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EP.65-1 決着①

妄想主題歌(右クリック→移動 または、コピペでお願いします)

https://youtu.be/OahpETEBXxc


「ガリオンッ! いやぁあぁぁぁっ‼」


 キーラがガリオンに向かって走り出そうとしたが、零番隊の3人が必死に抑えている。


 ドシャアァッ‼ ガリオンは地上に墜落し、倒れた。


 左腕と両脚が切断され、左脇腹からははらわたが飛び出し、彼の周囲に血の海が拡がっていく。『魔霊鎧装』も砕け散り、通常の魔霊気となった。


「……グクッ……こ、この程度の傷……‼」


 上級回復魔法『エレメ・ピセラシオン』が発動し、明るい蒼碧色の光に包まれ、飛び出していたはらわたが、徐々に腹の中に引っ込み始め、斬撃の傷が回復していく。


 さらに切断された腕と両足を「ズズッ……ズズズッ」と操作魔法で引き寄せようとしていたが、ガリオンの視界は霞み、意識が朦朧として、魔力操作がままならない状況だ。


 ザッ……


 そこに現れたのは、グライフだった。後ろにはリツァルも付いて来ている。


 グライフの手には、リツァルの『聖白の剣』が握られていた。


「うぐっ! クッ! き、貴様もしぶといじゃないか……や、やはり、回復術師から先に殺すべきだった……‼」


 両足を失い、片腕で地べたに這いつくばっているガリオンを見下ろし、グライフは切ない表情を見せ、涙が頬を伝った。


「ガリオンさん……これで終わりにしよう……」


 ズドッ‼ グライフは、渾身の力を籠めて『聖白の剣』をガリオンの心臓の位置に突き刺し「グググッ」と押し込んだ。それを見たキーラが泣き叫んだ。


「いやぁっ! やめてぇっ‼ ガリオン!」


 キーラは零番隊の3人に抑えられているため、身動きが取れない。

 涙を流しながらその場に崩れ落ち、両膝をついてへたり込み、泥を握り締めた。


「……お、お願いだから……やめて下さい……‼」


 キーラは悲しみと共に、沸々とグライフに対する怒りが込み上げていた。

 その恨めしさは漆黒の呪力を持ち始め、彼女の肉体からわずかに黒い瘴気が発生したように見えた。


「……グフッ……ぐぅうぅぅぅ……‼」


 ガリオンの口から血が漏れ出す。


 しかし、グライフの剣は、それ以上押し込めなくなった。


 その時、「パチパチッ!」とガリオンの頭部に電撃が迸った。そして、剣が突き刺さった箇所から、炎が燃えるように魔霊気が立ち昇った。


「な……、何だ……と⁉」


 ドゥッ‼ 魔霊気が強力な波動を発し、グライフとリツァルは弾き飛ばされた。突き刺していた剣も抜けてしまった。


 ヒュンッ! ザシュッ‼ グサッ!


「うぐっ⁉」 


 突然、二本一対の『鳳翼双剣』が飛んで来て、1本は背後からリツァルの首を斬りつけ、もう1本はグライフの背中に突き刺さった。


 ブシュッ! ブシュウゥウゥゥゥッ‼


 リツァルの首から鮮血が飛び散り、彼は前のめりに倒れた。


「リ、リツァルさんっ⁉」


 ガリオンの操作魔法だった。グライフに突き刺さった『鳳翼双剣』の1本が、意思を持つかのように振動して抜け、「ブシュッ!」と、鮮血が舞った。


 ヒュンヒュンッ! 2本の『鳳翼双剣』が飛び回ってグライフの首を狙ったが、グライフは瞬時に反応し、身を翻して躱した。最初に不意打ちで当てる事はできたが、操作魔法で飛ばす程度では攻撃に重さがなく、精度が低い。


