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EP.21 命運

妄想主題歌(右クリック→移動 または、コピペでお願いします)

https://youtu.be/OahpETEBXxc


 岩塊の外側にいたキーラ、スティアン、ハンナは目を見開いて驚愕しながらも、冷静に退避行動に出た。


 圧縮された岩塊が浮かび上がったのは、圧縮魔法が発動した一瞬だけだ。自然落下で幾百もの小さな岩がシャワーのように降り注いでくる。


 だが、この程度の質量と落下速度なら、防御シールド魔法と防壁魔法で跳ね返せる。




 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……




 ジゼル、ロジェリオ、グライフ、ロコ、ソボルの5人は、倒れた仲間を岩のシャワーから護り切り、閉じ込められた岩塊からの脱出に成功した。


「よっしゃあぁあああああぁ! オレには出来る‼ 出来るんだァーッ‼」


 ジゼルは天を仰いで自己満足し、大いに喜び、上機嫌だ。


 ジゼルは圧縮魔法の上位魔法である拡縮魔法『マススハール』も使えるが、マススハールに関しては、まだ十分に使い熟しているとは言い難い。だが、上位魔法が使えるという事は、通常の圧縮魔法の熟練度は相当高まっていたという事であった。


「よーくやった! ジゼル‼」


 ロジェリオがジゼルの頭をぐしゃぐしゃっと撫で、肩を抱き寄せた。


 ジゼルは「へっへ~ん……」と、満更でもない様子だ。


「ジゼルさ~ん‼」「凄いッ! 凄いですよーっ!」


 ハンナとスティアンがジゼルに近付き、称賛した。キーラも一緒に喜び合った。


 その様子を見てグライフは「フゥッ……」と息を吐き、ホッとした表情で座り込んだ。


 ロコも重たい身体を勢い良く「ドカッ」と地面に尻をついて後ろに倒れ込んだ。


「……この圧縮された岩塊はどうするんだ?」


「……確かに。どうなるんだろうな……」


 ロコが疑問を投げかけ、グライフが応えた。


「圧縮魔法は、基本的に解除魔法を使うまで、圧縮され続けるもんだよな……。自然に効力を失う事はない……はずだよな……。効果は半永久的なのか……?」


「……そう言えば、疑問に思った事なかったな……」


 ロコとグライフは単純に不思議に思った。そこにロジェリオが近付いて来た。


「圧縮魔法は、半永久的に効果が続く。だが、人がきちんと管理をすればだ。自然に放置された物体は、『魔霊素子エレメント』の影響を受けて、徐々に元の大きさに戻っていく。だが、数百年もして突然堰を切ったように圧縮が解除されて、いきなり巨大化して大事故が起きた事もあるから、注意せねばならない。巨大化と言っても元の大きさに戻っただけだがな」


