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EP.54 命懸け

妄想主題歌(右クリック→移動 または、コピペでお願いします)

https://youtu.be/OahpETEBXxc


 ドゴォンッ‼


 聖なる結界が破壊された事により力を取り戻したドデカケラトプスは、推定レベル460まで上昇し、一気にハーディーとグライフを数十m弾き飛ばした。


「ぐぬぅっ⁉」「ぐあぁっ‼」


 通常、20%程度レベル差があるとほぼ攻撃が通じないが、それどころではない。レベル291のグライフと比べて、約60%もレベル差が開いてしまったのだ。


 本来であれば五体満足では済まないが、ハーディーとグライフの魔霊気は硬く強靭な特性がある。即死は免れた。しかし、全身の骨にヒビが入り、一部は複雑骨折している。


 彼らは強化魔法『フォルサ・ソーマ』を使って、どの部位よりも〈脳や内臓を強化〉したため、命に別状はないが、肉体はボロボロになり、身動きが取れず、意識が朦朧として途切れかけていた。


「ガフッ……ク、クソ……何つー化け物だ……」


 ハーディーは頭から血を流し、血を吐いた。


「ハーディー! グライフ!」


 マイルズが一気に飛んで来て、2人を抱えた。


 ブウゥウゥン……ボンッ‼


 マイルズの義足『ソア・フリー』の脹脛ふくらはぎのスリットと足の裏のスラスターから光が放たれ、衝撃魔法『パイネ・アールト』のような衝撃波をジェット噴射した。


 マイルズは、2人を抱えながら低めの軌道で跳躍し、回復術師のハンナが居る場所まで退避させた。




 バリバリバリッ! ボンッ‼


 ドデカケラトプスが12本中3本の角を使って1つの雷撃光球を発生させ、放った。


 ドッッッ! ガァアァーンッ‼


 それはドデカケラトプスによるただの試し撃ちだったが、宿舎の1つが丸ごと木っ端微塵に消し飛ぶ威力だった。


「な、何という事だ……‼」


 力を取り戻したドデカケラトプスを目の当たりにして、ハビエルとイグナーツは恐れおののいた。月下の塔の上でその様子を見たガリオンとクロウが、不敵な笑みを浮かべた。


 バリバリバリバリバリバリバリバリ……‼


 ドデカケラトプスの12本の角が、3本1組で4つの雷撃光球を発生させ始めた。


「おいおいおい……マズいぞ‼ あんなもん放たれたら、半径数百m吹き飛ぶ‼」


 ハイレベルな魔法使いであるイグナーツは物事を推測する想像力も高い。彼の脳裏には、4つの雷撃光球が空中でぶつかり、大爆発して全周囲に雷撃を放つ様が浮かんだ。


「全滅しかねん……‼」


 そこに、半回復したソフォスが戻って来た。


「すまぬ‼ 気をうしのぉておった……‼」


 イグナーツが「ソフォス様‼」と叫んだ。


 続いてハビエルがソフォスに問う。


「し、しかし、いくらソフォス様と言えど、あの化け物の攻撃を防ぎ切れますか⁉」


「防ぐのではない! 攻撃こそ最大の防御じゃ‼ 攻めあるのみ!」


 ソフォスは1人でドデカケラトプスに突っ込んだ。


「ソ、ソフォス様っ⁉」


 ハビエルとイグナーツは戸惑い、手を伸ばすのみで足が止まってしまった。


「ディフティ・ブリクセム‼」


 バリバリバリバリバリッ‼ 


 ソフォスは再び拘束魔法『コンストレイン』に上級電撃魔法『ブリクセム』を重ねた〈複合魔法〉を発動し、〈雷撃の網〉がドデカケラトプスを拘束した。


 しかし、ドデカケラトプスのレベルは上がっている。一歩一歩ゆっくりと前に動き始め、雷撃光球もさらに大きさを増していく。


 ソフォスが「半分で良い‼ 角を折るんじゃあぁーッ‼」と、叫んだ。


「了解!」


 数十m離れた建物の屋根の上で、骨折から回復したジゼルが、『巨人の魔鋼剣』を手にして天頂に向けた。


 彼女が持つ『巨人の魔鋼剣』は、現状のサイズは刃渡り1m程度だが、元々のサイズは長さが約5m、幅が約30cm、厚みが3~4cm、約450kgという巨大な剣で、圧縮魔法系の拡縮魔法『マススハール』で縮めて装備している。