 グライフの手には、リツァルの『聖白の剣』が握られている。


「クッ……‼ 強化魔法か⁉ まさか心臓自体をあれほど強化できるとは……‼」


「クックック……強化を集中しさえすれば……この程度は造作もない事よ……」


 ガリオンの肉体が浮かび上がり、飛び出していたはらわたが引っ込み、脇腹の傷が閉じ始めた。両脚が切断され、『魔神器:有翼のアンクレット』が切り離された状況だが、空中への浮揚は、彼自身の魔力によるものだった。


 通常、これほどの重傷ともなれば、鎮痛魔法『レニーレ・ドロール』や鎮静魔法『ルグナ・ロア』を使って静かに眠りにつくものだが、〈痛みや疲れ〉を感じ難い今のガリオンは、逆に覚醒魔法『リスヴェリオ』の覚醒効果を発動し、魔力操作を高めていた。


 本来であれば、痛みが増幅して意識を失うところだが、痛みも疲れも感じ難い利点を最大限に活かした形だ。


 ゴォオォオォォォ……


 ガリオンの肉体から、まるで瘴気のような禍々しい魔霊気が立ち昇り、切断された左腕と両脚が引き寄せられてくっ付き、脇腹の傷も閉じ始めている。


 そして、再び両手で『鳳翼双剣』が握られた。


 グライフは蒼褪め「な……⁉ 何と言う事だ……」と驚愕し、恐怖さえ覚え始めた。


 ガクンッ‼


「うぐっ……‼ ゲホッ!」


 突然、グライフは脱力して片膝をつき、口から血飛沫を吐いた。


「ク……クソ……ッ‼ 『レベル・ブースト2』の反動か……‼」


「我が魔力は……この程度では尽きん……確か、まだ回復術師が残っていたな……」




 ――実際は、ガリオンの傷は完全に回復したわけではなく、神業と呼べるほど巧みに魔法を使い、彼は肉体を繋ぎ止めていた。


 回復魔法の効きが悪いため、操作魔法によって無理矢理、はらわたを引っ込め、拘束魔法『コンストレイン』で傷を閉じた状態だ。傷口が完全に癒着したわけではなく、無理矢理〈縫合した状態〉に近く、応急処置をしただけだった。完全に神経接続できたわけではなく、回復魔法を使い続けて少しずつ接合している状況だ。


 しかし無理矢理、傷口を閉じただけでも、ある程度時間をかけて回復魔法を発動し続ければ、徐々に傷口が癒着し、完全回復するはずである。


 一度切断された左腕の指先に麻痺が残っているが、操作魔法によって無理矢理握り込ませ、『鳳翼双剣』は、拘束魔法で掌に拘束している。


 自分自身の肉体なので、神経が遮断されても、操作魔法でコントロールし易い。


 逆に言えば、満身創痍である事に変わりはなく、自分自身を〈マリオネット〉のように操作魔法で無理矢理動かしていた。




 マイルズが所持していた回復薬ポーションによって、ハーディーは目覚めたが、意識は朦朧としたままで上半身を起こす事すらできず、状況把握も困難な状態だった。


 零番隊の3人のうちの1人が倒れたリツァルの下に駆け付けたが、首を横に振った。


 残り2人でキーラを抑えている状況だ。そして、ガリオンがキーラを見た。


「……残る厄介な回復術師は……キーラだけか……‼」


 ブゥンッ‼


 ガリオンは『有翼のアンクレット』を起動させて上昇し、キーラに狙いを定めた。


「……ガリオン……どうして……?」


 キーラの目から、とめどなく涙が溢れる。


 彼女を抑えていた零番隊の2人にも緊張が走った。


 その時、ジゼルが「ヨロヨロッ」と身体をふらつかせながらキーラの前に出た。


「キーラさんを後ろに下げて……‼」


 バチバチッ……ブンッ! 


 そして、拾い上げた『堕天使の杖』を電磁魔法『エレクトロ』の反発力を使ってガリオンに投げつけた。魔界の武器である『堕天使の杖』は人間には持ち上げる事もできないはずだったが、ジゼルは電磁魔法で掴む事ができたのだ。


 ガキィンッ!


