EP.43 ドワーフの王国(グライフ&ジゼル編)
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https://youtu.be/OahpETEBXxc
グライフとジゼルを中心に編成された聖騎士団は、エリシウム大陸・北西のオクシピタル地方にあるドワーフの王国=〈フェレイラ王国〉に現れた地竜討伐に向かった。
今回の遠征で、中心となるメンバーは以下の通りだ。
勇隼隊一番隊 別名〈月光隊〉 隊長グライフ レベル291 銀星級
副隊長キーラ レベル248 銅星級
勇隼隊三番隊 別名〈紫電隊〉 隊長ジゼル レベル267 銀星級
副隊長ロコ レベル243 銅星級
グライフとジゼルを中心に総勢20名ほどで編成されており、天鴞隊のソボルと聖雀隊のハンナが一時配属となっている。キーラは聖雀隊だったが、志願して移籍してきた。
フェレイラ王国は、〈氷の大地〉の地底王国。
氷と言っても氷河や氷山のようなものではなく、永久凍土である。
聖騎士団は『聖騎士の装束』の上に分厚いコートを着てフードを被り、数m先までしか見えないほどの猛吹雪の中、雪原を歩いていた。各々火属性の魔霊石を持ち、ある程度温かくしているため、凍えずに歩く事ができているが、疲れが出始めていた。
「おい、本当に向かっている方角は正しいのか?」
フードを深く被ったジゼルがグライフに聞いた。白い息が漏れる。
「あぁ、大丈夫だ。……見ろ」
グライフは自信満々にそう言って、手袋をした手で細い鎖付きのチャームを見せた。10cm程度のチェーンの先に蒼い魔霊石がはめ込まれていて、先端は矢じりのように尖っている。これは『魔霊魂波守』という魔道具だ。
「コンパスよ、フェレイラ王国の方角を指し示せ。ディレクティオ!」
グライフは方角を指し示す呪文を唱えた。コンパスの先端は、向かっている方角より20度程度左斜め前を指し示した。
「おいおい、若干ズレてねーか?」
ジゼルは眉間に皺を寄せ、グライフを睨むように言った。
「……すまん……向こうだな」
グライフは気まずそうに呟き、後ろにいるキーラとロコは心配そうに2人を見つめた。
しばらく進むと、吹雪が弱まり、数十m先に巨大な崖が見えてきた。
ジゼルが危惧したほど方角は間違えていなかったのだ。グライフはホッとした。
近付くと凍りついた堀と橋があり、その奥にゴツゴツした質感で黒鉄色の金属製の巨大な門が見えた。高さ20mほどもあり、多重構造で門の内側に3段階ずつ小さな門が造られている。ドアに小さなドアが付いているような構造だ。最も大きな門は、巨人でも居ない限りは開ける必要がない代物だった。通常は最も小さな3m程度の門を開けるだけで事足りるだろう。
風除けの板が何段階かあり、その内側に門番のドワーフがいる。分厚い角付きの兜を被った髭面の男だ。内側には篝火があるだけでなく、門番が座る場所には火属性の角張ったクリスタルが置かれているため、暖かかった。聖騎士団の面々はフードを外した。
ジゼルは髪が伸び、前後で斜めにカットした左右非対称のボブヘアになった。側頭部を刈り上げ、細い三つ編みを付けるという聖騎士独特の髪形の条件はクリアしているが、三つ編みは襟足ではなく、左側の側頭部に付けている。正直、彼女はこの髪形の風習はやめたいと思っている。
聖騎士団が進むと、「ギィーッ……」と音を立て、門が開かれた。
聖騎士ならではの顔パスと言ったところだ。
門の内側は青黒い岩の鍾乳洞のような地下空間で、さらに人工的に岩が刳り貫かれて拡張されている。篝火に加えて魔霊石ライトが設置され、明るく照らされている。
巨大な門より高い天井で、かなり広々とした空間だ。
外では猛吹雪が起きていたとは思えないほど、中は暖かい。
奥には水路が流れていて、橋が架かっている。水路の水中には、蒼白く光るクリスタルが点在し、美しい光景が広がる。
橋の奥に、通過した門と同等の大きさの巨大な門がある。二重に門があるのだ。
門の両側には、まるでフェレイラ王国の守り神のような巨大な戦士の像が2体立ち並び、12mほどもある巨大な剣を台座に突き刺して構えている。
ハンナが「立派な像ですねぇ~」と呟き、ジゼルが「デッカい剣だな~」と巨大な剣を見て目をギラつかせたので、ロコが「やめとけよ、ジゼル~」と意味深な発言をした。
2つ目の門に近付くと、同じように「ギィーッ……」と音を立て、門が開かれた。
