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EP.31 悲鳴(逢魔の聖騎士編⑤)

妄想主題歌(右クリック→移動 または、コピペでお願いします)

https://youtu.be/OahpETEBXxc


 既に、村兵の6割以上が死傷している。隊長格は全滅した。まさに虐殺である。


 ゴブリンにオーク、魔狼に魔蜥蜴を相手に、生き残った副隊長や、年齢が高い者を中心に、何とか踏ん張っていた。残った村兵は避難所になっている村の教会の防衛に回り、逆に教会から離れるようにゴブリンやオークを誘導して戦っている。


 このままでは教会にも危険があるため、数名の村民が教会から脱出を試みたが、ゴブリンに襲われて殺されてしまった。


    ◇    ◇    ◇


 一方、北の崖の洞穴では、ゴブリンや魔蜥蜴が突入し、避難した人々が襲われ始めた。


 この空間は、オークや魔狼にとっては狭いが、小回りの利くゴブリンと魔蜥蜴にとっては、絶好の狩場となってしまった。


「ひぃいいぃぃぃぃ~っ! く、来るなっ! 来るなぁあぁぁぁ‼」


 ブルタールは一緒に逃げて来た者達と共に、農具や薪割り用の斧で抵抗をしたが、ゴブリンの集団と魔蜥蜴に囲まれ、足を矢で射抜かれた。


「いっづ……た、助けて……」


 ブルタールは命乞いをしたが、そんな言葉が通じる相手ではない。魔蜥蜴が目の前に迫り、「シュルルル」と二叉に分かれた真っ黒な舌を出し入れしている。


 ブルタールの断末魔は洞穴の外にまで響き渡った。


    ○    ○    ○


 これまでの様子を、地下に隠れていたグライフとグレースは『ハリの水晶』の映像で見ていた。しかし映像は途切れ途切れで、素早く動き回るファムの行動を全て追う事はできず、見失った。そして、強い魔力が発動したダリアとヴィアの最期を見届けたところだ。


「ハァ……ハァ……」


「な……何て事だ……。グ、グレース……、大丈夫か?」


「うん……『竜の霊薬』が効いてるみたい……。それより、不安と恐怖で……」


 グレースが持つ『魔神器:ハリの水晶』は、透視能力や予知能力を発動した時は、肉体と魂に不可逆的なダメージを与える事があるが、すぐ近くで実際に起こっている事を見る程度であれば、それほどの魔力を必要とせず、リスクも少ない。


 そもそも2人は、魔神器が肉体に与える負荷をさほど理解していなかった。


 グレースは『竜の霊薬』のおかげで、ただ回復しただけでなく、力が引き出されている状態となっていた。『竜の霊薬』は、魂のダメージすら回復する効果があった。


「もう一度、おばさんの魔力を追跡して、像を浮かび上がらせる事はできるか?」


「この地下室、外から探知されないためなんだろうけど、魔力の感知がし難いのよ……。でも、やってみるね……」


 グライフは少し離れて見守る。グレースは両手で水晶を持ち、天に捧げるように掲げた後、胸元に近付け、目を閉じて念じる。不思議とグレースの周囲に吹き上がるような風が巻き起こり、グレースのローブがはためく。


「ハリの水晶よ……我が眼と成り代わりて、求めに応じなさい……」


 ギイイィィィイイン……‼ と、機械音のような音がグレースの頭の中で鳴り響いた。


 そして、「バンッ」と、グレースの視界ではハッキリと映像が見え始めた。


    ○    ○    ○


 数分前。イルヤルンと対峙したファムは叫んだ。


「てめぇら! 一体、どこのモンだ⁉ 何の目的だ⁉」


「フフフフフ……威勢が良いお嬢さんだ……」


「……おじょっ。嬉しくねぇぞコノ野郎‼ あたしはもうおばさんだよ!」


「ほぉ……そうですか。しかし人間の寿命は短く、我々よりずっと若いはず……」


 2人は高速で走りながら、お互いの隙を伺って回り込もうとしている。


 イルヤルンが『死神の鎌』を薙ぎ払うと、魔力刃『マギア・ラミーナ』の斬撃が飛ぶ。ファムは防御結界魔法の効果を付与したレイピアでそれを弾き飛ばした。


「ほ~。魔法剣士か……中々やる。……ですが、これはどうです?」


 イルヤルンは無詠唱で旋風魔法『ヴァルテージ』を発動した。ファムの身体が浮き上がるように吹き飛ばされ、バランスを崩す。しかし旋風魔法は風を巻き起こすだけの魔法で、それ自体に攻撃力はない。


