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Fairy song  作者: 時雨青葉
第7歩目 生き物を拒む山
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問題児、わんこになる。


「なーなーなー」

「………」



「なあってば。」

「………」



「無視すんなって。シュルクー。」

「うるさい。暇なら、外の掃除でもしてこい。」



「うっす!」



 適当に追い払う口実を作っただけだったのだが、それを聞いたルーウェルは嫌な顔一つせずに外へと出ていった。



 集会所のドアが閉まる音を聞きながら、シュルクは頭痛でもこらえるように眉間(みけん)を押さえた。



 ここ数日で発生した新たな悩みの種に、精神が悲鳴をあげているのが分かる。



(……やっちまった。)



 脳裏で(むな)しく響く、心の声。



 すっかり大人しくなったルーウェルの精神を(えぐ)りながら説教を続けた後、気が済んだ自分は彼を外に放置したまま集会所の中に戻った。



 そこで出迎えてきたフィオリアにも散々説教を垂れ、そこで気疲れがピークに達したので、食事も取らずにベッドへと飛び込んだ。



 その翌日。

 意外にも、ルーウェルは自ら集会所を訪れて頭を下げてきたのだ。



『今まであんな風に怒られたことがなかったから、自分がどんなことをしてたのか分からなかった。……すみませんでした。』



 しおらしく眉をハの字にしてそう告げたルーウェルにすっかり毒気を抜かれてしまったのか、セルカとランディアは特に彼をを責め立てることはしなかった。



 優しくルーウェルを諭したところまでは想定内。



 しかしその後、自分が請求すると宣言していた店の修繕費用を免除してしまったのにはさすがに驚いた。



『怒られるという経験をしたなら、謝った後に許されるという経験も必要だろう?』



 自分の不満そうな雰囲気を察したランディアに先手を打たれてしまえば、こちらとしては意見することもできないわけで。



『優しい人たちでよかったな。感謝しろよ。』



 胸にわだかまる不快感を気合いで押し込め、そう言ってやるしかなかった。

 あの時のルーウェルが感動を噛み締めた顔といったら、今思い出しても寒気がする。



 そんな感じでセルカたちに許してもらったルーウェルだが、その後の行動力が半端じゃなかった。



 何を決意したのか、彼はその日一日で自分が迷惑をかけてきた場所を巡って、片っ端から頭を下げてきたそうなのだ。



 その日の夕方には動揺した人々がここに訪ねてきて、ルーウェルは何か変なものでも食べたのかと、事態の詳細説明を求めてきた。



 さすがは最年少で難関を突破しただけのことはある。



 あれだけの行動力があるなら、自分の前に立ち塞がる壁を越えていくのも、さほど苦ではなかっただろう。



 自分が矢面に立たされるのを気にしてか、極力個人名を出さないように事情を説明してくれたセルカたちに感謝しつつ、自分はあくまでも他人事としてそれを聞き流すことにしていた。



 だが、甘かった。



『シュルクー♪』



 さらにその翌日、やけにうきうきとしたルーウェルがまた訪ねてきたのだ。



 勝手に向こうから話してきたことを聞くに、昨日回ったほとんどの場所で、これまでの行いを許してもらえたそうなのだ。



 もちろん、今までの損害分を支払えと言われたこともあったそうなのだが、そこは自分の責任としてちゃんと清算してきたらしい。



『お前のおかげで、母さんや父さんとも仲直りできたんだー。』



 にこにこと語るルーウェルに対する自分はというと、「随分と都合のいい親だな。」と言わないようにすることで精一杯だった。



 それから三日。

 ルーウェルは欠かさず集会所に来ては、こうして自分の周りに張りついている。



 ここまで露骨に懐かれれば、嫌が応にもこの一件の立役者が誰だったのかは広まっていく。



 今じゃ自分は、ちょっとしたヒーロー扱いだ。



 ……まあ、もっと不名誉な二つ名も定着しつつあるのだが。



 あのアホ野郎め。

 せっかくのセルカたちの配慮をふいにしやがって。



 ろくに相手をするつもりもないので、始めは無視を決め込んでいた。

 だが、あいつもあいつで相当しつこい。



 無視するのも限界になり、プライドが高い奴なら絶対に嫌がるだろう雑用を押しつけても意味はなし。



 先ほどのように、嫌がるどころか嬉々としてやりに行くのだ。



 しかも、能力がものをいうのか、無駄に手際がよくて困る。

 こんな風に雑用で追っ払っても、大した時間稼ぎにもならない。



「シュルク、終わったぞ! ピッカピカだ!!」



 今も、自信満々なルーウェルが戻ってくるまでにかかった時間は、精々自分が資料一枚の翻訳を終える程度のもの。



「ああああああもうううう!!」



 シュルクは叫びながら立ち上がると、すぐ隣にまで来ていたルーウェルの胸ぐらを引き寄せた。



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