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EP.69 再会と別れ(エピローグ④)

妄想主題歌(右クリック→移動 または、コピペでお願いします)

https://youtu.be/OahpETEBXxc


 聖地サンクホフトでハーディー達が〈呪われたガリオン〉を倒してから、2週間ほど経過し、ロコが、聖地サンクホフトに帰還した。


 外壁はあまり破壊されていなかったため、ロコは外壁内に入るまで聖地サンクホフトがどれほど様変わりしているのか、はっきりとはわからなかった。


 パァーンッ‼


 ロコが第3門を通り抜けると、両サイドから魔法の花火がクラッカーのように弾けた。


 ハーディー、ジゼル、ミロ、マイルズ、ソボル、ハンナ、スティアン、他数名の見習い時代の仲間達が、花火の幻影を生み出す星屑魔法『エトワルーチェ』の効果が付与された『星花のロッド』を一同に使ったのだ。この花火には熱はなく、ただの賑やかしだ。


「おぉっ⁉ ビックリした……」


 ロコは戸惑いが大きく、微妙なリアクションになってしまった。


「もぉ~、心配してたんだぞ。コノヤロー‼ よく帰って来たっ‼」


 あの時、救われたジゼルが、若干涙目になりながらロコに接近し、軽くハグをして、手を「ギュッ」と握り、涙を拭って喜んだ。


 ハーディーはそれを見て、少し……いや、かなり不快そうな表情を見せた。


 そして、ジゼルの腕を引っ張って、後ろに後退させた。


「ロコぉ~っ! 久しぶりだなぁ! 俺ともハグしようぜ‼」


 ハーディーは勢いで「ほら、お前らも来いよっ!」と、他の者にもハグを勧めた。


「おいおいおい……何だ何だ……っ⁉ お前ら、ノリが随分変わったなぁ……」


「まぁ、これだけの事があれば、みんなちょっとは変わるってもんだぜ……いや、それにしても……大変だったな! お前も……」


 ハーディーはロコの火傷を見て、心からそう思った。


 改めて門の内側に入ると、ロコが見知っていた世界とまるで違っていた。


 まだ所々に破壊の跡が見受けられたが、宿舎の多くが破壊されたため、急造で建築が進み、新築の建物が多く立ち並んでいた。


「……おわ~っ……マジで変わったなぁ……」


 ロコは目を丸くして「パチパチ」と瞬きを繰り返した。


「あ、そうだ……ジゼル。フェレイラ王国のドワーフ達が、めちゃくちゃお前に感謝しててな……。お礼の贈り物があるらしいぜ。ただ、直接受け取りに行かなきゃなんねぇみてぇだけど……。式典が終わったら、考えてくれ」


「えぇっ⁉ 感謝してくれるのは嬉しいけど、何で直接受け取りに行かなきゃなんねーんだよ⁉ ……あ、あんな辺境の地に……」


 以前、フェレイラ王国に遠征した時に大吹雪に見舞われた事が、ジゼルは若干トラウマになっていた。


「い、いや、お前にしか持ち歩けないような、とてつもなく〈強大な武器〉らしくてなぁ……それに、今の時期ならあんなに吹雪かないぜ……でも、イヤなら断るか?」


 ジゼルの耳が「ピクッ」と動いた。〈強大な武器〉に目がないのだ。


「ほほぅ? このあた……あっ……オ、オレに、〈最強の武器〉を渡したい……と?」


 一瞬、ロコはジゼルが言いかけた事に、「あた?」と思った。


「いや、最強とは言ってな――」


「よぉっしゃーっ‼ 受け取りに、行ってやろうじゃないの⁉」


 バンッ‼


 ジゼルは勝手に〈最強〉と解釈して、えらくテンションが上がっていた。


 ハーディーはその様子を見て、ちょっと引いていた。


    *    *    *


 この後、ある程度落ち着いたタイミングで、ハーディー達はロコに〈これまでの経緯〉を話した。戦いの後、この約2週間は聖地サンクホフトの復興と防衛に尽力していた。


 ガリオンとの戦闘については濁し、機を見て改めて伝えるつもりだ。一先ずは発表通り、魔物との戦いで亡くなった事にした。当面はそう伝えておかないと〈緘口令〉を破る事になり、ハーディー達も処分を受ける可能性があるため、仕方がなかった。


「……ま、まさか……、ガ、ガリオンさんに、ロジェリオさん……そ、それに……、だ、団長まで……な、亡くなっていた……なんて……」


 彼らの死を知らなかったロコは驚き、戸惑っていた。特に勇隼隊として長年世話になったガリオンとロジェリオの死には、ショックを受けて当然だった。


 各地から帰還した聖騎士達も、似たような思いだった。何しろ、今回〈起きた事〉と〈彼らの死〉は、聖地外では〈秘匿〉されていたからだ。


    ◇    ◇    ◇


 ――それから、約1週間後。


 破壊の跡が残る中、大聖堂にてゲオルクとガリオンを中心とした戦死者の盛大な合同葬儀が執り行われる。特に、団長のゲオルクと勇隼隊・隊長のガリオンは特別扱いで、盛大なセレモニーが執り行われる事となった。


 副団長のハビエル、聖雀隊・隊長のフラヴィア、サビオが主催側として列席している。


 イグナーツは左目を失って黒い眼帯姿となり、さらに、脊髄の損傷のために浮揚して移動する『魔法の椅子』を利用して移動する事となった。歩行はできないが、杖を突けば何とか立ち上がる事はできる状態ではあった。


