EP.56 神槍
妄想主題歌(飛べないのでコピペでお願いします)
https://youtu.be/OahpETEBXxc
バリバリバリバリバリッ‼
ドデカケラトプスは、さらに雷撃光球を発生させ始めた。
その時、ゴロゴロゴロゴロ……と、上空で轟音が鳴り響いた。
ドッゴォオォオォオォーーーーーーンッッッ‼
突如、上空から強大な雷が落ち、ドデカケラトプスの巨躯を貫いた。ドデカケラトプスの背中から腹にかけ、直径1m以上の穴が開き、黒焦げになっている。
ドデカケラトプスの背中の上に人影が見える。聖騎士団・団長のゲオルクだ。彼は『魔神器:神槍グングニル』を握り締め、ドデカケラトプスの上で片膝をついている。
「ハァ……ハァ……ハァッ……戻って早々、レベル・ブーストは老体に堪える……‼」
ゲオルクの皮膚は、レベル・ブーストの反動ダメージで焼かれたように焦げていた。
――ゲオルクが〈偽装継承の儀式〉で『神槍グングニル』を一時的に継承してヴァルハラ宮殿から戻り、聖騎士団本部に到着した時には、既にドデカケラトプスが本部に迫り、雷撃光球を撃ちまくって暴れ回っていた。
それを目の当たりにしたゲオルクは、間髪入れずレベル・ブーストを発動し、さらに『神槍グングニル』の力で、〈雷神の雷〉=『雷霆』も発動して、雷に乗って一気に上空まで飛び上がった。
そして、雷が落ちる速度で『神槍グングニル』をドデカケラトプスに突き刺し、槍に籠められた雷のエネルギーでドデカケラトプスの胴体に風穴を空けたのだ。
ハビエルはその姿を見て、「団長……」と呟き、満足気な表情で意識が途切れた。
ゲオルクはドデカケラトプスから飛び降り、地面に着地した。
ゲオルクの周囲に薄緑色の淡い光の粒子が現れ、少しずつ焼け焦げた皮膚が回復していく。自動回復魔法『アトマ・ピセラ』の効果だ。しかし、一見して表面的な傷は治っても、レベル・ブーストの反動で肉体に残ったダメージは、それほど速くは回復しない。
「皆の者、すまぬ……‼ 遅くなった……‼」
ゲオルクは悔やんだ。周囲には多くの聖騎士が倒れている。
そこにハーディー達が集まり、シリーとリツァルが率いる零番隊や、退避していたハンナやスティアン、彼女達を護っていたサビオが、団長のゲオルクの下へ集結した。
聖騎士団は、火竜や地竜をあらかた撃破していた。
* * *
月下の塔の屋上から遠視魔法『アクイラ・オクルス』を使って全体の様子を見ていたクロウは、舌打ちをした。
「チッ……クソォ……もうすぐだったってのによぉ……しかし、団長のゲオルク……遂に現れたなァ……随分遅かったがァ、例のブツを手にしてるじゃあねぇかァ……ククッ」
クロウは不敵な笑みを浮かべた。
* * *
ジゼルが隠れた地下倉庫は、聖地サンクホフト内に幾つかある地下倉庫の1つで、〈黒の地下倉庫〉と呼ばれている。
内部は石造りで、魔霊石ライトで照らされている。入ると自動で点灯する仕組みだ。
最初の扉は頑丈で分厚い金属性の扉で、厳重に閉じられていた。
ジゼルがハビエルから拝借した金細工の〈金星級の紋章〉を凹みにはめ込むと、「ギギィッ」と音を立てて開いた。
ジゼルが地下倉庫に入ると、そこには大量の武器・防具が並んでいた。
衝撃で一部が崩れ落ちている状況だが、ほぼ壊れてはいない。
「……オレにはまだできる事があるんじゃ……」
武具掛けには、剣や斧、槍、弓矢、防具等、様々な武器防具が掛けられていた。『魔鋼の剣』や『蒼銀の剣』や『蒼銀の胸当て』等の聖騎士用の一般的な武器や防具が立て掛けられている。
ジゼルが武器を物色していた時、床の出っ張りに足を引っかけて転びそうになった。
「おっと」
ジゼルが〈武具掛け〉の隙間から壁面に手をつくと、「ガコンッ」と奥で音がした。
「な、何だ……?」
音がする方に行くと、壁が不自然にズレている。その壁を押すと、通路が現れた。
