叩きつける正論
「わあああああっ!?」
まるで、おもちゃのように軽く飛んでいくルーウェル。
その体はシュルクによって計算された軌道を描き、フィオリアが開け放した窓から店の外へと転がり落ちていった。
「おお…」
店内の人々が、皆一様に驚嘆の息をついて目を見開いた。
「なっ……なっ……」
すぐに体勢を整えて立ち上がったルーウェルは、まるで化け物でも見るような視線をシュルクに向ける。
一方のシュルクはひらりと窓から外へ出ると、きっちりと窓を閉めてからルーウェルに向かい合った。
ひとまず、店から追い出してしまえばこっちのもん。
この後は、どんなに暴れられようとどうでもいい。
「煙たがられて与えられた一番ってのは、そんなに美味しいもんかね? ルーウェルさんよ?」
シュルクは腕を組んで、ルーウェルにそう問うた。
「なっ……お前、オレのこと知ってんじゃん!!」
大慌てするルーウェルに、シュルクはふんと鼻を鳴らす。
「ついさっき知ったんだよ。最年少で入山資格をもぎ取るのにどれだけ努力したかは知らんけど、中身がこれじゃあ、ぼっちになっても仕方ないわな。」
「ぼっちって……」
「実際そうだから、一人でこんなとこに来てるんだろ? 権力を盾にして、一応は構ってもらえるもんな。それで好き勝手やって、最近は親にも避けられてるらしいじゃねぇか?」
「ちょっと待て!! お前、ついさっきオレのことを知ったって言ってたよな!? なんで、そんなことまで知ってんの!?」
「話を聞いた相手が、無駄におしゃべりだっただけだ。こっちとしては、お前の半生なんざこれっぽっちも興味ない。」
「………っ」
はっきりと興味がないと言われたことがショックだったのか、ルーウェルが露骨に傷ついた顔で言葉につまる。
まあ、伸びきった鼻をへし折るくらいなら、こんなもんでいいだろう。
シュルクは冷ややかな態度を貫いたまま、この無駄話を終わらせることにする。
「本当の意味で構ってほしいなら、何がいけなかったのかを、その有能な頭で考えるんだな。お前が自分でぶっ壊してきた信用だ。自分の尻拭いくらい、自分でしろ。」
まったく、とんでもない迷惑だ。
周りの気を引きたいなら、もっと穏やかで有意義な方法があっただろうに。
とはいえルーウェルの場合は、甘やかすだけ甘やかした挙げ句に、手がつけられなくなったら放置した両親に非があるとも言えるので、彼一人だけを責めるのも酷ではあるが。
「………、………」
だらりとうつむいたルーウェルが、何かを呟いている。
その様子に疑問を持ったところで、突然背後で霊子が活発化した。
次の瞬間―――
「シュルク!!」
フィオリアの金切り声が響いたと同時に、先ほど閉めた窓が派手に割れる。
どうやら、ルーウェルが霊神召喚で何かを飛ばしてきたらしい。
普通にそれを避けようとしたシュルクだったが……
「なっ…!?」
視界の端で飛んできたものを確認した瞬間、背筋に冷たい戦慄が駆け上がっていった。
シュルクは無意識に引いていた体を意地でその場に縫い止め、飛んできたそれを両手でキャッチする。
猛スピードで飛んできたそれには、その小ささと形状故に、相当な威力がこもっていた。
「―――っ!!」
それを掴んだ手のひらに皮膚を切り裂かれる激痛が走り、シュルクは顔を歪める。
しかし、シュルクは決してそれを離さなかった。
ポツリ、ポツリと。
地面に赤い雫が落ちる。
「シュルク、大丈夫!?」
「来るな!!」
血相を変えて近寄ってこようとしたフィオリアに、シュルクは鋭く怒鳴る。
「そこから一歩も動くな。お前鈍くさいから、絶対手ぇ切るだろ。」
「で、でも! シュルクの方が―――」
「ああ?」
途端に、シュルクがフィオリアを睨みつける。
そこに込められたのは、ただならぬ怒りと殺気だった。