奥の門を通過すると、地底に広がる王国が現れた。
太陽の光がクレバスの隙間から差し込み、巨大なクリスタルのプリズム効果で、地下都市を明るく照らしている。巨大なクリスタルは、密度が低い魔霊石の一種だが、通常の魔霊石と違って広範囲にエネルギーを届けられる。
そのため、フェレイラ王国は〈クリスタル・エネルギー〉によって発展していた。
地底と思えないほど、広大な地下都市だ。門の位置から街の中心部までは下り、そこから奥に行くほど山なりにせり上がり、最奥部には壮麗なるフェレイラ城が聳え立つ。街中には木々も植えられ、広場には噴水もあり、地下空間とは思えない光景が広がっていた。
ハンナが「わぁ~!」と感嘆の声を上げ、ジゼルが「こ、これが噂の……‼」と目を輝かせた。珍しくグライフもキョロキョロと周囲を見渡して「見事なものだな……!」と呟き、ロコ、ソボルもそれぞれ「おぉ~」「スゲェ~!」と驚嘆の声を上げた。
キーラだけは過去にも来た事があり、冷静に振舞っていた。
突然、小柄な若いドワーフの青年が聖騎士団の目の前にすっ飛んで来た。
「お待ちしておりました。聖騎士団の皆様! 私は案内役のフロイナです!」
男性かと思われたが、女性だ。ドワーフの女性は人間と比較すると男っぽく見える。
フロイナに案内され、聖騎士団はフェレイラ城に到着した。角張った塊が複雑に折り重なったような壮麗な城郭で、所々にクリスタルが配されている。
各々が滞在する部屋に案内された。隊長と副隊長はそれぞれ個別に部屋が与えられ、それ以外の聖騎士は兵房での集団生活となる。
聖騎士団はしばらく身体を休めた後、ドワーフの王=フェレイラ王〈ヴァルグリム・グニルヴァルド〉と謁見する事となった。
王の間は、青白い石材とクリスタルで造られていて、金色の装飾が施された赤い絨毯が敷かれ、荘厳な雰囲気である。
ヴァルグリム王は、白髪交じりの赤茶色の長い髪で立派な髭を蓄えている。
王の傍には、武骨なドワーフのゴルドリン将軍が立っている。ゴルドリン将軍は、茶髭で右眉の上から右頬にかけて縦に深い傷があり、眼帯をしている。
さらに周囲にはドワーフの近衛兵が複数立ち並ぶ。
グライフとジゼルは慣れない硬い挨拶をこなし、右手を胸に当てて跪き、深々と頭を下げた。副隊長のキーラとロコ、他の聖騎士も後に続く。
「ほっほっほ……そう畏まるでない。グライフ殿。ジゼル殿。そして聖騎士達よ。期待しておるぞ」
ヴァルグリム王の言葉に、聖騎士団は「ハッ!」と力強く声を合わせた。
* * *
――フェレイラ城・作戦会議室。
約20人の聖騎士団と約30人のドワーフ戦士団が集結した。フェレイラ王国の人口は数千人いるため、ドワーフ戦士がたったの30人というのは戦力としては少な過ぎるが、精鋭中の精鋭部隊である。魔力レベルが存在する世界では、低レベルの100人の兵より、高レベルの1人の強者の方が圧倒的に存在意義があるというものだ。
「それでは、作戦会議を始める」
ドワーフなので身長は低いが、筋骨隆々なゴルドリン将軍がその場を仕切り始めた。
将軍の側近が、巻いてあった地図を卓上で展開し、将軍が説明をする。
「現在、『ヘイラの地下神殿』に、複数の巨大な〈地竜〉が現れておる。自然発生したのか、何者かが使役しているのかはわからんが、現時点で10体ほど現れたようじゃ」
「10体……それは厄介ですね……」とグライフが呟いた。
「正直言って、それ以上に増える可能性もある。古き言い伝えで『地の底潜む竜と戦わば、三十の勇士の魂を捧げんことを要すなり』と云われるほど、地竜は恐ろしい相手じゃ……じゃが、お主らの中には、たった1人で地竜を倒せる者がいると聞いておるぞ」
ゴルドリンは見上げてグライフの顔を見た。
「グライフ殿。不躾ながら聞くが、今のレベルは如何ほどじゃ?」
「ハッ……現在のレベルは、291です。ここに来る前に、聖騎士団で所有する『魔力測定器』で計測して参りました」
グライフの胸元では、〈銀星級〉の勲章が輝く。
「ほほぉ……それは頼もしいのぉ……じゃが、地竜どもは平均でレベル270以上とも云われておる……。即ち、中には、レベル300を超える個体もおる上、〈ドラゴンの鱗〉は頑強で、魔力レベルで上回って攻撃が魔霊気を貫通しても、通用しない事もある……。銀星級では、厳しい戦いになるのではないかのぉ……?」
