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旦那様のお姉さんが来られました!?

雪も完全に解け、旦那様は街におりて行った。


この家から街までは片道2日ほどで、帰りは4日後だ。


街に降りる前に、旦那様は私を1人で残すのが心配なのか、ちょくちょく私を抱きしめに来ては、部屋に戻って行くという不思議な行動をしていた。


「いい?森は危険だから1人で入らないで。後、人が来ることは滅多にないけど、来ても開けたら駄目だよ」

「大丈夫ですって。ちゃんと旦那様の帰りを待ってますから。私ってそんなにおっちょこちょいじゃないですよ」

「・・・それでも心配なんだ」


十分すぎるほど食事の作り置きをした旦那様は何度も私の方を振り返りながら、山をおりていった。


さて、そろそろ旦那様が帰ってきたら後のことを考えないといけない。


旦那様からもらった毛糸でコースターを編みながら、結婚について考えていた。


今、私は2つの分岐点に立っている。


旦那様に迷惑をかけないのは国に保護してもらうこと。


でも、その場合は顔も知らない誰かと結婚することになる。


良い人ならいいが、こればっかりは会ってみないとわからない。


もう一つは旦那様の言葉に甘えて、旦那様と結婚すること。


けれど、旦那様に好きな人ができた時、彼はこの親切を一生後悔することになるに違いない。


できれば、どうにかして1人で生きていくことが良いのだが、それも難しいとなると八方塞がりである。


うんうんと悩んでいると、いきなり家のドアがバンっと音を立てて開かれた。


「ヌイ!お姉様が会いにきたわよー!・・・あら、どなた?」


ゴージャスな女性は私を見た瞬間、紫の瞳をすっと冷たくした。


まずい、不審者と思われてる。


「あの、私、フミと言います!迷い人というものになりまして、だん・・・ヌイさんに拾っていただいたんです」

「ふぅん?あなた、いつ出て行くの?」

「・・・ヌイさんが街から戻ってきたら、すぐにでも出て行きます」


旦那様のお姉さんは、信用してないのか怪訝そうな顔で私を頭からつま先までじろりと眺めた。


「まあまあ、お嬢さんも怖がってるだろ。ティナ、落ち着いて。僕がお茶を淹れよう」

「そうだぞ。とりあえず、2人とも座ったらどうだ」


お姉様のあとから、2人の男が入ってくる。


旦那様よりは小さいが、多分背は高い方だろう。


彼らはお姉様を座らせて、ありがたいことに私にもお茶を淹れてくれる。


「あなた、弟のことはどこまで知っているの?」

「薬師で街に薬を売りに行っていることは聞いてます」

「それだけ?あなた、弟に信用されてないのね」


棘を隠さない言葉がぐさぐさと心臓にささる。


やっぱりそうですよねと口を出すのも憚られるほどの空気の重さの中、お姉さんは気を落ち着けようとしたのか深くため息を吐いて話し出した。


「あの子は自分から言わないだろうから、教えてあげる。弟はね、迷い人に騙されて何もかも失ったのよ」


***


その迷い子は、私より4年前に来た人なのだそうだ。


その頃、街で暮らしていたヌイさんと知り合い、結婚の話も出ていた。


その子にはすでに夫が2人いて、ゆくゆくは4人で暮らそうと、ヌイさんのお金で大きな一軒家を建てた。


その後も何かとヌイさんにお金をせびっていたらしい。


あまりお金を使わないヌイさんは好きな女性のために、頼まれた時には快くお金を渡していた。


けれど、その迷い人と夫達はどんどん強欲となり、ついにはヌイさんの財産をすべて奪うためにある嘘をついた。


ある日、薬を調合していたヌイさんのもとに騎士達がやってきて、ヌイさんを連行した。


罪状は「ある女性に付き纏い、強姦した」ことだった。


当然、ヌイさんには心当たりは全くなく、何かの間違いですぐに釈放されると思っていた。


けれど、騎士達に連れて行かれた先には、泣いている迷い人とこちらを睨んでいる夫達がいた。


迷い人はこの人に無理やり犯されたと泣き叫んだ。


ヌイさんは彼女と口づけどころかまだ、手を繋いだこともなかったのに。


ヌイさんは違うと否定したが、誰も彼を信じなかった。


ヌイさんは、すべての財産を迷い人に奪われた後、頬に罪人の証である焼印を入れられた。


そして、重い罰を犯した人間が収容される所で3年を過ごすことになった。


私は何も言えずに目を見開くことしかできなかった。


旦那様がこんな山奥で暮らしている理由も、魘されていた理由も、マスクとフードで顔を隠す理由も全部わかってしまった。


イケメンすぎるから隠してるのか、なんて馬鹿なことなんて思うんじゃなかった。


私がいることでどれだけ旦那様が辛いことを思い出すことになったのか、考えるだけで胸が締め付けられるようだった。


「・・・あ、あの、私すぐに出て行きます。最後にヌイさんに挨拶だけしてもいいですか?」

「いいえ、必要ないわ。あなたは私が排除するもの」

「え?・・・あ、ぁれ?」


お姉さんのにっこりと微笑んだ顔がぐにゃりと歪む。


お茶に何か入ってたのかと気づいた時には意識が暗闇に落ちていった。


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― 新着の感想 ―
初めまして! めちゃめちゃ面白くて続きが気になり20時になると、お!更新されてるかも!って毎日見に来てるくらい楽しみにしてます! いい所で終わるので読み終わるといつも続きが気になる〜!!早く明日になれ…
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