EP.20 真価の発揮
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https://youtu.be/OahpETEBXxc
崩落した岩崖の岩塊に生き埋めにされた見習い聖騎士団とドワーフの集団の一部は、防御シールドの重層的な展開もあり、強力な魔法のドームを形成して、積み重なった岩塊の狭間に閉じ込められている状況だった。岩塊の隙間から、僅かに光が注ぎ込んでいるが、中は暗い。
聖騎士達は暗視魔法『ナハト・ジヒト』を使って視界を確保した。
「……うぐっ……お、お前ら……生きてるか……⁉」
ロジェリオの声が響いた。魔法の防御シールドを展開しながら、ロジェリオは両腕で支えるような姿勢で、積み重なった岩塊がこれ以上崩落しないように支えている。
「……な、何とか……」
レベルが高いロジェリオを中心に、肉体が強靭なグライフとロコが防御シールドと魔霊気を全開にして、何とか岩崩れを防ぎながら内側からドームを支えている。
女性のジゼルも、筋力的なパワーではなく、得意の電磁魔法『エレクトロ』の反発力を利用して岩塊を支えていた。
「……や、やるじゃねぇかテメェ……ジゼル」
「……お、お前こそな……ロコ……」
ひと悶着あったロコとジゼルがお互いを認めるように言い合った。
聖騎士団では、強力な攻撃を集団で防御する〈集合防御魔法〉や〈集合防御結界魔法〉が存在する。崩落直後、最もレベルと星級が高いロジェリオの魔法の防御シールドを頂点に、集団で三角形の屋根を作るように防御シールドを展開する〈集合防御魔法〉を発動したのだが、中央の頂点が圧力で圧し潰され、結果的にドーム状となった。
現状、そのドームも潰されかけている。ロジェリオ達の足下では、何人かは魔力が尽きたり岩の破片が直撃したため、気絶して倒れている。
その上、魔法のドームに入れなかった者達がいた可能性が高く、何人もそのままぺちゃんこに潰されてしまったかも知れない。
「……あ、あんたら……悪いな……しかし、ワシらにはどうする事もできやしねぇ……」
ドーム内に数名いるドワーフの1人が、座り込みながら言った。
「し、しかし、このままじゃドームが潰れそうですぅ……」
直接的に支えはしていないものの、ロジェリオ達をサポートするように魔法を発動し続けているソボルが弱音を吐いた。
「……はっ⁉ ……マ、マイルズ! マイルズはいるか⁉」
ジゼルが問い掛けたが、応答がない。ジゼルはさらに続ける。
「おい! ハーディー‼ おい! どこにいる⁉」
「……あいつなら、さっき1人で火竜に特攻してぶっ飛んでたろ……」
グライフが指摘した。ジゼルは少し蒼褪めている。
「……こ、このままじゃ埒が明かん……。一点突破するしかねぇぞ……」
ロジェリオがそう提案し、ロコが「な、何か良い案でも?」と聞いた。
「……圧縮魔法だ。俺は得意ではないが……」
ロジェリオはそう言って、ジゼルに視線を向けた。
「オ、オレ⁉」
「……し、しかし、ジゼルの支えを無くしたら、一気に崩れる可能性も……」
ソボルがそう指摘したが、ロジェリオはニヤリとした。
「あぁ……そうかもな……。だが、それしかねぇ……ジゼル‼ お前は圧縮魔法が得意なはずだ! この積み重なった岩塊は、大きなひと塊になっていると言える! 上手くいけば、一気に圧縮効果が伝播して、岩の大部分を小さくできるんじゃあねぇか?」
「……え? ……し、しかし、何でもかんでも圧縮できるわけじゃ……」
ジゼルはほんの数秒間沈黙して、冷や汗をかきながら息を呑んだ。
ジゼルの魔力は尽きかけ、疲労困憊だった。そのため、心の内では「こんな大質量の物体を圧縮できるだろうか……?」と、〈自信〉も喪失しかけていた。
「……い、いや……しかし、やってみる価値はあるかも……で、でも、もう魔力が……」
ジゼルは一瞬、脱力しかけて、再び「ふぬっ!」と踏ん張った。
「誰か~! そこにいますか⁉」
その時、岩の隙間から、岩塊の外にいた14歳の少女・ハンナの声が聞こえてきた。
「ハンナか!」
ジゼルは希望を見出したように、僅かに光が注ぎ込む岩塊の隙間に目をやった。
崩落した岩塊が積み重なってできた山の外側で、ハンナとキーラを中心に数名が生き埋めになった仲間の捜索をしている。
「ジゼルさんっ⁉ 中にいるの⁉」
岩塊の外側からハンナが問い掛けた。
「ハンナ~っ! もう魔力が尽きそうなんだーっ! 魔霊薬を持って来てくれーっ‼」
岩塊の内側から、必死に大声を出すジゼルの声が響いた。
「そ、それなら、ここに霊薬があります‼」
岩塊の内側から「ナーイスッ!」とジゼルの叫び声が聴こえた。
しかし岩塊の隙間は小さく、入り組んでいて先が見えない。
「……で、でも……、ど、どうやって届ければ……⁉」
ハンナはどうすれば良いかわからず、あたふたと右往左往した。