 さすがに大人で聖騎士団の副隊長・教官を務めるだけあり、ロジェリオは博識だ。


 ロコとグライフは「ほぉ~ん」と言った顔で「ふんふん」と頷いた。


「あ~、知ってるぜ。あの有名な事故だろ? その事故起こしたの、うちの祖先だ」


 ジゼルが唐突に暴露した。


「お前んちかよっ!」


 ロコがつっこみ、ドッと笑いが起きた。皆、安心し切っていた。彼らは喜びの余り、ドス黒い液状の塊が幾つか点在していた事に気付いていなかった。


「……お、おい! あ、あんたら! 助けてくれぇえい‼」


 突如、茶髭のビョルンというドワーフが近付いて来た。


「こっちじゃ! 彼がワシらを吹っ飛ばして、崩落した岩から助けてくれたんじゃ! ワシもさっきまで気絶して倒れておったから、呼ぶのが遅くなっちまった」 


 ビョルンは、急ぎ足でロジェリオ達を数十m先に誘導した。


 大きな岩塊がある。


 そこには、岩に両脚を圧し潰されたマイルズが倒れていた。まだ息がある。


「……かっ……ガハッ……お、お前ら……ぶ、無事……だった……か……」


 マイルズは虚ろな目で、口から吐血しながら声を振り絞った。


 ジゼルをはじめ、ロジェリオ達も一気に血の気が引いた。


「マ、マイルズーッ‼」


 ジゼルがマイルズの下へ駆け寄って、岩塊を圧縮して弾き飛ばした。


 弾き飛ばされ、「ガコンッ!」と砕けた岩塊は、数m先で圧縮が解除され、元の大きさに戻って散らばった。圧縮された物が破壊されれば、元の大きさに戻るのだ。


「マ、マイルズ……だ、誰か! 回復魔法を……‼」


 真っ先にハンナとキーラがマイルズの下へ向かい、続いてスティアンとロジェリオも集まって、4人で一気に回復魔法をかけた。


「回復魔法だけでは、失った血を取り戻すのに時間がかかり過ぎる……」


 ロジェリオが呟いた。


「くっ……オレが霊薬エリクサーを飲み干さなければ……‼」


 ジゼルは悔やんだ。


「……し、しかし、ジゼルさんが飲まなければ、皆さん助かりませんでしたよ!」


「そうだ。お前はよくやってくれた……。ここは俺達に任せろ‼」


 キーラとロジェリオがジゼルを慰めた。


 ジゼルはボロボロと涙を溢し、顔を手で覆い「うわぁあああ……」と、号泣した。


 ロコがジゼルの肩に手を置き、慰めた。


 突如、ジゼルは「ハッ‼」と気付いた。


「……ハ、ハーディーは……? ハーディーを探しに行かないと……‼」


 ジゼルが唐突にそう言い、グライフとロコが同調した。


「……あいつが死ぬとは思えんが、俺も行こう」


「俺も手伝うぜ。ディナードの野郎も心配だ」


 グライフが「ハッ」とした顔をした。


「……ジゼル……その前に、崩落した岩塊の全てを一度圧縮して、どかそう」


「……わ、わかった……」


 ジゼルもグライフが言いたい事を何となく察した。


 マイルズのように岩塊に圧し潰された人々がまだいるかも知れないという事だ。 


    *    *    *


 ジゼル達は、先程まで居た岩塊に閉じ込められた場所に戻って来た。


 圧縮して弾き飛ばした小岩が転がっているが、圧縮すると密度が上がるため、少し頑丈になる。そのため、先程小岩になって落下してきた岩塊は、砕けずに残っていた。


 とは言え、砕けた時に元の大きさに唐突に戻ると危険なので、後ほど、安全を確認しながら圧縮を解除する事にして、なるべく一箇所に集める事にした。


 無数の小岩が落ちていて、どれが圧縮された岩なのかわかり難いが、ジゼルには自分自身の圧縮魔法で圧縮された岩がどれか、魔力の痕跡で見分ける事ができる。


 非常に細かい小石のような岩は、解除魔法『レドーモ』を放射的に放つ事で、一気に元に戻す事ができるはずだ。


 まだ圧縮せずに残っていた岩塊に圧縮魔法をかけて小さくし、見たくはないが、下で誰か圧し潰されていないか確認していく。


 力のあるグライフとロコは、ある程度の大きさの岩であれば、そのまま持ち上げる事ができた。ジゼルも電磁魔法で持ち上げる事はできるが、圧縮した方が効率が良い。


 ジゼル達が辺りを見渡すと、岩塊が落ちたであろう場所に、ドス黒い液状の塊が幾つか点在していた。


「こ……これは……」


 さらによく見ると、硬い鎧の破片や、毛の塊がある。岩塊に圧し潰されたドワーフだった。血溜まりに土が混じり、ドス黒い泥の塊のようになっていたのだ。


