王家交流定例パーティー
「最近、新しい発明をしたんだょ」
ティーカップをテーブルに置くと、発明女王は何かの機械を出してきた。
「光エネルギー通話システムだょ!」
「何に使うんだ?」
「声を信号に変換して、光の自然エネルギーを利用して光速通信で会話するんだょ」
「遠く離れた所にいる人と喋れるって事ですか?」
「その通り! 今のところ、仙神国と各町の領主の屋敷、あとは北の砦に置いてる。なのにラファちゃん、手紙を寄こすって信じらんないょね。今通信してやろうかな!」
女王は仙王に通信を飛ばした。
「はい、こちら仙神国です」
「あ、シャルロットだけど。ラファちゃんに代わってょ」
「少々お待ち下さい」
本当に会話している。返ってくる声も少しこもってはいるがクリアだ。
「ラファエロだが。シャルロットか?」
「ラファちゃん! 通信機渡したのに手紙寄こすってどういう事よ!」
「え……あっ……いや、使い方がいまいち分からんのだ……」
「あれだけ教えたのに! 分かったよ。後でさっき出た子に教えとくから、聞いとくようにね!」
「あぁ、分かった……努力はする。そうだ、この機械を龍王にも渡せんか? 何かあれば連絡が取りやすい」
「龍王に? 大丈夫だけど、まだ試作だからね。これ少し仙術使うょ?」
「オレが教えます。大丈夫です」
「大丈夫だって! ユーゴっちに使い方教えて渡しとく!」
「あぁ、頼む」
「じゃ、また食事会でもしよーね! またね〜!」
「あぁ、また行く。レオナードにもよろしく伝えておいてくれ」
女王は仙王に対し一方的に叱責すると、友達の様に会話し通信を切った。
「こんな感じね。いずれは各家に一台くらい普及したらいいょね。もっと言えば、携帯できるサイズを目指したいな!」
本物の天才だ。
すごい話だったが話がズレた。
「エマには近々直接話そうと思います。彼女は今、レトルコメルスで夢に向かって頑張ってます。土地の相続は放棄するかもしれませんね」
「そっか、聞いたらウチに教えてよ。その後はどうにかするから。レトルコメルスの領主はオリバーか、なんかあったらオリバーのとこから通話くれてもいいし」
「分かりました。オリバーさんの所には行こうと思ってます。連絡を入れておいて頂ければありがたいんですが」
「分かったょ!」
「あと、エマがベルフォール姓を名乗る事については?」
「ウチの玄孫なんだもん、当然問題ないょ」
エマにはとんでもない軍資金が入る。
どんな顔をするのか見当もつかない。
「結構話したな。いい時間になった」
「そうだね。次はパーティだょ! 参加するんでしょ?」
「本当に参加していいんですか?」
「いいって! ただの飲み会だし!」
夜のパーティは、二つの王城の間にある建物の中で開催される様だ。
皆で会場に向かった。
身分の高い人達ばかりなのは間違いない。
しかし、異常にフレンドリーな王二人が一緒で気が楽なのは確かだ。
二つの城の間にある大きなホールがパーティー会場だ。招待状の類は貰っていないが、シャルロット女王と一緒に来たので、中にはすんなり入れた。
流石は貴族のパーティー、皆の衣装が華やかだ。ユーゴ達四人の中で様になっているのはジュリアくらいだ。
立食パーティーらしい。
真中に様々な料理が置いてあり、その周りをヘソほどの高さのテーブルが囲んでいる。
レオナード王が正面に立ち挨拶をする。
「今年の定例パーティーも二回目だね。いきなり企画したのに、こんなに参加してもらってありがとう! 今日は、仙神国からジュリエットちゃんとその仲間たちが来ちゃってるから、みんなでワイワイヤッちゃってよ! じゃ、カンパーイ!」
グラスのワインを掲げ、パーティーが始まった。あの小型の拡声器も、シャルロット女王の発明なのだろう。
中央から様々な料理を皿に取り分けてワインと共に頂く。
「うん、美味いなぁ」
「僕はコース料理より、こういうビュッフェ形式の方が好きだな」
「うん、ホテルの朝食もいつもこんな感じだもんね!」
しばしの歓談で腹を満たす。
「皆様、エミリアの母のリヴィアです。娘と一緒に本当に幸せな時間を過ごすことができました。本当にありがとう……何度お礼を言っても足りません……」
エミリーの母リヴィアとイリアナが、深々と頭を下げている。
「いや、オレたちは何もしてませんよ。頑張ったのはエミリー本人です」
二人と少し話す事が出来た。
二人共、心から笑えてる様に見えた。ずっと心にエミリーへの心配があったのだろう、探したくても探せるものではない。
「これからは、エミリア・オーベルジュを名乗るの?」
「いや、その名前はここだけにする。王都を出れば、私は冒険者『エミリー・スペンサー』だよ! ジュリアもそうだもんね」
「オレ達は今まで通り、エミリーと呼ばせてもらうよ」
「もちろん、そうして!」
「ねぇエミリア、スペンサーってどなた?」
「あぁ、ジュリアがウェザブール王国に入って、初めて喋った人族のオジサンの姓だってさ……」
「あぁ、名前も顔も忘れたけどな!」
楽しく喋っていると、王二人が近づいて来た。