きな女の子の前では助平なものだよ」

 

 「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」

 

 ユータの言葉にかっーと頬に熱が集まるのが分かる。

 ますますもって毛布から顔を出せない。駄目だ駄目だ。どんな会話をすればいいのかどころかどんな顔をすればいいのかすらもわからない!

 

 「アキ」

 

 びくりと肩が震える。声が意外なほど近くから聞こえてきた。

 

 「僕のこと弟に見られないんだ?」

 

 酷く嬉しそうなその声に素直に頷けずに私はただただ布団を掴む手を強める。

 

 「それって男として意識しているってこと?」

 

 「ち、ちが、そんなんじゃなく・・・・」

 

 思わず顔を上げて否定しようとした私だがユータの顔を真正面から見据える破目になり再び顔が真っ赤になる。

 

 「そ、そんなんじゃなくて・・・・・これはその・・・・・・・・・・」

 

 声がどんどん萎んでいく。気持ちがぐるぐるする。どんな言葉を言えばいいのかどんな顔をすればいいのか誰か教えて欲しい。

 

 「私は・・・・・・」

 

 心臓がドキドキする。何を言いたいのか自分でもわからないのに何か、伝えたい。

 大切な何かを伝えなきゃいけないのだ。

 

 「私・・・・」

 

 グルグルする思考。考えても考えてもわからない。

 答えが見つけられない。

 

 『恋愛って頭で考えるものじゃなくて心・感情で感じるものなのよ』

 

 椎ちゃんの言葉がぽんと頭に蘇る。

 考えてもわからないのなら・・・・なにも考えずに心で行動してみたら?

 親友の柔らかな笑みを思い出すと嘘のように動揺が治まっていく。

 ユータが私を見ている。

 私は、彼を、どう思っている?

 心はどう感じている?

 

 「アキ?」

 

 気付くと近くにユータの顔がある。

 見慣れた顔。だけど見慣れない表情を浮かべるようになった少年。

 私を好きだと言う人。

 関係が崩れてしまうと思った。

 変わってしまうことが心底怖かった。

 いろんなことを言い訳にして自分の気持ちを見ない振りしていた。でも、崩された。知らないふりはもう、できない。

 私は・・・・私は。

 

 「・・・・・・・・・き」

 

 意識せずに零れた言葉に私は口を押さえる。

 

 いま、なんて・・・・・・。

 

 自分の言葉が信じられずに動揺が胸の中に渦巻く。

 

 「アキ。いま・・・・・・」

 

 信じられないというユータの顔をみると先ほどの呟きは彼の耳にもばっちりと届いてしまったのは疑いようがない。

 

 「違う!!」

 

 猛烈な気恥ずかしさに襲われて私は思わず否定の言葉を口にする。だがユータから確信めいた表情は拭えない。

 

 「今、好きって・・・・・」

 

 「気のせい!!」

 

 必死になって否定するがすでに遅いことは自分でもわかっていた。

 

 「アキ」

 

 「違うってば!!」

 

 否定すればするほど泥沼にはまっていく気がした。

 

 「違わない」

 

 断言されて否定の言葉を奪われてしまう。

 

 「わ、私は!!」

 

 「僕はアキが好き」

 

 幸せそうに好きだといわれ一切の思考が奪われる。その隙を突くかのようにユータの顔が近寄る。

 柔らかなその笑顔に不覚にも目が奪われた。

 

 「アキも僕が好き」

 

 こつんと額が合わさる。

 

 「両想いだ」

 

 そんなことを本当に幸せそうに言ってくるユータを本気でしばき倒したかった。

 そんな優しい目で見詰めたり優しく抱き寄せたりしなければ遠慮なく殴っていたのに。今はどうしても手が動かない。

 突然自覚した想いを受け入れるには私の心の準備というものがまるで出来てなかった。

 ユータが言っていることが真実でもそれを認めるにはまだ動揺が大きすぎて覚悟がなさ過ぎる。

 なのに。

 

 「そうかアキは僕が好きなんだ」

 

 どうしてこいつはこっちの動揺も知らんと追い詰めるようなことばかり!!

 

 「うれしいな」

 

 本当に嬉しそうな笑顔を浮かべる男に本気の殺意が湧いてくる。好きだと自覚した途端に殺意が湧くのを止められない。

 

 「アキ。顔が怖いよ」

 

 からかうようなユータの言葉にぶちりと理性が千切れ飛んだ。

 さっきまでまったく動かなかった手が嘘のように軽やかに私の意思を汲みぶんと風をきる。

 

 「ばかぁ!!」

 

 散々私を動揺させてくれた少年の頬を私は力の限りひっぱたいた。



 「ねぇねぇ。あの二人うまくいったかな?」

 

 「・・・さぁ?でも、まぁ、うまくいきそうだろ」

 

 「アキちゃん自覚まであと一息って感じだったもんね!」

 

 「認めたら認めたで全力で否定しそうだけどな」

 

 なにせ天邪鬼だからなあいつは。

 そんなはやて君の言葉に椎ちゃんも頷く。

 

 「でも最終的には幼馴染くんが押し切りそうだよね」

 

 「だな」

 

