あふれそうになる気持ち
「お前、ただでさえちゃんと寝れてないんだろ?」
先ほどまでとは違う、気遣わしげな声と言葉。
それに顔を上げると同時に、シュルクの細い手が頭に置かれる。
シュルクの顔は、いつもと同じく不機嫌そう。
だけどなんとなく、今の彼は表情どおりの気分じゃないように見えた。
「何度も言ってるけど、肝心な時になって倒れられても迷惑なんだから、ちゃんとここで休んでろ。お前が勝手に動いてたから何も言わなかったけど、そもそもここの手伝いだって、俺はお前にまで働かせるつもりはなかったんだからな。分かったら、とっとと寝ろ。この話は終わりだ。」
まるで子供にそうするようにぽんぽんと頭を叩いて、シュルクは一人で食堂を出ていってしまった。
「………ずるいよ。」
しん、と静まり返った食堂の中。
しばしその場で立ち尽くしていたフィオリアは、長い沈黙の果てにそう呟いた。
どうして?
どうしてあなたには、そんなことまで分かってしまうの?
それも、恵み子の目がなせる業?
それとも、私が分かりやすいだけ?
それとも―――それほどに、私のことを見ていてくれてるの?
「ふっ……うっ……」
我慢したいのに、零れてくる涙を止められない。
だめた。
彼を好きになっていく気持ちが暴走しそうになる。
どうしてあなたは、私にこんなに優しいの?
あなたは、私のことなんて嫌いでしょう?
なのにどうして、あなたはいつも私のことを大事にしてくれるの?
分かっちゃうの。
伝わっちゃうの。
あなたがいつも、私を優先してくれているって。
そんな風に接してもらえたら、期待しちゃうじゃない。
あなたから、離れられなくなっちゃうよ。
「ううっ……」
つらいよ。
苦しいよ。
お願い。
お願いだから……
あなたにとっては、人として当然の配慮なのかもしれない。
あなたの正義感が、そんな行動を取らせるのかもしれない。
でも、それがたまらなくつらいの。
いずれ別れる運命なら。
お願い……―――優しくしないで。
あなたから想いが返ってくることは絶対にないんだって。
いっそのこと、私を心の底から絶望させてほしい。
こんな生き埋めみたいな状態なんて、つらいよ……
「好き……誰よりも……好きなの……」
私がこの気持ちをあなたに言ってしまう前に、どうか―――




