気が進まない入山
色んな想いが巡る。
楽しいとか、嬉しいとか。
悲しいとか、悔しいとか、羨ましいとか……
それらの想いを噛み締めるほど、心が深い闇の中へと落ちていくようだった。
いっそのこと熱に負けて、何も感じなくなれば楽だったのに。
それなのに、だるい体と相反するように、頭だけが巡る感情を加速させて、考えることをやめてくれないのだ。
〈大丈夫。あなたは悪くない。〉
毎晩囁かれるリリアの言葉が、脳裏を埋め尽くそうとする。
しかし、自分の中で〝何かが違う〟と訴える気持ちが、リリアの言葉を受け入れることを許さない。
どちらに偏ることもできず、中途半端で地に足がつかない気持ち。
息が苦しくて、気が狂いそうになる。
そんな地獄のような時間に耐え続けること三日。
「………」
シュルクは目の前にそびえる山を、物憂げに見つめていた。
「なあ…」
隣に目を向ける。
「本当に来るのか?」
「もちろん。」
そこにいたフィオリアは、どこかわくわくとした様子で意気込んでいた。
「シュルクが連れてってくれるって約束してくれたから、今日まで我慢したんだもん。」
「お前……遊びじゃねぇんだぞ。」
「分かってるもん。大丈夫。勝手に動いたりしないで、ちゃんと傍にいるから。」
「………」
それはそれで困るんだけど……
そんな本音は口が裂けても言えず、シュルクは複雑な気持ちを飲み込むしかなかった。
フィオリアがもう少し警戒心が強いタイプならよかったのだが、現実は正反対だから頭が痛くなる。
信用できない自分の精神状態に、隙だらけのフィオリア。
取り返しがつかないことが起こらない確証はない。
規制緩和が発表されたことでいつもより人も多いし、ルーウェルも一緒にいる。
他人の存在は、自分の衝動の抑止力になってくれるだろう。
だけど、そんな他人の目をかいくぐってフィオリアの隙をつくくらい簡単で。
やろうと思えば、いつだって―――
「おーい、シュルクー。行こうぜー!!」
絶妙なタイミングで耳朶を打つ、ルーウェルの声。
「分かってるって。」
内心でほっとしながら、歩みを進める。
胸の中に、どす黒い不安を抱えながら―――……




