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魔法剣士ジュリア


 次の日の朝。

 

 一週間部屋をとっていたが、キャンセルしてチェックアウトした。ここの朝食も美味しかった。

 熱風エンターテイメントも素晴らしかった。当然昨日も楽しんだ。


 ロビーにはユーゴが一番乗りだ。すぐに二人が降りて来た。今日ユーゴはジュリアの師匠だ。


「おはよう。じゃあ、ギルドに行こうか」

「おはよう、このホテルも良かったね」

「あぁ、熱風エンターテイナーは他のホテルにもいるのかな?」

「泊まらなくても入れるしな、また他も行ってみよう」

 

 南のギルドの扉を開いた。朝から冒険者で賑わっている。

 三人の男が並ぶカウンターの横の、横長の掲示板を眺める。

 

「やっぱり美味しいのはワイバーンか」

「エミリー抜きでSSは行けないかな?」

「まぁ、エミリーの代わりにオレが治療に回れば問題ないだろ。今日はジュリアが剣技をぶっ放す日だ」

「じゃあ、SSも受けとこうか。ニーズヘッグってのは一体しか確認されてない個体か。こういう奴はヤバいんだよな……」

「うん、それはさすがにエミリーなしではやめとこう……」


 ニーズヘッグ。

 パラメオント山脈に生息する個体種だ。確実に良い革防具が作れるだろう。四人で行ってみても良いかもしれない。

 

「ヒッポグリフってのにしようか。グリフォンと雌馬の魔物の混血らしい」

「そういえば、強い魔物って色々な魔物が合体してるのが多いけど、種の存続の為に長年かけて他の魔物の因子を取り込んだんだろうな。一番手っ取り早いのが『混血』だ。オレの魔力が多いのもなんとなく頷けるな……」

「なるほどな。SSの魔物も高すぎる魔力で凶暴性が増してるって事なのかもな」


 Sランクのワイバーンでジュリアの剣技を練習し、余裕があればSSの依頼に行く。

 Sランクの魔物を一人で倒せるようになるとは、成長したものだと里の皆に感謝する。


 昼食の弁当を買ってジュリアに預ける。

 空間魔法内では雑菌がすべて死ぬらしい。食事の管理には最適だ。


「よし、行こうか!」

 


 ◇◇◇

 


 目的地手前に到着した。

 Aランクの魔物、ロック鳥が飛んでいる。

 

 今日の目的はジュリアに剣技を教える事。あらかじめ、遁術や剣技の指南書を渡している。


「ジュリア、剣技の予習はしてきたな?」

「あぁ、あの本面白いな! 遁術にも興味が出てきたよ。もう少し貸してくれよ」

「あぁ、いつでもいい。よし、やるか」


 ジュリアの剣はツヴァイハンダーだ。

 トーマスが砥いだとはいえ、斬ることに特化したものではない。


「龍族の剣技は、刀で斬ることを想定した技なんだろ? ツヴァイハンダーで大丈夫か?」

「いや、龍族の剣技は何も刀で斬るだけの技じゃない。兵法として色々な物で戦うことを想定しているらしい。武器がなかったら最悪、手刀で戦うとかそういう事だな。木刀でもある程度の威力がある」

「なるほどな。一応このツヴァイハンダーは一級品だ。物としては良いんだよな」


 仙神国の名工の作品らしい。流石は仙王の孫、いい武器を持っている。

 

「じゃ、まずは基本だ、ジュリアはもう剣に練気を纏える。直接斬るような剣技は型を覚えればいい。ツヴァイハンダーの正しい持ち方ってのは分からないけど……」

「持ち方? そんなのあるのか?」

「いや、師匠とかに習ってないのか?」

「あぁ、我流だからな」


 持ち方を知らず適当に振り回してこの強さ。

 仙族の誇る天才はかなりの逸材らしかった。


「刀の構えが両手大剣の持ち方に通ずるかは分からないけど、我流よりはいいかもね」


「そうだな。よし、まずは、左手で柄の末端を少し残して握り、右手は鍔に人差し指が少し付くような位置で握る」

「先生! ツカってのは?」

「持ち手だ」

「あぁ、グリップね! ツバってのは?」

「それの言い方が分からないんだ。刀身と柄の間の装飾のやつ」

「あぁ、ガードの事な。了解!」


 ユーゴも両手剣を使っていた身、各部の名称も知らないとは恥ずかしい。


「上から見て、両手の親指と人差指の間が刀身の延長になるように合わせる。小指と薬指あたりで握り込み、人差指に向けて力を抜く。右脚を前に出し、自然な位置に構えてみてくれ」


