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Fairy song  作者: 時雨青葉
第10歩目 眩暈
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空を切る手


「あ……」



 何度もまばたきを繰り返し、シュルクは後ろを振り向く。



「いくら柵があるからって、そんなに近付いたら危ないって。ってか、オレよりも先に行くなって言ったじゃん! 気付いたらいないんだもん。ビビったんだからな!!」



「ああ、悪い……」



 (なか)ば茫然としたシュルクが呟くと、ルーウェルはほっと安堵の息を漏らしながらシュルクを離した。



 その隣で。



「うわぁ、すごいね。」



 フィオリアが穴の中の様子を見て、頬を紅潮させた。



「でも……なんか、他のと色が違う?」



 手に持つライトマイトの欠片(かけら)と穴の中の結晶を見比べて、不思議そうに首を(ひね)るフィオリア。



「そうなんだよ。この色の違いが濃度の違いなのか、純度の違いなのか、それとも結晶化する成分の違いなのか…。調べたくても、この中は危なすぎて、さすがに入れないからさ…。……って、違う違う。」



 残念そうに(うな)っていたルーウェルは、ふと目を見開いて首を左右に振る。



「来て早々悪いけど、すぐに下まで戻ろう。風の動きが変だ。さっき他の奴らにもそう言っといたから、後はオレらだけのはず。」



 風上の方向を仰ぎ、ルーウェルは警戒心を滲ませて目を細める。



 風の動きがおかしいのは、おそらくは自分がここに来た影響なのだが……



「分かった。」



 シュルクはあえて、そのことを伏せて頷いた。



「もういいの?」

「ああ。見るもんは見たし、今のところは問題ない。」



 訊ねてきたフィオリアに告げると、彼女は特に言い募ることはしなかった。

 どうやら、今回は詳しくは言わなくとも状況を察してくれたようだ。



「よし、じゃあ急ごう。」



 ルーウェルが下山しようと、元来た道へと戻る。



 彼に続いたフィオリアの後ろから、自分もついていこうと一歩踏み出したシュルクだったが……





 ―――――違うよ。





 そんな声が聞こえたような気がして。



「え……」



 ぐらりと、体が後ろに傾く。

 気付けば、自分の体は柵の向こう側へと放り出されていた。



「シュルク!!」



 シュルクの声を聞いて振り向いたフィオリアが、顔を真っ青にして叫ぶ。



 背後の出来事が予想外で理性が飛んでしまったのか、フィオリアは勢いよく地を蹴ると、自らも柵の向こうへと身を躍らせた。



「ばっ……馬鹿!」



 シュルクは瞠目する。



 ガスを吸ってしまう前に飛ぼうとしていたのに、こいつは何を考えているんだ。



 上昇しようとはためかせていた羽の力を少し緩め、飛び込んできたフィオリアを受け止めようと体勢を整える。



 しかし―――



「うわっ!?」



 突然上空から吹き下ろしてきた強風に目を潰される。

 それと同時に、後ろから力強く体を持ち上げられた。



「きゃっ…」



 闇に染まった世界の中、自分の背後から小さな悲鳴。





 伸ばした手が、空を切る―――





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