「ぼ、僕に任せて下さいっ!」
「スティアン君‼」
破壊された吊り橋から落ちかけていた眼鏡の少年・スティアンが、垂れ下がった吊り橋をよじ登ってここまでやって来たのだった。
「あまり強い力ではないですが、操作魔法が使えます!」
「操作魔法……で、でも、岩の隙間に落っこちて探し出せなくなったら……」
ハンナが心配そうに言った。
キーラも「確かにそうだわ……」と深刻な顔をして、どうするべきか考えた。
「……水! 水を先に流しましょう! その水の流れを辿って操作魔法で進めるのはどうでしょうか⁉」
スティアンが提案をしたが、キーラは消極的だ。
「で、でも、水は亀裂のような隙間からでも流れていきますよ……。霊薬がどこかに引っ掛かって取り出せなくなる可能性もあるし、最悪、小瓶が割れたら……」
「おーいっ⁉ まだか~っ⁉ こっちはもう魔力尽きかけてんだよーっ‼」
再び岩塊の内側からジゼルの声が響いた。
「残りの火竜はどうなったんだーっ⁉」
「あっ! か、火竜は、先程の一撃に恐れをなして、離散して逃げて行きました~!」
外の様子がわからないジゼルの質問に、キーラが答えた。
「そうかーっ! 良かったー‼ とりあえず、早くしてくれ~!」
スティアンは「やってみるしかないですよ……‼」と懇願するように言った。
「わかりました! ……それなら、ロープに括りつけて、蛇のように這わせて通しましょう! それなら引っかかっても引き抜けそうですし」
キーラは崖で使用するための降下用のロープをポーチから取り出した。ロープは圧縮魔法で圧縮された状態で巻かれて収納されていた。
圧縮を解除して伸ばせば数十mほどの長さで、それなりに太さもある強靭なロープだが、霊薬の小瓶を括りつけるため、圧縮を解除せずに使用する。圧縮状態でも長さは15~20mほどあり、むしろ密度が高まるため、強靭だ。
素早くハンナが持っていた霊薬の小瓶に括り付け、念を入れて拘束魔法『コンストレン』でしっかり固定し、水筒の水を流して、岩塊の底に流れる水の通り道に、ロープ付きの霊薬の小瓶を入れた。
「な、何か、水が流れてきたんだけどっ⁉」
ジゼルの声が聞こえたので、キーラが手法を説明をして納得させた。
* * *
スティアンが霊薬の小瓶を操作魔法で操作して岩塊の隙間に入れてから、数回の失敗を繰り返していた。
入れては引いて、引いては入れて、別のルートに通す……といった作業の繰り返し。
見えない迷路を、水の流れを頼りに攻略していく難易度が高いゲームのようなものだ。
水の通り道だからと、簡単に霊薬の小瓶が通せるわけではなかった。
何分経過したのか、岩塊の中に閉じ込められていたジゼル達の体力は尽きかけていた。
スティアンは地道な作業の疲れと、焦る気持ちで、大粒の汗を垂れ流している。しばらくして、コトンッと、霊薬の小瓶が地面に落ちたような感覚がした。
「と、通った⁉」
岩塊の内側で、防壁魔法で支えていたソボルの目の前に、ロープに括り付けられた霊薬の小瓶が落ちてきた。水流に乗って来たため、表面が濡れている。
「や……やったぞ!」
防壁魔法は魔力を送り続ければ持続力が上がるが、一度発動すれば一定時間は保持される。物理的に肉体で直接支えているわけではないため、ソボルはある程度自由に動けた。
「おい! 早くそれをジゼルに使え!」
ロジェリオがソボルに命令し、ソボルが霊薬の小瓶を手に取った。
ここでソボルに気の迷いが出た。
「……ほ、本当に、ジゼルに飲ませたら僕等は助かるのか……? こ、ここで僕が飲めば、僕だけは生き残れる可能性が高まるかも知れない……」
ソボルの心の内に邪念が芽生え、頭の中でそう考えていた。
「ソボル‼ 早くしろ‼」
グライフが一喝した。ソボルは「ハッ⁉」として、霊薬の小瓶の栓を抜き、ジゼルに飲ませた。
「……お前、今……。いや、ありがとう」
ジゼルは何かを察したが、素直に感謝した。
ギュインッ! ギュルルルルルウゥイイイィィンン‼
霊薬を飲み干したジゼルは、全快どころか、一瞬でレベルアップしたような錯覚を覚えた。身体中にパワーが漲る。
ジゼルは喪失しかけていた〈自信〉を取り戻し、ニヤリとほくそ笑んだ。
「今ならイケる! オレには出来るッ‼」
魔霊気が可視化するほどジゼルの魔力が溢れ出し、黄金色に輝きを放った。
「……圧縮魔法……! コンプレッサオ‼」
ドッギャアァアァアァァァァァンッ‼
ガコンッ! ガコガコガコガコガコォオォンッ‼
崩れた岩塊が、連鎖反応を起こすように次々と数十cm程度に圧縮され、空中に幾つもの小岩=圧縮された岩塊が浮かび上がった。
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次回:2025年05月04日 13時10分
EP.21 命運




