表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/83

EP.20 真価の発揮

妄想主題歌(右クリック→移動 または、コピペでお願いします)

https://youtu.be/OahpETEBXxc


 崩落した岩崖の岩塊に生き埋めにされた見習い聖騎士団とドワーフの集団の一部は、防御シールドの重層的な展開もあり、強力な魔法のドームを形成して、積み重なった岩塊の狭間に閉じ込められている状況だった。岩塊の隙間から、僅かに光が注ぎ込んでいるが、中は暗い。


 聖騎士達は暗視魔法『ナハト・ジヒト』を使って視界を確保した。


「……うぐっ……お、お前ら……生きてるか……⁉」


 ロジェリオの声が響いた。魔法の防御シールドを展開しながら、ロジェリオは両腕で支えるような姿勢で、積み重なった岩塊がこれ以上崩落しないように支えている。


「……な、何とか……」


 レベルが高いロジェリオを中心に、肉体が強靭なグライフとロコが防御シールドと魔霊気を全開にして、何とか岩崩れを防ぎながら内側からドームを支えている。


 女性のジゼルも、筋力的なパワーではなく、得意の電磁魔法『エレクトロ』の反発力を利用して岩塊を支えていた。


「……や、やるじゃねぇかテメェ……ジゼル」


「……お、お前こそな……ロコ……」


 ひと悶着あったロコとジゼルがお互いを認めるように言い合った。


 聖騎士団では、強力な攻撃を集団で防御する〈集合防御魔法〉や〈集合防御結界魔法〉が存在する。崩落直後、最もレベルと星級が高いロジェリオの魔法の防御シールドを頂点に、集団で三角形の屋根を作るように防御シールドを展開する〈集合防御魔法〉を発動したのだが、中央の頂点が圧力で圧し潰され、結果的にドーム状となった。


 現状、そのドームも潰されかけている。ロジェリオ達の足下では、何人かは魔力が尽きたり岩の破片が直撃したため、気絶して倒れている。


 その上、魔法のドームに入れなかった者達がいた可能性が高く、何人もそのままぺちゃんこに潰されてしまったかも知れない。


「……あ、あんたら……悪いな……しかし、ワシらにはどうする事もできやしねぇ……」


 ドーム内に数名いるドワーフの1人が、座り込みながら言った。


「し、しかし、このままじゃドームが潰れそうですぅ……」


 直接的に支えはしていないものの、ロジェリオ達をサポートするように魔法を発動し続けているソボルが弱音を吐いた。


「……はっ⁉ ……マ、マイルズ! マイルズはいるか⁉」


 ジゼルが問い掛けたが、応答がない。ジゼルはさらに続ける。


「おい! ハーディー‼ おい! どこにいる⁉」


「……あいつなら、さっき1人で火竜に特攻してぶっ飛んでたろ……」


 グライフが指摘した。ジゼルは少し蒼褪めている。


「……こ、このままじゃ埒が明かん……。一点突破するしかねぇぞ……」


 ロジェリオがそう提案し、ロコが「な、何か良い案でも?」と聞いた。


「……圧縮魔法だ。俺は得意ではないが……」


 ロジェリオはそう言って、ジゼルに視線を向けた。


「オ、オレ⁉」


「……し、しかし、ジゼルの支えを無くしたら、一気に崩れる可能性も……」


 ソボルがそう指摘したが、ロジェリオはニヤリとした。


「あぁ……そうかもな……。だが、それしかねぇ……ジゼル‼ お前は圧縮魔法が得意なはずだ! この積み重なった岩塊は、大きなひと塊になっていると言える! 上手くいけば、一気に圧縮効果が伝播して、岩の大部分を小さくできるんじゃあねぇか?」


