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ロナルド少年 Sランクに


 今日はロンをSランク冒険者にランクアップさせる。まずは朝食を食べて刀を買いに行く約束だ。


 しかし、ロンは起きてこない。


 ――仕方ないやつだな……。


 部屋に行きノックする。三回ノックしてやっと起きてきた。


「寝過ごした! ごめんなさい、ユーゴさん!」

「おはよう。これが騎士団の宿舎なら、お前はクビだな」

「俺、朝弱いんだ……」

「弱いんですじゃ済まないぞ。起きなきゃダメなんだ。よし、目覚ましも買ってやるよ」

「ホントに? ありがとう!」


 昨日は子供が寝る時間には帰った。

 しかし、ルナポートでの仕事柄、夜型なのだろう。朝早く起きる生活ではなかったのかもしれない。


「ロン、人は東の空に日が登る前に目覚めて朝食を食べて準備する。太陽が真上に来たら昼食を頂き、日が沈んだら夕食を食べる。これは一年間毎日ズレることはない。それがこの世界に生きる者の生活だ。太陽の動きに合わせて時計の針も回っているんだ。当たり前に出来て初めてスタートラインだぞ?」

「分かりました……頑張る……」


 朝食を食べて中心街の武器屋に向かう。



「なんでその刃こぼれした剣をずっと使ってるんだ? 思い入れのある物なのか?」

「Aランク試験の報酬は当面の生活費に当てたかったんだ。どれだけいるかも分からないし。特に問題無かったから買わなかった。次買うなら絶対に刀って決めてたけどね」

「もしかして、Aランク試験は一人で行ったのか?」

「うん、一人で行くもんじゃないの?」

 

 Aランクの報酬は一般労働者の年収の六年分だ。それを12歳が一人で。


 武器屋に着いた。

 ちょうど開店したらしい。


「一番いいので二級品の上位か」

「120万ブールするよ……二級品の下位でも60万か……」

「鍛冶場から直に買うと、一級品の上位で500万って言ってたな。ここじゃマージンが発生してるんだろうな」

「500万……凄いね……」


 参考までに、龍胆と春雪を見せた。


「こっちが特級品、こっちが一級品の上位だ」

「すっげーキレイ! 憧れるなぁ……」

「どっちも貰い物だから、偉そうには言えないけど……」


 一通り眺めてユーゴはロンの肩に手を置いた。

 

「よし、一番いいの買ってやるよ。いや、違うな、これはロンへの投資だ。強くなって、何かで返してくれ」

「うん、分かったよ! 絶対強くなる!」


 いや、すでに強いから末恐ろしいのだが。


「これがいいな」


 刃紋は湾れ刃(のたれば)、春雪より少し長い太刀だ。


「お目が高いね。その刀はリーベン島の名工の刀だ」

「へぇ、どなたのものかは分かりますか?」

(なかご)に刻印してあるよ。ヤンガス・リー作だね」


 (なかご)とは、刀身の柄に収まる部分だ。


「ロン、オレのこの春雪を打った人の刀だ。俺が知る中で一番の刀鍛冶だよ。あの人は刀に名前を付けない。いずれ、ロンが自分で刀に名前をつけてやるといい」

「名前か、ゆっくり考えよう。ユーゴさん、ありがとう。大事にするね」


「これ、頂きます」

「はいよっ」


 まさかヤンガスの刀を選ぶとは。

 これも縁だろう。


「防具は、自分で狩った魔物の革で作ったら愛着が湧くぞ」

「なるほど。今日いいの採れるかな」


 冒険者ギルドに着いた。

 王都のギルドを見ている分小さく感じるが、ここも十分大きい。


「単体Sランクの魔物より、Aランクを複数狩る方が良いかもな」


 ロックリザード三体討伐の依頼がまだ残っている。


「これどうだ? 練気を纏った刀なら難なく斬れると思うぞ」

「あぁ、こいつAランク試験で倒したやつだ!」


 ――え? あの刃こぼれした剣で斬ったの……?