 ソフォスとジゼルがダメージを受けて退避した時に話して、発案された作戦だった。




「あぁん? 何だあの女はァァ?」


 月下の塔の屋根の上から、クロウが小馬鹿にしたようにニヤニヤしながらその様子を見て嗤った。ガリオンは無表情で見ている。




 ジゼルが「マススハール全開‼」と叫ぶと、『巨人の魔鋼剣』は「ギュインッ‼」と、10m以上に伸長した。


 圧縮魔法の上位魔法である拡縮魔法『マススハール』は、体積と重さが元の状態と一致していれば、三次元的に拡大する方向を自由に変える事ができる。即ち、X=幅・Y=長さ・Z=厚みとした場合、幅と厚み=太さを変えず、長さだけ伸ばす事ができる。


 元に戻した分は質量が戻り、『巨人の魔鋼剣』は約450kgになったが、ジゼルは電磁魔法『エレクトロ』によって、掌からわずかに〈磁気浮上〉させて持ち上げ、ほぼ〈重さを感じずに〉軽いナイフのような速度で、高重量の武器を振り回せる。


「エレクトロ……反動ッ‼」


 バチバチッ! ヴォンッ‼ ヒュンッ!


 ジゼルは、地面を蹴る瞬間にも電磁魔法の反発力を使って、超高速で跳躍した。


「喰らえッ‼」


 そして、10m以上の長さに伸ばした『巨人の魔鋼剣』をドデカケラトプスに向けて一気に振り下ろす。ジゼルの必殺の剣、『巨人殺ギガント・スレイヤーしの剣』だ。


 彼女が剣を手元で振り抜く速度を〈角速度〉とするならば、剣の切っ先の速度は〈周速度〉だ。周速度は〈刃が長いほど〉高速になる。


 ボンッ‼


 それは一瞬だった。ジゼルが振り抜く『巨人の魔鋼剣』の切っ先の速度は〈音速〉を超え、爆発音に近い轟音が鳴り響き、周囲に衝撃波が広がった。


 バキィイィンッ‼


 わずかレベル267のジゼルの一撃は、レベル約460のドデカケラトプスの角を5本斬り落として、頭蓋骨に食い込んだ。


 しかし、あまりにも強い衝撃によって、『巨人の魔鋼剣』は砕け散ってしまった。


 ボボボボンッ‼  


 同時に、ジゼルの一撃で雷撃光球が2つ爆散し、その衝撃で残り2つも爆散した。


「うぐぅっ⁉」


 しかし、ソフォスが爆散時の衝撃波によって弾き飛ばされた。


 ソフォスは防御結界魔法『アミナ・バリエラ』を身に纏っていたが、近い距離での爆散だったため、ただでは済まず、全身に雷撃ダメージを負い、意識を失った。


「うっ⁉ ソフォス様っ‼」


 ジゼルは半壊していた『トポスの盾』を展開して防御する間もなく、雷撃光球の爆散で吹っ飛ばされ、倒れた。


 盾は全壊し、無傷では済まなかったが、『巨人の魔鋼剣』を10m以上の長さに伸ばして至近距離ではなかった事に加え、ソフォスの強力な防御結界魔法『アミナ・バリエラ』を身に纏っていたため、無事だった。


「うぅ……うぐっ……」


 ジゼルの一撃は、仮に地面に命中すれば地面が数十m割れるほどの衝撃力だったが、これほどの衝撃力でさえ、レベルが70%も違うと魔霊気によってかなりダメージが軽減されてしまった。


