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オーベルジュ王


 次の日の朝。

 いつも通り朝食を済ませてロビーに集まる。


「おはよー!」

「あぁ、おはよう。なぁ、王に謁見するってのに、鎧の下に着るような服着て行って大丈夫なのか?」

「いや、仙王の時もそうだっただろ」

「そうなんだよ。仙王様怒ってなかった……?」

「さぁな、お前らと一緒に出たからな」

「そうだよな……さっき起きて気付いたんだ。礼服なんて持ってないしな……」

「本当だね……僕も礼儀知らずだ……途中で見てみる? もう店も開く頃だよね?」

「城までの道中で寄ってみるか」

「私達は少しキレイめの服着てきたけど、二人が寄るならついでに私達も見てみようか」

「アタシらはいいだろこれで。そんなに気を使うような奴らじゃないよ、王なんて」

「気使うよそりゃ……」


 城に向かって歩いていると、仕立屋を見つけた。


「出来合いの服なんてないよなぁ……」

「まぁ、入ってみよう」


 ドアを引き四人で中に入る。

 奥に主人がいるのが見えた。 


「すみません、今すぐ礼服と靴が欲しいんですけど流石にないですかね?」

 

「いらっしゃいませ。どのような服をお探しで?」

「知識がないもので……今から王に謁見するのですが」

「かしこまりました。お客様の体型でしたら、あるもので合いそうですが、試着なさいますか?」

「よろしくお願いします」

「私達もお願いします」

「いいってアタシは!」

「まぁまぁ、皆で揃えようよ」


 少し採寸すると、店主は四人に合いそうな礼服を持ってきた。

 四人がそれぞれ試着する。


「いかがでしょう?」

「うん、ピッタリだ。けど、少し肩周りがキツイかな」

「そうなりますと、直しが必要になりますね」

「じゃ、これで大丈夫です。トーマスは?」

「僕もピッタリだ。けど、少し裾が短いかな……」


 ジュリアとエミリーは店の女性に着付けを手伝って貰い、試着を終えた。


「私はジャストフィットだよ! かわいいね、これ」

「この胸とウエストの締めつけ感が嫌いなんだよ礼服は……少しゆるくできないか?」

「まぁ、こういうものでございますから……では、少しだけ緩めましょう」

 

「今日は急ぎですが、またオーダーしに来ます!」

「いえ、この服を少し調整すれば良さそうですね。またお時間のある時にお越しください」

 

 駄目元で入ったが、何とかなるものだ。お金を支払い、礼服を着たまま店を後にした。


「二人共カッコいいね!」

「ホントだな、服が違うだけでこうも変わるのか」

「二人も凄く綺麗だね。どう見てもいいところのご息女だよ。まぁ実際そうなんだけども」

「これで、なんとか礼儀は保てるかな……」


 安心して城へ向かって歩き始める。

 革靴に慣れてない為歩きにくい。靴擦れが心配だが、治療術で治せばいいかと思い直す。


  

「なぁみんな、人族の王に何かイメージを持っているなら取っ払った方がいい」


 二人の王と面識のあるジュリアからの忠告だ。

 確かに、今は仙人だが元は大戦を経験した仙族で、しかも仙王の腹心だ。


「分かった……」

「緊張するね……」


 門番に話をつけ、後をついていく。

 ジュリアがいる為、話が早い。


 南門からでも見える荘厳な二つの城。

 様相の異なる左側の城の門をくぐった。


 天井の高い広すぎるエントランスは、ふんだんに陽の光を採り入れて明るい。

 石造りの階段を案内の後ろについて歩く。


「こちらが王の間で御座います」


 開いた扉の先には、人族でいうところの五十歳くらいの厳格そうな男性が玉座の前に立っている。


 四人はジュリアを先頭に、王の前まで歩みを進めた。


 

「やぁ、ちゃんジュリ! ブリヒサシじゃない? いきなりラファさんからのガミテー持ってくるからさ! クリビツテンギョのいたおどろだよ!」


 ――はっ? なんて……?


「相変わらず元気だな、レオナード」

「ちゃんジュリもさー、相変わらずワイカーなチャンネーじゃない!」


 ――思ってた人と違うな……。


 ジュリアの、人族の王というイメージを取っ払った方がいいと言った言葉を思い出した。

 なるほど、こっちの意味かとユーゴは合点した。


「レオナード、紹介するよ。アタシの仲間だ。ユーゴ、トーマス、エミリーだ」

「初めまして。突然の訪問にも関わらず、お時間を頂きありがとうございます」


 レオナード王は四人の前まで進み、一礼した。


「ちゃんボク……コホン……失礼。私はウェザブール王国の王の一人『レオナード・オーベルジュ』だ。仙王のガミテー……あっ、いや、手紙を携えた客人と会わぬ訳にはいかんだろう」


 ――無理して喋ってるな……。


「レオナード王、いつも通り喋って頂いても大丈夫ですよ……?」

「あら、そーぉ? じゃ、こっちのヤーへーでべシャロウじゃないの!」


 ――部下大変そうだな……。


 王の玉座の横の部屋に案内され、円卓に座った。

 紅茶が運ばれてきた。香りが素晴らしい。


「で? ちゃんボクに何の用?」

「いや、せっかく王都に来たからな。お祖父ちゃんが会うと良いって手紙を書いてくれたんだ。あとレオナード、皆に分かるように喋る努力だけしてくれ……」

「あぁ、了解だよ。努力はする!」


 王とジュリアの遣り取りが終わるのを待って、エミリーが口を開いた。


「初めましてレオナード王。私はエミリア・オーベルジュと言います。イザック・オーベルジュの孫で、リヴィアの娘です」


 レオナード王の顔が変わった。


「十数年前のアレクサンドの件か?」

「はい、お母さんのお付きのメイドが屋敷から連れ出してくれました。そのあと、ジュリアに助けてもらい、今があります。イザックの屋敷はその後どうなったかを教えてもらいたくて……」


 言いながらエミリーの顔が曇る。

 聞きたいような聞きたくないような、そんな複雑な感情なのだろう。 


「そうか……アレクサンドが国内で悪さをしているのは知ってたよ。けど、ラファさんの孫だ。見て見ぬふりをしていたのは事実だよ。でも、奴はとうとう王族に手を出した。それが、イザックの屋敷だ。流石にラファさんに処分を要求したよ」

「少しの可能性に賭けて聞きに来ました。あの後どうなったんですか?」


 エミリーの問いかけに、レオナード王が淡々と話し始めた。


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