 親友二人が勝手にそんなことを言っている頃。噂の本人は・・・・・。



 「違うったら違う!!」

 

 好きだと自覚した相手に全力ビンタを浴びせ、そんな捨てセリフを残して保健室を飛び出していた。

 ユータのことを考えるとドキドキする。

 側にいるとどうしようもなく安心する。

 好きだと自覚した途端自分が相当昔から彼のことが好きだったのだとわかり本気でうろたえた。

 

 「う、うぁ・・・・」

 

 ずっとずっと本当についさっきまでこの感情は幼馴染に向けるものだと思っていた。

 

 「思い込みって怖い・・・・」

 

 全力で逃げて、空き教室に入り込んだ私はそのまま扉を背にずるずると崩れ落ちた。

 本当にどうしてこの気持ちを自覚せずにいられたんだろう。

 今となってはそっちの方が不思議でならない。

 悶々としたものを感じる。真っ赤な顔で膝に顔を埋める私のスカートのポケットがブルブル震える。

 

 「?」

 

 ポケットに手を突っ込むと携帯を出す。その液晶に出ている名前に目をやり私は思わず「げっ」と呻いてしまう。

 

 「ゆ、ユータ・・・・」

  

 ブルブルとまるで相手の怒りを現しているかの如く携帯は震え続ける。出たくない。出たくないがこのまま無視したあとの方が怖い。

 

 「・・・もしもし」

 

 恐る恐る通話ボタンを押して電話に出た私の耳を和やかなユータの声が撫でる。

 

 「アキ?」

 

 だが、その和やかな声からどうしようもない怒りを感じるのは私の気のせいだろうか?

 

 「晴れて両思いになった恋人にビンタ食らわせて逃げるなんていい度胸しているね」

 

 ツッコミどころ満載な第一声だったけど電話から伝わってくる威圧感に負けて私は一言も発することができない。

 蛇に睨まれた蛙をまさか声だけで体験する破目になろうとは思わなかったわ。

 

 「今、どこ?」

 

 表情が見えない分声の不機嫌さがダイレクトに伝わってくるのが怖い。

 

 「い、言わない」

 

 ずんと冷気が増したのが電話越しでもはっきりと分かった。

 

 「・・・・・・・・アキ?」


 閻魔大王が目覚めた。

 心臓に氷でも突き刺されたような気分になる。だけどここで負けてはいられない。

 せめて、私がもう少し平常心になれるまでは離れていたい。

 ここでユータに見つかったらそんな些細な願いなんて叶わないに決まっている。


 「もう一度言うよ。いま、どこに、いるの?」


 一言一言をわざわざ区切って言う辺りに彼の苛立ちを感じる。


 「絶対に、言わない!」


 私の目はもう、涙目だった。

 なんでどうして・・・・好きな男の子からの電話をこんな怖い思いで聴いているんだ!!


 「ふ~~~~ん」


 電話の向こうで相手は少し不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 声色がガラリと変わった。


 「絶対に見つける」


 そういうなり電話が切られる。つーつーという音にどうしようもない恐怖が沸き起こってくる。


 「こっちの・・・・・・・!」


 心情ぐらい読み取って気をきかせろ!!

 こうなったら意地だ。なにがなんでも逃げ切る。絶対にユータに捕まったりなんかするか!!

 乱暴にポケットに携帯を突っ込むと私は教室を飛び出した。

 鬼ごっこだ。

 小さな頃いつもユータと遊んでいたお気に入りの遊び。

 でも、今度の鬼ごっこはあの頃とは違う。

 鬼は私を捕まえたら二度と離してくれない。

 鬼に捕まったら嫌でも私は面と向かって口に出さないといけなくなる。


 「好き」


 その言葉を彼に。


 そして鬼ごっこの結果は―。


 「捕まえた!!」


鬼の嬉しそうな声が校舎に響いて力強い腕が私を抱きしめた。









                          












 おまけ


 あの日から2年。

 私の周りも色々と変わった。

 例えば

 高校を卒業して大学に入った。

 一人暮らしを始めた。

 そして

 「アキ」

 幼馴染から恋人になった少年の私の呼び方から「姉」がとれた。


 あの日から2年。

 僕の周りも色々と変わった。

 高校三年生になった。

 身長が百八十を越えた。

 そして

 「ユータ」

 一人暮らしを始めた幼馴染の彼女から部屋の鍵をもらえた。


 僕の好きな人は人が良くて意地っ張りで天邪鬼。

 だから僕は素直じゃない恋人の分まで「好きだ」と言葉で行動で伝える。

 だけど・・・・・・。

 「・・・・・・・・・・・・すき」

 俯いて絶対に僕の顔を見ないでそんなことを言う恋人の一言の威力には絶対に勝てないんだよなぁ・・・・。


 私の好きな人は甘え上手でたまに腹黒くでも最終的に私に甘い。

 彼の過剰な言葉とスキンシップのせいで私は全然素直になれない。

 だから・・・・・・・・。

 絶対に顔を見ないでその背中に額をくっつけながら小さな声で

 「・・・・・・・・・・・・すき」

 って言うのが精一杯。本当はもっと言ってあげたいのに。

 結局私は愛情表現という点では絶対に恋人に勝てないのよね・・・。

 





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