ピーン
定例パーティーも終わり、皆が帰っていく。
「レオナード王、シャルロット女王、お招き頂きましてありがとうございました。十日後にまた参ります」
「あぁ、またパーリー参加してね!」
「毎回来てもらってもいいょ!」
本当に仲のいい王達だ。
もっと王家同士でいがみ合っている様なイメージを持っていたユーゴにとっては新鮮に映った。
パーティー会場とオーベルジュの城は隣同士だ。少し歩いて客間に着いた。
「皆様、お帰りなさいませ。お風呂の準備はできておりますよ」
「あぁ、ただいまリナさん。明日からオレたち数日間出かけます」
「左様でございますか、かしこまりました。お召し物のクリーニングはいかが致しましょう?」
「あぁ、お願いしようかな。みんなどうする?」
「うん、お願いしようかな」
「アタシも!」
「かしこまりました。お部屋に置いておいて頂ければ、こちらでしておきますので」
礼服のクリーニングをお願いし、風呂に入るため各自部屋に戻る途中、エミリーが立ち止まった。
「ねぇ……もしかしてここも混浴?」
「あぁ、そうだよ」
「私それが嫌でこっちに来たのもあるのに……こっちもかよ!」
「いいじゃないか、見られてどーなんだよ」
「いやだよ……二人に裸見られるんでしょ……?」
「二人先に入ってきなよ、僕らは後でいいからさ……」
「いや、今日は来賓が多かったから、いっぱい入ってると思うけどな。嫌ならシャワールーム借りるか?」
「うん、そうする……」
エミリーは恥ずかしいようだ。
ユーゴは残念な表情を出さぬよう努めた。
エミリーを除き、三人で風呂に行く。
確かに多い、裸の男女がこうも入り乱れると普通に思えてくるから不思議だ。
もうジュリアの裸を見てもなんとも……と思ったが、これだけの大多数の前で勃起を晒す訳にはいかない。視界に入れるのはやめよう。
シャワーで汗を流し、露天風呂へ。
王族の奥方や年頃の娘も、隠す事なく湯に足を浸けて座っている。
すごい文化だ、眼福である。
やはり、ジュリアの美しすぎる裸体で目が鍛えられた。他の女性を見ても耐えられる。
いや、耐えるというのがすでに間違いなのだろうが。
ゆっくり温まり、脱衣所で体を拭く。
「お前ら今日は勃起しなかったな」
「あぁ、ジュリアほどの美しい裸体は無かったからな」
「ほんと、今ジュリア見たら勃つ自信があるよ」
「お前ら褒め過ぎだって。アタシのが他と何が違うんだよ。ほれ、トーマス! 見てみろ!」
ジュリアはトーマスの顔を掴んで、自分の胸に向けた。
「うぁー! やめてって!」
そして、勢い余ってジュリアの胸の谷間に、トーマスの顔が埋まった。
ピーン
急いで下着を履くトーマス。
「キャハハ! 可愛いなトーマス!」
「うん、大サービスありがとう、ジュリア……」
明日はレトルコメルス行きだ。日が昇る前には出る。
夜更かしせずに寝よう。
◇◇◇
夜明け前に目を覚ます。
冒険者は朝に強い。というよりは職業病だろうか、眠りが浅い。野営でのんびり寝ている訳にはいかないからだ。だから次の日、何もない日は深酒をしてゆっくりと眠る。それでも朝には目が覚める。
もう、病気だ。
辺りはまだ暗い。
準備をして周りに迷惑をかけないようにゆっくりと出て行く。
皆時間は守る、夜明け前と言えばしっかりと集まる。この当たり前ができない者は冒険者にはなれない。
メイドのリナが、わざわざ早起きして四人分の弁当を作ってくれた。
彼女からすれば仕事の一つなのだろうが、ユーゴはその心遣いに感動を覚えた。何かプレゼントを買って帰ろう。
「さて、目標は夕方にレトルコメルスだ。全力で行くぞ」
始めから全力の浮遊術で街道沿いを飛んでいった。
喋る事なく、真っ直ぐに目的地を目指す。
太陽が真上に来た、皆に合図をし地上に降りる。
「ふぅ、大分進んだな」
「このペースだと、予定より早く着きそうだね」
リナの弁当を四人で頂いた。
「ほんと、リナさんにはお世話になりっぱなしだ」
「あぁ、アタシも世話になりっぱなしだ」
「美味しいなこの弁当」
「ホント! この卵焼きすごく美味しい!」
しばしの休憩をとり、また無言で飛び続けた。
◇◇◇
予定より早く、夕方前にはレトルコメルスに着いた。四人のスピードは増している。
「ふぅ、いつものホテルにチェックインするか。明日には出るだろ?」
「皆どうする?」
「そうだな、ユーゴの用事が済んだら出たらいいんじゃないか?」
「なら今日で済ませる。チェックインしたらすぐに行ってくるよ。明日の朝食を食べて出よう」
「じゃあ、明日の朝まで各自自由時間だね!」
今回は各自に空間魔法がある。
ユーゴのトラウマはもう解消だ。
ホテルにチェックインしてシャワーで汗を流す。異空間に現金を持っておこう。1000万もあればいいだろう。
まずは娼館の元締めに話を聞きに行く事にした。