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EP.61 決戦

妄想主題歌(右クリック→移動 または、コピペでお願いします)

https://youtu.be/OahpETEBXxc


 ハーディー、ジゼル、シリーの3人でガリオンを取り囲んでいる。


 ガリオンは常時回復魔法を発動していたが、グライフから受けた傷が回復しきれていなかった。『レベル・ブースト』の反動で、回復魔法の効果が落ちているのだ。


「……たかだか貴様ら程度……たった3人で、このガリオンに勝てるつもりか?」


 ガリオンがゆっくりと回り込むように歩き、3人を牽制する。


 3人の中で最もレベルが高いのは、レベル314のシリーだ。


 ハーディーとジゼルは、本人達が認識しているより幾らか〈魔力レベル〉が上がり、ハーディーのレベルは285以上、ジゼルのレベルは270以上に上昇していた。


 しかし、まだまだガリオンと比較したら圧倒的に弱い。


 ガリオンはゆっくりと歩く事で、『魔神器:有翼のアンクレット』に魔力を送り込み、飛翔エネルギーをチャージしていた。これが本来の使い方である。何もせずに自由に飛び回り続けられていた今までがおかしかったのだ。


 シリーが『聖白の剣』をガリオンに向けた。


「ガリオンさん! 目を覚まして下さいませんか⁉」


「あぁ……、シリーか? お前の事は知っている……〈あの時〉もいたな?」


 今のガリオンは2つの人格と記憶が混じっている。最近の記憶もあるし、名前を知っていながら、7年前のミンニ村の記憶と照らし合わせている状況だった。


「……私は貴方を止め、呪いを解呪してみせます‼」


「シリーさん! 大賢者ソフォス様ですら解呪できなかったんだ! もう話しても無駄だ……‼ ……お、俺だって、元のガリオンさんに戻ってほしい……でも、もう‼」


 ハーディーはロジェリオが殺された瞬間を思い出し、一瞬、眉間に皺を寄せて泣きそうな表情を見せた後、覚悟を決めた表情で「キッ!」とガリオンを睨みつけた。


「ふん……推定レベル320程度……その程度で、何ができると言うのだ?」


 ガリオンが挑発的に言った。シリーが言い返す。


「……ガリオンさん、相手のレベルを推し量る力がありながら、ご自身の状況はわかっていないようですね……」


「……何?」


 ガリオンは気付いていなかった。これまでの戦闘のダメージと『レベル・ブースト』の反動で、一時的に2割程度のレベルダウンが起きていた事を。


「それに、グライフさんがつけた傷が、まだ回復し切っていないようですが……?」


「……だからどうした⁉」


 ブゥンッ!


 ガリオンは『魔神器:有翼のアンクレット』を起動させ、空高く飛び上がった。


「ガリオンさん相手に下手に飛んでは不利です! 地上で迎え撃ちます‼」


 シリーがそう叫び、ハーディーとジゼルは「ハッ!」と応じた。3人は、シリーを中心に大きく横に広がる潰れた二等辺三角形を描くような陣形を組んだ。


 ギュンッ‼


 ガリオンが中央のシリーに目掛け、上空から急降下突撃し、一気に斬りかかった。


 その瞬間、シリーはバックステップし、事前に風属性の魔法で生成して仕込んでいた空気のクッションに飛び乗り、衝撃魔法を放って一気に空高く跳躍した。


 地上で迎え撃つ気は更更なかった。


「フェール・アエラス・クシーノ‼」


 シリーはミロよりも器用に、上昇の過程で多数の空気のクッションを生成した。


 無数のシャボン玉が飛ぶように、多数の空気のクッションが浮かび上がった。


 さらに足跡魔法を応用し、味方の聖騎士のみ、光って見える状態にしている。


 ギュンッ‼


 ガリオンは地上スレスレで旋回して上昇し、高速でシリーを追撃する。


 ボンッ! ボンッ‼


 そのタイミングを見計らって、ハーディーとジゼルが、事前に生成していた空気のクッションに飛び乗り、ハーディーは衝撃魔法、ジゼルは電磁魔法の反動を利用した爆発的な跳躍で空中に飛び上がった。




 訓練された聖騎士は、掌だけでなく、足の裏からも一部の魔法を発動できる。


 特に衝撃魔法は加速向きで、ハーディーの必殺魔技『猛禽の鉤爪アルティリオ』や、グライフの魔技『魔力噴射ジェットアタック』発動時にも利用されている。




 ガリオンの上昇速度が圧倒的に速いが、上方のシリーと左右斜め下方から追うハーディーとジゼルで、ガリオンを三角形=△の中心に据える形で、空中で挟み撃ちにした。


 シリーが追って来るガリオンに対し、放射状に広がる中級火炎魔法『エルド・ヴラム』を放ち、牽制した。三角形=△フォーメーションのため、真下に火炎放射しても、ハーディーとジゼルが射線に入る事はない。


 ガリオンはブレーキをかけるように、上昇速度を落として、回避した。


 ボンッ!