 しかし、それでもドデカケラトプスの頭を割り、大ダメージを与える事ができた。


 ドデカケラトプスは大量に出血して「グゥオォオオオオオオオオオオ‼」と咆哮した。


 角を斬り落とされたドデカケラトプスは怒り狂い、倒れたジゼルに突進した。ジゼルは何とか上体を起こして動こうとしたが、素早く動けそうにない。


 彼女は死を覚悟した。


 ボゴォオォーーンッ‼


 刹那、ハビエルが素早く飛び込み、間一髪ジゼルを抱えて飛び退いた。


 ドデカケラトプスは近くの建物に激突し、木っ端微塵にしてしまった。


 ドデカケラトプスもかなりのダメージを受けた状態だが、ジゼルの捨て身の一撃ほど、この魔物にダメージを与えられる攻撃力を発揮できる者は他にいない状況だ。


「ハビエルさん! レベル・ブーストを使います‼」


 イグナーツがハビエルに宣言した。


「し、しかし、まだガリオンも居るんだぞ⁉」


「呼んだか?」


 ハビエル達はドデカケラトプスに集中し過ぎていた。


 ガリオンが唐突に接近し、ハビエルに斬りかかった。


 ガギィイィンッ! ドゴォッ!


 ハビエルは何とか義手の『マニプラドール』に防御シールド魔法『アミナ・エスクード』を重ねて防御したが、弾き飛ばされて建物に激突して倒れた。


「この小娘……やってくれる……」


 装備を失い、丸腰で倒れたジゼルに、ガリオンが迫る。


 ジゼルは上体を起こし、怯えた表情で後ろに下がった。


「ガ、ガリオンさん……⁉ オ、オレの事がわからないのかよ⁉」


 まだジゼルには、この状況を信じたくない気持ちがあった。


「……ジゼルだろう? 分かっているよ……」


「は⁉ だ、だったら、こ、こんな事やめろよ‼」


「最後に言う事はそれだけか?」


 ガリオンはジゼルに剣を向けた。


「グゥオォオオオオオオオオオオ‼」


 その時、ドデカケラトプスがガリオンに突っ込んで来た。


 ガリオンは素早く空中浮揚して難を逃れたが、ドデカケラトプスは暴走し、そのまま聖騎士団本部がある方角に向かって走り出した。


「チィッ! 制御不能だと……⁉ 頭をやられて混乱しているというのか……?」


 ガリオンは空を飛んでドデカケラトプスを追った。『鳳翼双剣』を手放して空中に固定して自身に追従させ、腰に装着していた『堕天使の杖』を再び握り締め、高く掲げた。


 その隙にイグナーツがジゼルを抱え、倒れたハビエルの下まで駆けつけた。


「エレメ・ピセラシオン‼」


 イグナーツは上級回復魔法を2人に向けて発動した。2人の肉体が明るい蒼碧色の光に包まれた。イグナーツは高レベルの魔法使いなので、聖雀隊のフラヴィアほどの回復魔法のスペシャリストではないが、ある程度は使いこなせる。


「わ、わりぃ……イグナーツ先生……」


「おい、『ありがとうございます』だろ?」


「……あ、ありがとうございます……」


 ジゼルは頬と耳を赤らめて言った。


 ハビエルは大ダメージを受けていたが、意識はあったため、何とか起き上がった。


「……イグナーツ。同時に『レベル・ブースト』だ……。私があの化け物をやる。お前はガリオンを頼む!」


「し、しかし……」


「私の攻撃はデカブツには必ず攻撃を命中させられるが、ガリオンには躱される可能性が高い……。今、ガリオンを止められるのは君だけだ。イグナーツ‼」


 イグナーツは「……わ、わかりました……」と言って、ゴクリと唾を飲み込んだ。


 ハビエルは「頼むよ。天才!」と言って、イグナーツの背中を叩いた。


「ジゼル……君はこの建物の奥に隠れてなさい。そこに地下倉庫の入口がある。通常、君達では入れないが、私が持つ〈金星級の紋章〉があれば開く。これを持って行きなさい」


 ハビエルはジゼルに金細工の〈金星級の紋章〉を渡した。


「で、でも!」


 ジゼルは戦力外通告を受けたに等しい。納得がいかなかった。


「武器を失った君に、何ができるんだい?」


 ハビエルは真剣な眼差しで真っ直ぐにジゼルを見つめた。


「わ、わかったよ! あっ、わ、わかりました……。絶対にあの人を止めて下さい!」


 ジゼルはそう言って、後ろ髪を引かれる思いで地下倉庫に向かった。


 ハビエルが「さぁ、行こうか」と言い、イグナーツが「ハッ!」と返事をして、ドデカケラトプスとガリオンが向かった先へ駆け出した。

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次回:2025年05月08日 18時20分

EP.55 火の神


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