「そうか……じゃあ、問題ないな……」


 依頼書をカウンターに持っていく。

 三人の受付のうち、顔見知りの男の前に依頼書を差し出した。


「へぇ、まだ子供なのにSランクか。なぁユーゴさんよ、あんたが手伝うのはルール違反だぜ?」

「当然、ランクアップ試験の規定はわきまえてますよ。オレは見てるだけだ」


 依頼現場に直行だ。

 弁当も買っておこう。


 

 ◇◇◇


 

 現場に着いた、岩場だ。

 その名の通り、岩場に生息するトカゲだ。岩山の洞窟に住み着いてるらしい。ゴルドホークの鉱山を思い出す。


「この中だな。さぁ、オレは見てるだけだぞ」

「うん、分かった!」


 高いレベルで強化術が掛かっている。守護術もしっかり張り巡らせた。

 刀には常に練気を注いでいる。


『火遁 紅蓮(ぐれん)!』


 洞窟に火遁を放ち、炙り出す作戦だ。

 ユーゴでもそうするだろう。


 ロックリザードは魔法に強い。

 熱くてというよりは、驚いて洞窟から出てきた。


 三体のロックリザードだ、驚きで浮足立っている。


『剣技 斬返三段!』


 一気に距離を詰め、流れるような三段斬りで三体を仕留めた。


「凄い斬れ味だ……今までの剣は本当に斬れなかったんだな……」

「もたつかずに一気に仕留めたな、見事だよ。刀の振りも剣技のチョイスも完璧だ。文句なしのSランクだな」

「これで鎧作れるかな?」

「あぁ、オレ達が初めてオーダーメイドした防具もロックリザードの革鎧だ」

「そうなんだ!」


 ロックリザードの体皮を剥ぎ取る作業も口は出すが手伝わない。ナイフは買ってある。

 一応ルナポートで魔物の解体の指南は受けてきたらしい。手こずりながらも三体の処理を終えた。


「よし、残りを火遁で燃やしてみようか」


 小さい魔石が数個と大きな魔石が二個。

 出た、魔晶石が一個だ。


「おぉ、出たな。この魔晶石は防具に使おう」

「防具に?」

「あぁ、籠手に着けとくと遁術等の増幅効果がある」

「へぇ、なるほど」


 依頼品をユーゴの空間魔法にしまう。 


 昼食まではまだ時間がある。

 魔族の戦闘法も教えておこう。


「遁術を更に強化する方法を教える」

「はい!」


 練気のボールに、自然エネルギーで強化した風遁を詰め込み、解放してみせた。


「すっごいな……」

「ロンならすぐにできる、練気術をすでに習得しているのが大きい。全ての基本は練気術のように練ることだ」


 難なくこなし、岩山を風遁でズタズタにしていた。


「次はこれを刀に詰め込む。刀身と纏った練気の間に詰め込む感じだな」


 ロンが放った風遁の剣風が、大きく成長しながら岩山に突き刺さった。

 まだまだ精度は低い、SSはキツいだろう。が、センスがいい。なんでもすぐに吸収する柔軟さがある。

 

 人族ゆえの魔力と気力の量の問題はあるが、ロンは小さい頃から龍族に鍛えられている。

 12歳の時点で並の人族を超えている。15歳位から18歳にかけて、魔力量と気力量が安定するらしい。まだ増えそうだ。

 

 ロンは並の人族よりも潜在能力が高い。

 練気術で人族の気力の少なさはカバーされる。ロンはいずれ昇化しそうだ。

 

「あとは繰り返し修練して、術の精度を高めることだ。技術に関しては問題ない」

「俺、もっと強くなれるね!」

「あぁ、オレも追いつかれないように頑張るよ……昼飯食って帰るか!」


 弁当を平らげ、レトルコメルスの方向へ飛び立った。

 

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