 そのタイミングを狙い、ハーディーがさらに衝撃魔法を下方に放ち、加速した。


 ハーディーは衝撃魔法だけでなく、旋風魔法も使って軌道を微調整し、ガリオンに向かって波打つような軌道で突撃した。


 飛翔するガリオンに対して空中で攻撃を当てる事自体が難しいが、ハーディーは空中訓練で培った抜群の飛翔センスでガリオンに二刀流で攻撃を繰り出した。


 ハーディーの長剣『鶻影こつえい』と『鷹鸇ようせん』と、ガリオンの『鳳翼双剣』がぶつかり合う。


 ガッ! ガキィンッ‼


 自由に〈飛翔〉できるガリオンにとって、風属性の魔法を利用した〈跳躍〉に過ぎないハーディーの攻撃は勢いがなく、大した威力を感じなかった。


 ドガッ!


 剣同士がぶつかり合った直後に、ハーディーは蹴り飛ばされた。


「くっ‼ クソッ!」


 空中でハーディーは身を翻し、空気のクッションの位置を確認して着地(着空)し、再び衝撃魔法の反動で跳躍して、空気のクッション間を跳び回る。


「ほぅ⁉ こちらからは見えぬ空気のクッションを生成したか!」


 ガリオンだけが見えない多数の空気のクッションが、この〈空域〉の中心にいる彼を避けるように〈ドーナッツ状の空域〉に広がって配置された。




 ダメージが残る今のガリオンには、ゲオルク戦で見せた〈絶対防御シールド〉は発動できない。2つ以上の魔法を同時に発動する〈複合魔法〉が使えない状況だからだ。


 ガリオンは、自分にだけ見えない空気のクッションにぶつからないように、ゆっくりと飛翔し、3人の動きを警戒した。まだ『有翼のアンクレット』のエネルギーは残っていたが、今は自分自身の魔力で浮遊し、この機にエネルギーチャージをしている。




 シリー、ハーディー、ジゼル、各々が得意なやり方で空中のクッションを跳躍して飛び回り、ガリオンを取り囲むように跳び回った。


 タイミングを見計らって、3方向からガリオンに攻撃を仕掛ける算段だ。


 今度はシリーが電撃魔法『イクレア』を放って牽制し、再びハーディーがガリオンに突撃するような動きを見せた。


 バチバチバチッ!


 刹那、ジゼルは電磁魔法『エレクトロ』を発動し、空気のクッションに磁力を与え、磁力の吸着と反発を利用して、ハーディーよりも圧倒的な速度で、空気のクッション間をジグザグに跳び回り、意識がハーディーに向いたガリオンに突撃した。


「エレクトロッ!」


 バチィッ‼


 ジゼルは武器による直接攻撃ではなく、ガリオンに対して電磁魔法『エレクトロ』を放った。自身より高レベルの人間相手に発動したところで、電磁魔法は弾かれる惧れ《おそれ》があるが、ジゼルの狙いはガリオン自身ではなく、『鳳翼双剣』だ。


 ガリオンの『鳳翼双剣』にもガリオンの魔霊気が流し込まれてはいるものの、それ自体が高レベルの魔力を持つわけではない。ガリオンの左手の『鳳翼双剣』が帯電した。


 パリッ……パチパチッ!


「何だ……?」


 電磁魔法は、ジゼルの一族・エルディング家が得意とする特殊魔法だ。この技は〈奥の手〉であるため、人間に対してこういった使い方をする事は〈稀〉だった。


 以前は訓練教官だったガリオンも〈弱い電撃攻撃を受けた〉ように感じていた。


 ギュンッ! ギュン! ギュン……


 ジゼルは段階的に拡縮魔法『マススハール』を発動し、装備していた『悪鬼の戦斧』をできるだけ小さく圧縮していく。


 手斧ほどではないが、元のサイズと比較したら非常に小さく圧縮された。


 バチバチバチッ……ブンッ!