 偉そうに解説しているが、すべて里長の受け売りだ。


「おぉ、しっくりくるぞ。凄く振りやすい」


「その纏った練気を飛ばしてみよう。それが基本の剣風だ。魔法剣技を使うならそれが初歩だな。まぁ、ジュリアには造作ない事だろ」


 ジュリアは正面に構えたツヴァイハンダーを左脇に構えた。


『剣技 剣風!』


 剣風がでかい。

 少し先を飛ぶロック鳥を真っ二つにした。


「出来た!」

「剣がデカいと剣風もデカいな。確かに刀と比べて鋭さは無いけど、パワーがある。両手大剣の性質がそのまま出るんだな、面白い」


「剣には風属性の仙術を込めるの?」

「あぁ、色々試してみようかな。太陽光エネルギーも面白そうだ」


 ジュリアが大剣に仙術を一気に込める。


『魔法剣技 剣風!』


 ユーゴが放ったよりもデカい剣風が、山を吹き飛ばした。


「凄いな……山が無いぞ……」

「もう兵器だねこれは……」

「なかなかの威力だな! 次は横薙一閃を太陽光エネルギーの仙術で放ってみようかな!」


 ――山が無くならないか……?

 

 ジュリアは先程より溜めて構えた。


『魔法剣技! 横薙一閃!』


 とんでもない光線の斬撃が、山にぶつかって大爆発した。


「オレ達、とんでもない兵器を作り出したんじゃないか……?」

「うん……対多人数戦で大活躍するね……」


 斬撃を飛ばすのは危ない。 もうやめさせよう。


「よし……ジュリア、今度は、敵に直接斬り掛かってみよう。こないだオレがやってみせた、五月雨は予習したか?」

「あぁ、完璧だ。見たやつは分かりやすい」

「まぁ、完璧に真似なくてもいい。自分のスタイルを乗せるのも面白い」



 ワイバーンの巣に行くと、早速三体飛んできた。


「トーマス! 頼むよ!」

「了解」


 トーマスの守護術を纏ったジュリアは、ワイバーン三体に向かいながら仙術を込める。


『魔法剣技 五月雨(さみだれ)!』


 どデカい両手大剣の無数の剣戟。

 木の枝でも振り回すように、ワイバーン三体を切り刻んだ。


「おいおい、Sランクの魔物を一気に……」

「素晴らしいな、魔法剣技!」


 新たにワイバーンが三体飛んできた。


「僕にも斬らせてくれ!」


 トーマスも双葉を構える。


『魔法剣技 踊り独楽(おどりこま)


 繊細な剣技だ。

 踊るように回転して、風属性でワイバーンを三体斬り刻んだ。


「トーマスまで三体一気に……」

「トーマスは盾役にさせとくのもったいないな」


 今度はワイバーンが四体飛んできた。


「最後はオレが貰うぞ!」


 龍胆(りんどう)春雪(しゅんせつ)の二刀流だ。

 風遁を二刀に一気に込める。


『魔法剣技 双角(そうかく)


 二刀流の連続攻撃。

 四体を切り刻むまで止まらない。風遁を込めている為、斬れ味が段違いで速い。


「二刀流カッコいいなぁ……」

「剣技は奥が深いな……これは楽しいぞ」


 今日もワイバーンを十体仕留め、体皮を処理して火葬する。

 一体につき、二〜三個の魔晶石。25個あった、今日も大儲けだ。


「どうする? ヒッポグリフ行くか?」

「いくよ!」

「守りは任せてくれ」

「じゃ、オレはサポートと足止めだな」


 目的地に向け浮遊した。

 

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