 ジゼル、グライフ、ロコは蒼褪め、冷や汗をかき始めた。


「……ど、どれほどの犠牲者がいるんだ……?」


 絶望的な表情でロコが呟いた。


「うぷっ……」


 ジゼルは気分が悪くなり、口を押さえて崖の縁まで行き、嘔吐した。


 偶然、崖の下に何人か倒れているのが見えた。わずかに動いていて、まだ生きている人間もいるようだ。耳を澄ますと、わずかに呻き声が聴こえる。


 そこにディナードらしき聖騎士が倒れているように見えた。


「あれは……ディナード? ……だ、誰かっ! 回復魔法が得意な者はいないかっ⁉」


 ジゼルは振り向いて叫んだ。


「お~いっ!」


 北の崖に居たミロの声だ。同じく北の崖側に居た数名の見習い聖騎士達と断崖絶壁の谷底に回って、川中の岩場を通って南の崖まで戻って来たのだ。その場の上空には浮遊岩が点在していたが、そこを跳び回るのは危険が伴うため、避けた。


 ジゼルは「ミロ!」と驚いた表情で叫んだ。


 ミロの後ろに、1人のドワーフが付いて来ている。ブロックルだ。


 ブロックルの表情は硬い。皆を護るためにやった事だが、自分が発射した電磁砲ライルヴォルがドワーフの谷に大損害を与えた事に絶望的な思いだった。


 ブロックルとしてはこちら側に来たくもなかったが、逃げるわけにもいかなかったし、〈護るために撃った〉という状況を把握していたミロに説得されたのだ。


「グライフ、ロコ! お前らは先に崖の下で倒れている人達を助けに行ってくれ!」


 ジゼルは急いでミロが居る方に向かって駆け出した。


 グライフとロコは頷いて、崖下に滑り降りて行った。


「ジゼル! 良かった。無事で……」


「ミロ! ハーディーがどうなったか知らないか⁉」


「ぼ、僕達は、反対側の崖から全て見ていたんだ。……ハーディーは爆風に巻き込まれて、東側に吹っ飛ばされて、川に落ちてしまったんだ」


 ジゼルは「東か!」と言って、直ぐに駆け出しそうになった。


「待って! 後ろにいるよ!」


「えっ⁉」


 なんと、ハーディーは後方で仲間の見習い聖騎士2人に支えられているではないか。


 ミロ達が谷底に回り込んだ時、川中の岩場に引っ掛かっていたハーディーを偶然発見し、救い出した。ハーディーは爆風に吹き飛ばされた後、上空で浮遊岩に激突し、川中の岩場に落下してしまったのだ。


「……よ、よぉ……」


 ハーディーは激しいダメージを受けながらも、無事だった。


 肉体を強化する魔霊気の強さに加え、風属性が得意なため落下速度を落としてダメージを最小限にできたのだ。


 ジゼルは駆け出して、ハーディーに近寄った。


「えっ?」


 そして、ジゼルは思い切りハーディーに抱きついた。


「良かった……無事で……」


 ハーディーはぶん殴られる事も覚悟していた。


「……は? ……な、何だよ……お前らしくねぇな……」


 ハーディーは照れながらも、満更でもない表情を見せた。ジゼルの意外と大きな胸の感触が伝わり、ほのかにいい匂いがした。


「……そ、そうだ。それより、向こうでディナードが……」


 ジゼルは大粒の涙を指先で拭い、ミロに近寄った。


「ミロは、回復魔法が得意だったよな⁉ 急いで付いて来てくれ!」


 そしてジゼルは振り向き、「ハーディー、お前は急がなくて良い!」と言った。


 ジゼルはミロを連れ、急ぎディナードが転落した場所へと誘導した。


    *    *    *


 ディナードは虚ろな目で、虚空を見つめているかのようだった。


 頭部に岩が直撃したのか、陥没して大量出血していた。胸部も陥没し、肋骨が飛び出ている。岩塊が直撃して、崖下に転落したのだ。


 ディナードは既に息絶えていた。


「……うっ……うぅ……ディ、ディナード……ディナードよぉ……共に聖騎士になろうって意気込んでたじゃねぇか……‼」


 ロコは地面に手をつき、震えた声でディナードの名を繰り返し呼び、地面を殴った。


 その様子を、グライフが絶望的な表情で見つめていた。

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次回:2025年05月04日 15時20分

EP.22 断罪



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