 そして、ガリオンに向けて電磁魔法の反発力を使って投げ飛ばした。


 先程ガリオンの『鳳翼双剣』に放った電磁魔法はマイナスの磁力がかけられ、『悪鬼の戦斧』にはプラスの磁力がかけられている。ガリオンに投げつけた手斧サイズの『悪鬼の戦斧』は、ガリオンに誘導されるように向かって行った。


 ジゼルの誘導飛翔体ミサイルだ。投げ飛ばされた『悪鬼の戦斧』は、ガリオンに接近するほど磁力が強まって急加速し、風を切る音が鳴り響く。


 ギュンッ! ビュウッ‼


「何ッ⁉」


「レドーモ!」


 ガリオンに直撃する直前に、ジゼルが圧縮解除魔法を発動した。


 ボゥンッ‼


 圧縮解除された『悪鬼の戦斧』は、両刃の幅が腕を広げたようなサイズの〈巨大な斧〉で、超重量級の武器だ。


 ガッギィイィイィンンッ‼


 超重量級攻撃によってガリオンの左手の『鳳翼双剣』が弾き飛ばされ、落下していく。


「何ィッ⁉ チィッ‼」


 ガリオンからしてみれば、突然、目の前に『悪鬼の戦斧』が現れたかのように錯覚するほどの変化が起き、『鳳翼双剣』によるガードが精一杯だった。


 ガリオンは、落下していく左手用の『鳳翼双剣』を追うような動きを見せた。


 その隙を、ハーディーは見逃さなかった。今度はガリオンが下だ。


「俺も聖騎士だっ‼ ブースト1ッ‼」


 ハーディーも『レベル・ブースト』を発動し、一時的にレベル340を超えた。


 飛翔において最も速度が上がるのは急降下だ。ハーディーは、衝撃魔法を最大出力で放ち、空気のクッションの反動で、ほぼ真下に向かって突撃した。


 ボボンッ‼ ビュンッ!


 ハーディーが爆発的加速で風を切って急降下突撃し、二刀流の剣を並行に構え、時間差の二連撃を繰り出した。


「猛禽の鉤爪アルティリオ‼」


 ガキィッ! ズザンッ‼


「グウゥッ⁉」


 今のガリオンは一刀流だ。彼は一撃目を弾いたが、二撃目が直撃した。ガリオンの胴体にハーディーの剣が食い込み、グライフが与えた斬撃の傷と〈X字〉に交差した。


 ドッッゴォーーンッ‼


 ガリオンはそのままの勢いで地上に墜落し、轟音が鳴り響き、砂煙が舞った。


 ガシャシャアァーンッ!


 遅れて『悪鬼の戦斧』と左手用の『鳳翼双剣』が落ちてきた。


 つまり、この攻防がほんの一瞬の間に超高速で起きたという事だ。


 2本の武器は、上空で別方向に落下し、数十m離れた場所に落ちた。


 そして、ガリオンが墜落した地点の砂煙が晴れた。


「うぐぅ……おのれ……‼」


 ガリオンは右手の『鳳翼双剣』と片膝をつき、顔を歪めている。


 ハーディーの攻撃は直撃したが、斬撃ダメージは思いのほか浅く、打撃ダメージの方が大きかった。ガリオンは瞬時に瞬間防御魔法『エスクード』を発動し、強力な魔霊気と強化魔法『フォルサ・ソーマ』で身を護っていたため、肉は斬られても骨は断たれなかったのだ。しかし、全く斬撃ダメージがなかったわけではなく、ガリオンが受けた傷からはドクドクと血が流れている。


 ガリオンは回復魔法を発動していたが、相変わらず効きが悪い状況だ。


「……はぁ……はぁ……チャ、チャンスだ……っ‼」


 ハーディーは『レベル・ブースト』の反動ダメージで少し身体が焼け、息を荒くしていたが、追撃のチャンスと見て、駆け出した。


 しかし、やはり反動ダメージが大きく、「ガクッ」と脱力して倒れた。


「うぐっ……い、今だッ! シリーさん‼ ジゼルッ‼」


 そう叫び、ハーディーは上体を起こして自身に中級回復魔法を発動し、薄緑色の光に包まれた。今は回復が必要だ。


 既にジゼルは駆け出していた。そして、落下した『悪鬼の戦斧』を素早く回収し、走りながら『悪鬼の戦斧』に再び拡縮魔法をかけて圧縮し、扱い易いサイズにした。


 いつの間にかシリーも地上に降り立ち、剣を納めて両掌をガリオンに向けていた。


 ガリオンは訝し気に「何のつもりだ?」と呟いた。


 ブンッ!


 突然『漆黒の魔縲』が現れ、ガリオンの右手首に装着された。


「何ッ⁉ 『漆黒の魔縲』か⁉ こんなもの……どこで⁉」

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次回:2025年05月10日 12時10分

EP.62-1 新技①

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