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Fairy song  作者: 時雨青葉
第4歩目 それぞれの思い
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近いのに、遠い存在

 羽をはためかせ、木々の間を器用に縫いながらまっすぐに小屋を目指す。

 ドアの前に降り立って(ひと)呼吸。



 そして、シュルクはあえて乱暴に音を立ててドアを開けた。



 ドアを入ってすぐのリビングでは、フィオリアが椅子に座ってうつむいている。

 フィオリアもフィオリアで、先ほどのことで落ち込んでいるのだろう。



 変な関係だな、と。

 ふと、そんなことを思った。



 互いに運命の相手に会うことを恐れていて、せっかく出会えたことを全く喜べなくて。



 出会わなければよかったと心の底から思うのに、こんな風に些細なぶつかり合いをして、互いに罪悪感に(さいな)まれる。



 誰よりも近い存在のはずなのに、他人以上に遠く感じる存在。

 運命石の存在なんて、自分たちには無意味だ。



 そんなことを考えながら、シュルクは大股でフィオリアに近寄った。



「なあ。」

「………」



「一つ、訊きたいことがあるんだけど。」

「………」



 フィオリアは口を開くどころか、こちらを見ようともしない。



 まあ、これも想定の範囲内だ。

 シュルクは深く息を吐いた。



「別に、答えが欲しいわけじゃないんだけどさ。じゃあ、勝手にここで言ってるわ。」



 フィオリアの座る隣で机に寄りかかり、シュルクは躊躇(ためら)いなく口を開いた。





「お前ってさ、フィオリアなの? それとも、ルルーシェなの?」

「……え?」





 フィオリアの中には、微塵(みじん)もなかった考えだったのだろう。

 黙り込んでいたはずの彼女は顔を上げるなり、そんな間抜けな声を出した。



 目をまんまるにして、自分の顔を映す灰色の瞳。

 それを見つめ返し、シュルクはさらに言葉を続ける。



「今の状況って、フィオリアになんの責任があるわけ? ぶっちゃけ、俺にはそれが全然分からないんだけど?」



「だって……私と出会ったから、あなたは……」



「ふーん。そうやって、自分の存在を自分で否定しちゃうんだ。」



「そんなつもりは……」



「実際、そうだろう。」



 シュルクはきっぱり言い切った。



「お前って、ちょっと俺と似てるよ。自分がこんな風に生まれたせいで俺に迷惑をかけてるって、今そう思ってんだろ?」



「………」



 図星らしい。

 フィオリアが目に見えて言葉に窮する。



「俺もそう思ってた時期があった。でもさ、自分がこうやって生まれたことって、自分でどうにかできた問題なのか? 違うだろ? 生まれて持ってくるものなんて、誰にも選べないし変えられない。なら、これは誰のせいでもない。それなのに自分のせいだって決めつけるのって、自分で自分を否定していること以外のなんなの?」



 自分が(めぐ)()として生まれたことは、誰に責任があるわけでもない。

 その考えには、自分の体質を理解してから割とすぐに思い至った。



 そう考えるようになってからは、両親がしきりに謝ってくることに違和感しか持てなかったし、自分の存在があってはならないものだと言われているようで不快だった。



 そして、自分のせいで皆を苦労させていると思うことは、自分で自分のことを否定していることに他ならないのだと思うようになった。



 今のフィオリアの姿は、何も理解していなかった頃の自分にそっくりだ。



「自分のせいだって思って、頭を下げて償った気になるのは楽だよ。でも、それに一体なんの意味があるわけ? 持って生まれたものが厄介なら、それと上手く付き合っていく道を探すしかない。ある程度割り切って生きないと、自分も周りも報われないんじゃないのか?」



 フィオリアには訊ねるような口調で語りかけたが、自分はこの考えが限りなく正しいと思っている。



 謝られることを不快に感じるようになってから、何度も頭を(ひね)って考えた。



 どうすれば皆が謝らずにいられるのか。

 どうすれば自分を責めずに済むのか。



 結果的に、特別なことは何も必要ないのだと気付いた。

 ただ単純に、普通に過ごすことができれば、自分も周囲も一番楽で傷つかないのだ。



 だから霊子を寄せつけないように自分なりに努力したし、霊神召喚ができない分を補うためにザキの厳しい指導も乗り越えた。



 両親に(なら)って言語を極めているのも、自分が病気だという建前に周りが気を遣わずに済むように考えた結果だ。



 そんな日々があるからこそ思う。

 自分のせいだと塞ぎ込むよりも、さっさと前を向いて行動した方が何倍も有意義だと。



「……あなたは、それでいいの?」



 しばらく無言が続いた後、フィオリアがおそるおそるといった様子で口を開いた。



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