「……え? ……し、しかし、何でもかんでも圧縮できるわけじゃ……」


 ジゼルはほんの数秒間沈黙して、冷や汗をかきながら息を呑んだ。


 ジゼルの魔力は尽きかけ、疲労困憊だった。そのため、心の内では「こんな大質量の物体を圧縮できるだろうか……?」と、〈自信〉も喪失しかけていた。


「……い、いや……しかし、やってみる価値はあるかも……で、でも、もう魔力が……」


 ジゼルは一瞬、脱力しかけて、再び「ふぬっ!」と踏ん張った。


「誰か~! そこにいますか⁉」


 その時、岩の隙間から、岩塊の外にいた14歳の少女・ハンナの声が聞こえてきた。


「ハンナか!」


 ジゼルは希望を見出したように、僅かに光が注ぎ込む岩塊の隙間に目をやった。




 崩落した岩塊が積み重なってできた山の外側で、ハンナとキーラを中心に数名が生き埋めになった仲間の捜索をしている。


「ジゼルさんっ⁉ 中にいるの⁉」


 岩塊の外側からハンナが問い掛けた。


「ハンナ~っ! もう魔力が尽きそうなんだーっ! 魔霊薬を持って来てくれーっ‼」


 岩塊の内側から、必死に大声を出すジゼルの声が響いた。


「そ、それなら、ここに霊薬エリクサーがあります‼」


 岩塊の内側から「ナーイスッ!」とジゼルの叫び声が聴こえた。


 しかし岩塊の隙間は小さく、入り組んでいて先が見えない。


「……で、でも……、ど、どうやって届ければ……⁉」


 ハンナはどうすれば良いかわからず、あたふたと右往左往した。 


「ぼ、僕に任せて下さいっ!」


「スティアン君‼」


 破壊された吊り橋から落ちかけていた眼鏡の少年・スティアンが、垂れ下がった吊り橋をよじ登ってここまでやって来たのだった。


「あまり強い力ではないですが、操作魔法が使えます!」


「操作魔法……で、でも、岩の隙間に落っこちて探し出せなくなったら……」


 ハンナが心配そうに言った。


 キーラも「確かにそうだわ……」と深刻な顔をして、どうするべきか考えた。


「……水! 水を先に流しましょう! その水の流れを辿って操作魔法で進めるのはどうでしょうか⁉」


 スティアンが提案をしたが、キーラは消極的だ。


「で、でも、水は亀裂のような隙間からでも流れていきますよ……。霊薬エリクサーがどこかに引っ掛かって取り出せなくなる可能性もあるし、最悪、小瓶が割れたら……」


「おーいっ⁉ まだか~っ⁉ こっちはもう魔力尽きかけてんだよーっ‼」


 再び岩塊の内側からジゼルの声が響いた。


「残りの火竜はどうなったんだーっ⁉」


「あっ! か、火竜は、先程の一撃に恐れをなして、離散して逃げて行きました~!」


 外の様子がわからないジゼルの質問に、キーラが答えた。


「そうかーっ! 良かったー‼ とりあえず、早くしてくれ~!」


 スティアンは「やってみるしかないですよ……‼」と懇願するように言った。


「わかりました! ……それなら、ロープに括りつけて、蛇のように這わせて通しましょう! それなら引っかかっても引き抜けそうですし」


 キーラは崖で使用するための降下用のロープをポーチから取り出した。ロープは圧縮魔法で圧縮された状態で巻かれて収納されていた。


 圧縮を解除して伸ばせば数十mほどの長さで、それなりに太さもある強靭なロープだが、霊薬エリクサーの小瓶を括りつけるため、圧縮を解除せずに使用する。圧縮状態でも長さは15~20mほどあり、むしろ密度が高まるため、強靭だ。


 素早くハンナが持っていた霊薬エリクサーの小瓶に括り付け、念を入れて拘束魔法『コンストレン』でしっかり固定し、水筒の水を流して、岩塊の底に流れる水の通り道に、ロープ付きの霊薬エリクサーの小瓶を入れた。


「な、何か、水が流れてきたんだけどっ⁉」


 ジゼルの声が聞こえたので、キーラが手法を説明をして納得させた。


    *    *    *


 スティアンが霊薬エリクサーの小瓶を操作魔法で操作して岩塊の隙間に入れてから、数回の失敗を繰り返していた。


 入れては引いて、引いては入れて、別のルートに通す……といった作業の繰り返し。


 見えない迷路を、水の流れを頼りに攻略していく難易度が高いゲームのようなものだ。


 水の通り道だからと、簡単に霊薬エリクサーの小瓶が通せるわけではなかった。


 何分経過したのか、岩塊の中に閉じ込められていたジゼル達の体力は尽きかけていた。


 スティアンは地道な作業の疲れと、焦る気持ちで、大粒の汗を垂れ流している。しばらくして、コトンッと、霊薬エリクサーの小瓶が地面に落ちたような感覚がした。


「と、通った⁉」




 岩塊の内側で、防壁魔法で支えていたソボルの目の前に、ロープに括り付けられた霊薬エリクサーの小瓶が落ちてきた。水流に乗って来たため、表面が濡れている。


「や……やったぞ!」


 防壁魔法は魔力を送り続ければ持続力が上がるが、一度発動すれば一定時間は保持される。物理的に肉体で直接支えているわけではないため、ソボルはある程度自由に動けた。


「おい! 早くそれをジゼルに使え!」


 ロジェリオがソボルに命令し、ソボルが霊薬エリクサーの小瓶を手に取った。


 ここでソボルに気の迷いが出た。


「……ほ、本当に、ジゼルに飲ませたら僕等は助かるのか……? こ、ここで僕が飲めば、僕だけは生き残れる可能性が高まるかも知れない……」


 ソボルの心の内に邪念が芽生え、頭の中でそう考えていた。


「ソボル‼ 早くしろ‼」


 グライフが一喝した。ソボルは「ハッ⁉」として、霊薬エリクサーの小瓶の栓を抜き、ジゼルに飲ませた。


「……お前、今……。いや、ありがとう」


 ジゼルは何かを察したが、素直に感謝した。


 ギュインッ! ギュルルルルルウゥイイイィィンン‼


 霊薬エリクサーを飲み干したジゼルは、全快どころか、一瞬でレベルアップしたような錯覚を覚えた。身体中にパワーが漲る。


 ジゼルは喪失しかけていた〈自信〉を取り戻し、ニヤリとほくそ笑んだ。


「今ならイケる! オレには出来るッ‼」


 魔霊気が可視化するほどジゼルの魔力が溢れ出し、黄金色に輝きを放った。


「……圧縮魔法……! コンプレッサオ‼」




 ドッギャアァアァアァァァァァンッ‼




 ガコンッ! ガコガコガコガコガコォオォンッ‼


 崩れた岩塊が、連鎖反応を起こすように次々と数十cm程度に圧縮され、空中に幾つもの小岩=圧縮された岩塊が浮かび上がった。

【いいね】【ブックマーク追加】【お気に入り登録】をお願いします☆


次回:2025年05月04日 13時10分

EP.21 命運

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