「風を起こしたって……‼ イクレア!」


 ファムは身体が浮き上がりながらも、電撃魔法で撃ち返す。「パキィイィン!」とガラスが割れるような音が鳴り響き、空気を切り裂く〈青白い電光〉が放たれた。


 しかしファムは旋風魔法の恐ろしさを知っている。この魔法の真価は、他の魔法と組み合わせた複合魔法として発動した時だ。


「エルド・ヴォルン!」


 ファムは火炎魔法と組み合わさった火炎旋風を警戒し、防火魔法で身を護った。水色に輝く光が、ファムを包み込む。さらに、氷結魔法による『氷の鎧』を身に纏っている。


 しかしイルヤルンの狙いは違った。


 イルヤルンは『死神の鎌』を激しく回転させ、猛烈な速さで振り回した。


「マギア・ラミーナ・ヴァルテージ!」


 イルヤルンは刃旋風魔法を発動した。『死神の鎌』で発生した斬撃のエネルギーが旋風と混ざり合い、斬撃の旋風となってファムを巻き込む。


 ザン! ズバ! ズバズバズバズバ! ザンザンザンザザン‼


 数百の斬撃がファムを斬りつける。『氷の鎧』が徐々に削られ、肉体が削がれ始めた。


「うぐあぁあああああぁぁー‼」


 ファムは防御シールド魔法『アミナ・エスクード』と防御結界魔法『アミナ・バリエラ』で身を護ったが、数百の斬撃を全て捌き切る事は不可能だった。


 ズバズバズバズバ……斬斬斬斬斬斬‼ ……ズバッ‼


 左腕が吹っ飛んだ。そして次に右脚、左脚、脇腹、右腕……次々と斬り付けられる。しかし、イルヤルンはなるべく顔を斬りつけずに綺麗に残すようにしていた。


「介錯してあげましょう」


 イルヤルンの『死神の鎌』は2m近い巨大な鎌だが、現時点で圧縮され、小さくなっていた。特殊な構造で、持ち手の太さをさほど変えずに、長さと刃のサイズだけさらに巨大な元のサイズに戻す事ができる。


 ビュンッ‼ 風を切り裂く音が鳴り、約8mはあろうかという巨大過ぎる大鎌がファムの首を真一文字に切断した。


    ○    ○    ○


「嫌ッ‼ イヤァアアアアアアアァァ‼」


 過去の出来事を目の当たりにしたグレースは叫んだ。


「ど、どうした……どうしたんだグレース⁉」


「……お、おばさんが……ファムおばさんが……」


 ゴンッ! ギィンッ‼


 その時、地下室の扉を破壊しようとする音が鳴り響いた。


    ▽    ▽    ▽


 地上では建物が全て破壊され跡形も無くなり、ビュノーゾとイルヤルン、そして手下の魔界人達で地下室の入口を取り囲んでいるが、突破できず、ビュノーゾは苛立っていた。


「かってぇな……中々頑丈じゃあねぇか! ……クソ! こんな時にヴィアはどこ行きやがった⁉」


 イルヤルンは意識を集中させ、村全体に感知範囲を広げる。


「先程、魔力が爆ぜるような感覚がありましたが、複数の魔力が混在して、ハッキリと感知できませんでした」


 ダリアの噴石封印魔法『ペトラ・エクリクシ・スフライダ』は、魔力感知を妨げる効果も発揮していた。魔界人達はヴィアの行方を探せなくなっている。


    ○    ○    ○


 パラパラパラ……と、石造りの地下室の天井から小石が落ちてきた。かなり地下深いため、外部の衝撃で崩れる事はそうそうないが、グライフとグレースは、地下室に続く階段、そして天井を見上げ、蒼褪めて身震いした。寒気がするが、冷や汗をかいている。


 グライフは震慄し、思わずグレースを護るように抱き締めた。グレースも同時に震えていたため、グライフの震えには気付かなかった。再び、グレースが所持する『魔神器アーティファクト:ハリの水晶』で外の様子を映し出して見る事にした。


    ▽    ▽    ▽


「ビュノーゾさん! ガゼンベルさんの『悪鬼の戦斧』をお持ちしました!」


 2人の魔界人がヴィアが投げ飛ばした『悪鬼の戦斧』を拾い、2人がかりで持ち運んで来た。『悪鬼の戦斧』は人間は弾くが、魔界人なら触れる事ができる。


「おう。こいつがありゃ、何とかなりそうだな……。誰か、こいつをぶん回せる力のある奴はいねぇのか?」


 誰も反応しない。『悪鬼の戦斧』は非常に重いため、使い手は限られる。


「……クソ。『漆黒の魔縲』さえ無けりゃ、吾輩にも使えるんだがな……。仕方ねぇ。ミノタウロスが来るまで待つか……」


 その時、「ビュッ!」と風を切る音がした。


 魔力が籠められてほのかに煌々とした矢が、魔界人の1人の頭を貫いた。

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次回:2025年05月05日 12時10分

EP.32 希望(逢魔の聖騎士編⑥)

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