表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

夜、暇だからこそ

作者: P4rn0s
掲載日:2025/12/31

夜は嫌いじゃない。

ただ、空を見上げるときだけ、少しだけ意地の悪い気持ちになる。


星座って、だいぶ無理がある。

あんなに離れ離れの光を、勝手に線で結んで、しかもそれに名前をつけて、物語まで与える。

どういう想像力をしていたら、あれを「人」だとか「獣」だとか「道具」だとか思えるんだろう。

どう見ても点だ。

点があるだけだ。


ベランダの手すりに肘を乗せて、夜風に首元を冷やしながら、スマホの星図アプリを開く。

ここが肩で、ここが腕で、ここが剣。

指でなぞられる線はやけに自信満々で、まるで最初からそういう形だったかのように表示される。

でも、線を消した瞬間、そこに残るのは何の意味も持たない光の粒だけだ。


「全然そうは見えない」


声に出して言ってみると、夜はそれを否定もしない。

ただ静かに、星を瞬かせている。


昔の人は、暇だったのかな、とも思う。

夜が長くて、灯りが少なくて、今よりずっと暗かった世界で、空を見上げるしかなかったのかもしれない。

暗闇に耐えるために、意味を作った。

何もない場所に、線を引いた。

そうしないと、夜がただの空白になってしまうから。


でも、そう考えると少しだけ納得がいく。

星座が無理やりなのは、想像力が暴走していたからじゃなくて、必要だったからなんだ。

点のままでは、あまりにも心許なかった。

バラバラの光のままでは、自分たちの気持ちも散らばってしまいそうだった。


私は今でも、星を見上げると線を消してしまう。

勝手に結ばれた形を疑って、意味を疑って、物語を疑ってしまう。

それでも、点だけになった夜空を前にすると、少しだけ不安になる。


何も語らない光は、きれいだけど、冷たい。

あれは誰の形でもない。

誰の物語でもない。

ただ、そこにあるだけだ。


星座を信じられない自分と、星座がなかったら少し寂しいと思ってしまう自分が、夜の中で並んで立っている。

どちらも正しくて、どちらも中途半端だ。


きっと、あの線は嘘だ。

でも、嘘じゃないと夜を越えられなかった人が、確かにいた。

そう思うと、星座が全然そうは見えなくても、まあいいか、と思える。


空は今日も、何も答えない。

それでも人は、点と点のあいだに、どうしても何かを描いてしまう。

それが人間なんだろう、と、私は少しだけ諦めたように夜を見上げ続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