 ハーディー、グライフ、ジゼル、ミロ、マイルズ、ロコ、ソボル、ハンナ、スティアン、ヘイン、シリー、キーラ達が葬儀に参列する。


 朝までは雨が降っていたが、すっかり晴れて空には虹が出ていた。


 聖騎士達は、正式な『聖騎士の装束』で身を包み、儀仗隊が並んで敬礼をした。


 大聖堂では、大司教ソフォスが儀式を取り仕切り、つつがなく進行していった。


 始めに約2分間の黙祷が捧げられ、聖歌隊や音楽隊の演奏が荘厳に響き渡った。


 既にロジェリオ、パッセロ、リツァル他、副隊長以下の戦死者の棺は運び込まれており、団長のゲオルクとガリオンの棺が運び込まれる。


 ハーディー達参列者が静かに見守る中、聖騎士達が〈聖騎士団の旗で覆われて供花で飾られたゲオルクとガリオンの棺〉を厳粛な面持ちで運び、大聖堂の身廊をゆっくりと進み、祭壇に置いた。


 しかし、これはあくまで〈葬儀用の棺〉であり、実際にはその棺には2人の遺体は納められておらず、魔法で処理が施され、〈ヴァルハラ宮殿〉に安置されている。


「聖騎士団・団長・ゲオルク、勇隼隊・隊長・ガリオン、副隊長・ロジェリオ、聖雀隊・副隊長・パッセロ、勇隼隊・零番隊・副隊長・リツァル……――」


 大司教ソフォスにより、次々と戦死者の名が告げられ、彼ら1人1人の生涯の業績を称えた。大聖堂を静寂が包み、すすり泣きが聴こえ始めた。


「――彼らは、その生涯をエリシウム大陸全域の平和と安寧のために捧げ、聖地サンクホフトを堅く護り続けた……。その不屈の精神と偉大な業績を、ここに深く称え、記憶に刻もうではないか……‼」


 続いて、ソフォスは両手で〈司教杖〉を持ち〈天空神アフラ・ルナ〉に祈りを捧げる。


「……〈死〉は、〈終焉〉ではない……彼らの魂は、神の御手に導かれ、神の下で永遠に生き続けるのじゃ……。彼らの足跡を忘れる事なく、我らは現世で使命を果たし、共に歩み続けましょうぞ……」


 ソフォスは、司教杖を高く掲げた。


「おぉ、神よ‼ アフラ・ルナよ‼ 彼らの魂を、月の光で安らかにお迎え下さい‼ 彼らが愛し、護ったこの地と人々を、永遠に見守って頂けますように……‼ 我らもまた、彼らの魂と共に、神の導きの下で共に歩み続けられますように……‼」


 静寂が大聖堂を包み、ハーディー達参列者は目を閉じて祈りを捧げた。


 大司教ソフォスは内心で密かに「少し、大袈裟じゃったかの……?」などと考えつつ、白いカーネーションを順に彼らの棺に捧げた。


 ソフォスに続き、次々と参列者も花を捧げる。


 御香が焚かれ、白い煙が天井へと立ち昇り、大聖堂は厳かな空気に包まれた。


 再び大司教ソフォスが棺の前に立ち、司教杖を掲げて最後の祈りを捧げる。


「彼らの魂に、天空神アフラ・ルナの光が永遠に輝かん事を‼」


 大聖堂の荘厳な扉がゆっくりと開かれ、聖騎士達によって星級が低い戦死者の棺から順に大聖堂の外へと運び出され、最後に団長のゲオルクの棺が運び出された。


 大聖堂の塔から鐘の音が響き渡り、半旗で掲げられた聖騎士団の旗が風に揺れている。そして、聖騎士がラッパを吹奏し、澄んだ音色が響き渡った。


 ドォン‼ ドォン‼ ドォン‼ ドォン‼ ドォン‼ ドォン‼ ドォン‼


 天鴞隊の聖騎士によって聖地サンクホフトの城壁の上から弔砲魔法『クアブラン・エレフュール』が放たれ、聖地を護り抜いた英雄への弔いとして、7度、轟音が鳴り響いた。


 空は真っ青に晴れ、穏やかな風が吹き、ハーディー達参列者に、彼らの魂が天に昇って行くように感じさせた。


 最後の別れの時が来た。団長のゲオルクの棺は静かに地下の霊廟へと運ばれ、石造りの墓穴に降ろされていく。ガリオンや他の聖騎士達の棺は、大聖堂に隣接した墓地に運ばれる。ハーディー達参列者は祈りを捧げ、彼らの魂の安寧を願った。


 そして、最後に大司教ソフォスが祈りを捧げた。


「……神と共に……彼らの魂が、安らかに眠らん事を……」


 ハーディー、グライフ、ジゼル、ミロ、マイルズ、ロコ、ソボル、ハンナ、スティアン、ヘイン、シリー……そして、キーラ……皆、一様に涙を流した。


 普段はクールなグライフも、脳裏に〈ミンニ村でガリオンと出会った頃〉や〈初めて聖地サンクホフトに連れて来られた時〉の心象風景が浮かび、〈ガリオンがディアブロを打ち破った瞬間〉が強烈に呼び起こされ、珍しく号泣していた。

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次回:2025年05月11日 20時20分

EP.70 就任表明(エピローグ⑤)

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