 ガリオンはそれを『鳳翼双剣』で防ぎ、魔力を流し込んでジゼルの電磁魔法を無力化し、操作魔法で空中に留めた。


「無駄な事を……‼ 敵に塩を送るようなものだな……愚かな……‼」


 ガリオンは『鳳翼双剣』を両方とも手放して浮かび上がらせ、自身の周囲に〈空中拘束〉し、『堕天使の杖』を両手持ちして、ジゼルとキーラに向けた。


 ガリオンは引き続き切断された部位の回復と神経接続を続けていた。


「丁度良い……。なるべく今は接近戦をしたくない状況でな……。魔法でトドメを刺してやる……‼」


 ガリオンが魔法を発動する前から、何故か『堕天使の杖』は既に「パチパチッ」と帯電していた。その時、ジゼルの作戦を察したグライフが、片膝をつきながらも閃光魔法『ヴァロフリッツ』を放った。


 ヴォッ‼


 ――油断。ハーディーに斬られた後に魔力操作が乱れた事で、ガリオンは闇の帳魔法を自身の瞳にかける事を忘れていた。ガリオンは目が眩み、視界が遮られた。


「ヌゥッ⁉」


 バチバチバチッ……ブンッ‼


 その瞬間に、ジゼルが背中側に小さく圧縮して隠し持っていた『悪鬼の戦斧』を、先刻と同じように電磁魔法『エレクトロ』の反発力を使って、ガリオンからわざと外して斜め方向に投げ飛ばした。仮にガリオンの視界が戻っても、正面には見えない。


 ジゼルは、電磁魔法『エレクトロ』で『堕天使の杖』にマイナスの磁力を与え、『悪鬼の戦斧』にはプラスの磁力を与えていた。『堕天使の杖』に誘導され、『悪鬼の戦斧』がガリオンに向かって超高速で〈弧を描きながら〉飛んで行く。


 投げ飛ばされた『悪鬼の戦斧』は、ガリオンに接近するほど磁力が強まって急加速し、風を切る音が鳴り響いた。


 キュインッ‼


 超高速誘導飛翔体ミサイルと成った『悪鬼の戦斧』は、回避不可能な攻撃だ。


 そもそもガリオンは、自分が手にしている『堕天使の杖』に誘導攻撃されている事を認識していない。そのため、杖を投げ捨てるという選択肢がなかった。


 目が眩んだガリオンは、感知魔法と音を頼りに、『堕天使の杖』で防御行動に出た。


 ジゼルが「レドーモ‼」と唱えると、「ボゥンッ‼」と、超重量級の武器である『悪鬼の戦斧』が圧縮解除され、超高速でガリオンに迫る。


 ガギィイィン! ズドォッ‼


 ジゼルが投げ飛ばした『悪鬼の戦斧』は超高速で『堕天使の杖』を折り、そのままガリオンの腹部に直撃して、数cmめり込んだ。


 ガリオンの強力な魔霊気と強化魔法によって、胴体の切断には至らなかったが、応急処置で閉じていた腹部の傷が再び開き、大出血しながらはらわたが露出している。


 ようやく目の眩みから、ガリオンの視界が完全に戻った。


「グフッ……‼ おのれぇ……小娘がァッ‼」


 バチバチバチバチッ! バリッ‼


 折れて半分になった『堕天使の杖』に電光が迸り、ガリオンはジゼルに狙いを定め、雷撃魔法『ブリクセム』を放つ構えを見せた。


 コンマ数秒の瞬間――ジゼルの危機に、ハーディーが彼女を助けようと力を振り絞って駆け出そうとした。しかし、『レベル・ブースト』の反動ダメージで思うように動けず、その場で「ドシャッ!」と、崩れるように倒れ込んだ。ハーディーは声が出せず、心の中で「逃げろ! ジゼル‼」と叫んだ。マイルズは恐れおののき、動けなかった。


 グライフも駆け出そうとしたが、肉体が言う事を聞かない。ジゼルの肉体も限界で、素早く身体を動かす事はできなかった。彼女は死を覚悟した。


 ガリオンが持つ『堕天使の杖』が、強烈な光を放つ――

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次回:2025年05月10日 22時20分

EP.65-2 決着②


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