「えっ⁉ か、隠し通路じゃん……!」
ジゼルがワクワクした気持ちで通路に入ると、手前から奥にかけて自動的に魔霊石ライトが順番に点灯した。奥に進むと、さらに地下に下りる階段があった。
地下3階の深さまで降りると、天井が高く広い地下倉庫が広がっていた。
火竜の全身骨格のようなものが飾られ、ちょっとした博物館のようになっている。
「こ、こんな場所が……⁉ こんなデカいの……あぁ、圧縮して運んだのか……」
ジゼルはキョロキョロと辺りを見渡した。金属製のフルプレートの鎧や、珍しい〈蛇行剣〉と呼ばれる形状の剣等、普段は見かけない武具の数々が保管されていたが、どれもこれも通常サイズで、ジゼルにはピンと来なかった。
歩み進むと、最奥に〈両刃の巨大な斧〉が魔布に包まれて立て掛けられていた。両刃の幅が腕を広げたようなサイズの〈巨大な斧〉だ。
「おっ⁉ 良いのあるじゃん~っ‼」
それを見てジゼルはピンと来て目を光らせたが、疑問を感じた。
「……ん? こんなデカいの……誰が使うんだ……? 昔、聖騎士に巨人でもいたのか? それとも……オレと同じ圧縮魔法の使い手がいたのか……?」
ジゼルは巨大な斧を掴もうとした。
バチィッ! ガシャーンッ!
電撃が走り、ジゼルは弾き飛ばされてフルプレートの鎧にぶつかり、倒してしまった。
「……いって……クソッ。しまった……だけど、これならどうだ?」
ジゼルは得意の電磁魔法『エレクトロ』を発動した。
ジゼルが電磁魔法を使えば、重い物も直接触れずに持ち上げる事ができる。
バチッ……パチパチパチッ……グググッ……
ジゼルは電磁魔法を使って、得体の知れない巨大な斧を持ち上げる事に成功した。
斧を包む魔布を外すと、禍々しい悪鬼の装飾が施された『悪鬼の戦斧』が現れた。
「うわ、何じゃこりゃあ~? イカついな~……でも、めっちゃ強そうじゃんっ!」
一瞬、ジゼルは小鼻をひくつかせてドン引きした後、歯を見せてニヤリと笑った。
* * *
ゲオルクの前に聖騎士団が集結し、彼が指揮を執った。
「ハビエルにイグナーツ、フラヴィア、パッセロはまだ死んでいないはずだ……と思いたい……。シリーとリツァル! 零番隊は彼らを捜索して本部に連れて行き、回復させよ! すぐに行け‼」
シリーとリツァル他、零番隊の全員が、毅然とした眼差しで「ハッ!」と返事をして、すぐに行動を開始した。
魔力感知魔法『マギア・ペルセベル』、足跡視魔法『スポール・ベル』、遠視魔法『アクイラ・オクルス』、暗視魔法『ナハト・ジヒト』、視覚感知魔法『モニトラ・ペルセベル』と言った複数の感知系・視覚系の魔法を発動して、ハビエル達の捜索を始めた。
続いてゲオルクは、ハーディー達に目を向けた。
「残りの勇隼隊の小隊長・副隊長は、私に付いて来い」
ハーディーとグライフ、ミロ、キーラが「ハッ!」と返事をして前に出た。
本来であればジゼルとロコもここに名を連ねる。
天鴞隊であるマイルズとソボル、聖雀隊のハンナやスティアンは、ここでハーディー達と別れる事になった。
マイルズ達は心配そうに彼らを見つめ、軽く手を挙げたり振ったりした。
「サビオ! 残りの全員を本部に集め、お主が中心となって魔法が得意な者達で防壁魔法を展開して皆を護れ!」
サビオは「ハッ!」と返事をして、残った聖騎士団を誘導し始めた。
* * *
その頃、ガリオンは最奥部中央=北西側の大聖堂の手前にある美しい噴水と花が咲き乱れる庭園に降り立ち、目を閉じて瞑想状態に入り、肉体を回復させていた。
ガリオンの武器=『鳳翼双剣』が空中に浮かんでいる。拘束魔法で自身の周囲に空中拘束しているのだ。
そこにクロウが現れ、ガリオンに駆け寄った。
「オジキィッ! 大丈夫かァ⁉ 団長のゲオルクが『雷神の槍』を手にしてるぜェッ‼」
ガリオンは静かに目を開け、クロウを睨みつけた。
ビリビリビリッ!