このような皮肉を言うだけあって、ゴルドリン自身はレベル300以上で、聖騎士団の金星級に必要なレベルを凌駕している。しかし、この場にいるドワーフ戦士団の平均値はレベル250未満であり、平均的な地竜に攻撃が通るかギリギリのレベルだ。
そのため、聖騎士団の援軍は必要不可欠であった。しかし、レベルの平均値は聖騎士団の方が低いという事になるため、ゴルドリン将軍は少々不満を感じていた。
ゴルドリンはジロッと聖騎士団に目を向けた。
「……はて? 何故今回ガリオンが来なかったのじゃ?」
グライフは「そ、それは……」と、少し困った表情でキーラとジゼルを見た。
「はっ! 今回、勇隼隊・隊長のガリオンは、極秘の任務を与えられたため、馳せ参じることが叶いませんでした!」
キーラがハキハキと答えた。
「ふむ……まぁ、仕方あるまい……お主ら若い聖騎士達の活躍を期待しておる。では、具体的にどのように立ち向かうか、話し合おうではないか」
ゴルドリンがそう言うと、側近のブローリンが前に出て説明を始めた。ゴルドリンより若く、赤銅色の髪と髭で、ドワーフの中では少し背が高く、端正な顔立ちをしている。
ブローリンがクリスタルが取り付けられた『魔法投影機』を起動させると、空中に三次元的に青白い光で透過したような『ヘイラの地下神殿』の映像が映し出された。
「先程話があったように、ヘイラの地下神殿に地竜が現れ、地下都市と鉱脈を荒らしている。地竜は金属が大好物で、希少金属に目がない。このまま放置していると、地下神殿を破壊しつくされ、地下神殿のクリスタルが破壊されかねない。そうなると、フェレイラ王国全体への影響も計り知れん……。だから早めに討伐する必要があるのだ」
グライフやジゼルは『魔法投影機』を初めて見たため、その技術の高さに驚きを隠せなかったが、動じていないフリをした。
「古代遺跡である地下神殿には魔物が巣食うため、同時に巨大な地底蜘蛛や、地竜モドキのサンドロックワームも現れるため、注意が必要だ」
ブローリンが『魔法投影機』の映像を切り替えると、地竜の三次元映像が浮かび上がった。
「地竜は、翼が退化したサンドワームのような体で、代わりに前脚が土竜のように掘り進む爪に進化している。目が退化している土竜と違って、暗闇でも見える巨大な目が特徴だ。即ち、それが弱点でもある」
ブローリンがさらに『魔法投影機』の映像を切り替えると、地竜が何かを吐き出す図解が現れた。
「中には、溶岩地竜と呼ばれる非常に危険な個体がいる。溶岩地竜はその名の通り、火竜が火を吐くように土を飲み込んで炎のエネルギーと混ぜ、ドロドロの溶岩として吐き出す『マグマ・ヴォミット』が非常に危険な相手だ」
グライフが、「見分けはつくのか?」と聞いた。
「溶岩地竜は全体的に黒っぽい体表で、ヒビ割れたような鱗を持ち、そのヒビ割れの部分がまるで溶岩のように赤く光っている。特に『マグマ・ヴォミット』を吐き出す前は、ヒビ割れから燃え上がるような光を放つ。きちんと観察していれば回避できるはずだ」
グライフは「なるほど」と頷いた。
「……だが、かなり広範囲に拡がるから、防火魔法『エルド・ヴォルン』を途切れさせずにかけ続ける必要がある。まともに喰らえば骨も残らんぞ……」
ブローリンの話を聞き、聖騎士団は「ゴクッ」と息を呑んだ。
「ドワーフは魔法が得意な者が少ない。持続性が高く強力な防火魔法が使えるのは、この私と、ヒンドリンの2人しかおらんのだが、聖騎士団はどうだ?」
ブローリンがそう聞くと、キーラが前に出た。
「聖騎士団では、防火魔法は必須魔法になりますので、多くの者が使用可能であります!
特に高い効力と持続性を発揮できるのは、この私と、後ろにいるソボルとハンナです!」
ソボルは天鴞隊の隊員だが、グライフの月光隊に一時配属となり、聖雀隊のハンナもジゼルの紫電隊に一時配属となっていた。
ヒンドリンという男は、ブローリンの背後に立つ金色の装飾が施された黒いローブを着た小柄で瘦せ細った魔導師の男だ。ドワーフと人間のハーフで、ドワーフのように筋骨隆々でもなく、髭も短く、顔色が悪く灰褐色だが、鋭い目つきをしている。
ブローリンは「うむ……併せて5人もいれば、安心だな」と安堵した。
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次回:2025年05月06日 13時10分
EP.44 偽り(グライフ&ジゼル編)




