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空間魔法


「みんな! ワインヤッちゃってる? 良かったね、ちゃんリヴィ! ずっと気にしてたもんね」

「はい、私達の今があるのは、王のお陰です」

「やめなって! 同族(ゾクドー)でしょ!」


 ――みんな理解して聞いてるのかな……。


「さっきの小型の拡声器も女王が開発したんでしょ?」

「うん、そうだょ。昔からアイデアがどんどん浮かぶんだょ。昔のアイデアでも、やっとここ数百年で実現出来たってのも結構あるね」

「技術的な事ですか?」

「それもあるけど、一番は動力だね。ウチの発明の動力のほとんどは魔力だからね」


 魔法具の動力と言えば、魔石や魔晶石だ。


「冒険者ギルドを設立したのもこの二人だ」

「うん、魔物を倒した時に出てきた魔石を見て、これだ! って思ったょね。魔物を倒してお金を稼げる職業ができると、防具の元になる体皮や、魔石や魔晶石が増える。武具を作る職業が増えれば、更に冒険者も増えるし、生活を豊かにする燃料も増える。冒険者って仕事は世の中の潤滑油だょ。冒険者カードと銀行システムも相性が良かったしね」


 人族の世のほとんどを手掛けているらしい。途轍もない大物だ。


「そういえばユーゴっち。右眼は生まれつきなの」

「いや、今日の朝起きたらこうなってたんです。そうだ、王にお尋ねしようと思ってたんです、何なんですかねこれ」

「んー、見たことないねバイオレットは。ちゃんボク達は緑だし」


 元仙族である王二人の眼は、元々は青色だ。

 王でも分からないらしい。ますます謎が深まるばかりだ。


「二人共、仙人に退化して何か損することはなかったのか?」

「いや、体感では特に無かったね。目が緑になっただけだよ。人族(ゾクジン)は子が出来やすいけど、仙人(ジンセン)になると少し出来にくくなるようだ」

「んだね、空間魔法も無くなるかと思ってビクビクしたけど、今じゃ普通に昇化した仙人も使ってるしね」


 ――ん……? てことは?


「僕も空間魔法使えるんですか!?」

「へ? 昇化してんじゃん。なら使えるよ」


 それを聞いてトーマスはジュリアに空間の開き方を教えて貰っている。ユーゴはそれを眺めるだけだ。


「本当だ! 開いた! とうとう僕も空間魔法デビューか……凄く羨ましかったんだよね」

「いいなぁ……使えないのオレだけか……さすがにこの青紫の眼は関係ないだろうしな」


 一応ジュリアがトーマスに教えてた通りにしてみた。


「え!? 開いたー! 空間魔法オレにも!」

「え……? なんで……?」

「その眼、仙族とつながりがあるってこと?」

「ホント何なんだろうね、その眼は……」

「アタシ、仙人が空間魔法使えるの知らなかったよ……そういえば、気にしたことなかった……」

「ウチらは空間()()って呼んでるけど、魔力なんてほとんど使わないょ。これは眼の力だね」


 晴れて全員空間魔法デビューだ。


「私の天下が終わってしまったよ……」

「いや、エミリーにはこれまでお世話になったからな、これまで通り移動の見張りはオレらが請け負う」

「あらそう? じゃ頼むよ!」

「僕はユーゴと『契約』しようかな」

「じゃ、相互契約しようか」


 方法を教えてもらい、トーマスと相互契約し、エミリーとジュリアから荷物を受け取った。

 例の革袋の宝玉がユーゴの手に戻った。

 エミリーが中身を知らずに持たせていた事を少し気にかけていた。


「いやぁ、ホント楽だなこれ」

「人生が豊かになるねこれは」



 話はアレクサンド達の話題に移った。


「二人は、アレクサンドが魔人と龍族とつるんでるのは知ってるのか?」

「うん、ラファちゃんと試験通信したときに聞いたょ」

「奴らは、魔、仙、龍の三種族の戦闘法を習得してる。あの三人は相当強いぞ。アタシたちも、龍族と仙族の戦闘法を掛け合わせただけで戦闘能力が跳ね上がった。今は魔族の戦闘法も習得したがな」

「そうなのね。王国内の騎士団には仙人も多いけど、ほとんどは人族だょ。人族は仙術を扱うのが厳しいらしいんだ。気力が持たないみたい」


「龍族の練気術を習得すれば、人族も仙術を使いこなせるようになるはずですよ」

「レンキジュツ? 指導(ドーシー)してくれるの?」

「あぁ、お前らや王都の幹部も覚えて損はない。とんでもなく戦闘能力が上がる」

「十日後に軍事演習があるんだょ。そこで指導(ドーシー)してくんない?」

「えぇ、オレらは構いません。ここは他国の抑えです。奴らが動き出したら相手をするのは王都の騎士団でしょうから、強くなってもらいましょう」

「そんな良いものがあるなら、是非頼むょ!」

「じゃ、十日後にシクヨロね!」


 王二人は他の来賓達の所に行った。

 本当に話しやすい王達だ。なんでも気兼ねなく話せる。

 

「十日後か、レトルコメルスに行ってこようかな。そのあと里長に通信機を届けに行こう。仙族と魔族の戦闘法を教えといたら、万一奴ら三人が来ても抑えになるしな。里長が自然エネルギー取り込んだらどうなるのか見てみたいのもある」

「アタシも仙神国に帰って指導してこようかな。じゃあ、二手に分かれるか?」

「そうだな」

 

「いつも男と女で別れてるが、男女ペアで行動してみないか? 前にトーマスと一日過ごしたんだがいい刺激になったんだよ。トーマス、一緒に仙神国行かないか?」

「うん、僕はかまわないよ」

「じゃ、私はユーゴと一緒に行くね! 奥様に治療術の新術見てもらいたいし。魔力障害の事も聞かないと」


 レトルコメルスまでは皆一緒だ。

 今の四人なら夜明けに出れば夕方には着くか。全力で飛べばもう少し早く着くかもしれない。


「じゃ、明日は早起きだね!」

「とりあえず、この美味い料理とワインを楽しもう」


 正装して参加した珍しいパーティーを、心ゆくまで楽しんだ。

 

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