クロウは、肉体に電撃が迸るようなプレッシャーを感じた。
「貴様が召喚したドラゴンどもは、ほぼ全滅……無様だな……」
「そ、そう言うなよぉ~……オジキィ……! け、結構、戦力は減らせたぜぇ~?」
「……ふん……雑魚を蹴散らした程度……‼ ……それにしても……ククッ、自ら『魔神器』を届けてくれるとはな……だが、何故、所有者ではないゲオルクが……?」
ガリオンは不敵な笑いを浮かべながらも疑問を呈した。ガリオン自身の記憶でも、以前から〈もう1つの『魔神器』を聖王が所持している〉という噂は聞いていたが、それが何なのかは〈秘匿〉されていたため、正確には把握していなかった。
しかし、エルーザクの記憶がその情報を掴んでいた。
「オジキィ。そりゃあおそらく、聖王の力だァ……奴は聖域から出れないからなァ……」
「……そうか……一先ず、奴が来る前に、大聖堂の先に進みたかったところだが……」
ガリオンは『堕天使の杖』を持ち、「スーッ」と空中浮揚して、大聖堂前に進んだ。
ブゥンッ‼ ピシャッ!
大聖堂の正面入口前の空中に〈光り輝く魔法陣〉が浮かび上がり、ガリオンの侵入を阻害した。魔法陣には古代文字や、幾何学的な紋様がランダムに回転するような動きを見せている。
「この通り……、強力な結界が張られ、大聖堂より先への侵入を阻害する〈魔法の壁〉が存在している……。正面のみならず、裏側に回り込む事もできん……。大聖堂の奥の第二層……〈真の聖域〉に、このガリオンが入る事を拒んでいるようだ……」
「ぬぬぬ……? 少なくとも、大聖堂には入れるはずじゃあ……? 空からは行けねぇのかい?」
クロウは魔法陣に驚愕しつつ、疑問を呈した。
「聖王の仕業だろう……何千m上空まで〈魔法の壁〉があるのか不明だ……。ならば、力ずくで結界を破るしかなかろう……」
ガリオンは『堕天使の杖』を構えた。
その時――「パリッ……パチパチッ……」と、空気が帯電したように電気が迸った。
ゴロゴロゴロゴロ……ドッゴォオォオォオォーーーーーーンッッッ‼
再び激しい稲光と共に、轟音が轟いた。
ガリオンとクロウは、各々で防御結界魔法を展開しつつ、雷撃を素早く避けた。
「ほほぅ……‼ これを避けるとはな⁉」
そこに現れたのはゲオルクただ1人だ。『神槍グングニル』が発生させた雷に乗って、超高速で移動したのだった。
クロウはガリオンに合わせて動いただけで、攻撃を察知できていなかった。ギリギリだったため、「あっぶねぇ……‼」と肝を冷やした。
「……団長殿……1人でお出ましか……」
ガリオンは歯を見せてニタリと嗤った。
そして、浮揚はせずにゆっくりと回り込むように歩き始めた。
「今の攻撃は、『レベル・ブースト』を使わなかったな?」
「ほぅ……わかるのか?」
「さっきの竜魔獣への攻撃で一度使ったのを確認している……。老体には、そうそう何度も連発できまい。使えて、あと1~2回が限界ってところか……」
ガリオンの指摘は図星だったが、ゲオルクは動じなかった。彼がそれを理解できる事など想定内だ。
「レベル・ブーストせんでも、この『魔神器』……『神槍グングニル』を持つ者は〈力〉が向上する事くらい知っていよう? 魔神器の継承者ならな……! ガリオン‼」
ゲオルクが『神槍グングニル』を構え、槍の穂先から「バチバチバチッ」と電光が迸った。クロウは怯みながら後退し、ガリオンは嘲笑いながら『鳳翼双剣』を構えた。
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次回:2025年05月08日 22時20分
EP.57 黒い刃




