込み上げる激情
「その相手が……俺だってことなのか?」
シュルクがからからに渇いた喉で呻くと、フィオリアは目元を歪めて頷いた。
「そうです。もう察しているとは思うけれど、セイラお嬢様の記憶を引き継いでいるのは、私のお母様です。」
それ以降、フィオリアは固く口を閉ざしてうつむいた。
ザキやウィールも、血の気が引いた表情で絶句している。
そんな話、聞いたことがなかった。
確かに、運命石の力が確実視されるに至ったのは、明るくてロマンチックな背景だけが要因ではない。
運命石があったからこそ不幸に陥った逸話も数多く存在する。
しかし、フィオリアが今話したことは、どんな文献にも載っていない話だった。
運命石にかける呪いは、少なからず実在している。
だが、大体の呪いは持ち主が生きている間しか効果を発揮しないと言われているし、そもそも呪いが成功したという記録すらほとんどないのだ。
フィオリアが言うように呪いが今もなお続いているのだとしたら、それは相当な執念から生まれた呪いに違いない。
『恨むなら、ルルーシェを恨みなさい。』
リリアの声が、鮮やかによみがえる。
「……だよ、それ…っ」
唇が震える。
「なんだよ、それ!?」
シュルクは、思い切り机を叩いて立ち上がっていた。
乱暴な音にフィオリアが肩を震わせたものの、これも仕方ないと思っているのか、彼女は口を開こうとしない。
それが余計に、シュルクの情動を刺激した。
「意味分かんねぇよ!! 持って生まれてくるものなんて選べないんだぞ!? それなのに……そんなの……くっ……」
怒鳴った瞬間に、強い眩暈がした。
あっという間に平衡感覚がなくなって、足から力が抜けてしまう。
倒れかけた自分の体は、とっさに手を伸ばしたザキに難なく支えられた。
「とりあえず、今日はもう休め。」
頭上から降ってくる、いつものザキらしくない穏やかで優しい声。
「お前が混乱するのも分かる。でも、今は傷を治すことだけを考えろ。」
「………っ」
シュルクは思わず、奥歯を噛み締めた。
上手く表現できないやるせなさが胸腔を満たす。
理不尽さに対する戸惑いや怒りがごちゃまぜになって、自分にはどうにもできない感情が叫び声をあげているようだった。
(どうして、こんな目に遭わなきゃ……)
眩暈と吐き気に侵されながら思うのは、ただそれだけだった。




