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マモンとモレク 2


 今までは生活費を稼ぐ為に依頼をこなしていたが、ショーパブを開くとなれば多額の資金がいる。Sランクの冒険者にはなっておきたいが、マモンとモレクの様なキワモノコンビと一緒に依頼を受けてくれる者が居るのだろうか。

 そう思ってギルドに足を踏み入れたが、すぐに男に声をかけられた。


「おやおや、キミたち魔族だね? ボクと組まないか? いい冒険者がいなくて困ってたんだよ」


 仙族の男、アレクサンドとの出会いだった。


「あら、モノ好きねアナタ」

「あなたは仙族ね? 青い眼は隠してるのかしら?」

「あぁ、王都でこの眼を晒したら、怖がってレディが逃げるんだよ。仕方なく隠してるんだ」

「ふぅん、どんな依頼を受けるの?」

「これを見てくれ、SSランクだ」


 アレクサンドはSSランクの依頼に挑戦したいらしかった。受ける依頼はSランクで十分なのだが。


「ボクの本職は盾役だ。回復もできる。いや、攻撃もできるんだけどね。ボクがキミたちを守る、キミたちはひたすら魔物に攻撃してくれたらいい」

「あらそう。じゃ、手を組もうかしら? 私達は守りに自信がないから」

「決まりだね。相手は決めてるんだ」

「用意がいいわね」

「あぁ、相手は『グリフォン』だ」


 言われても分からない。

 アレクサンドとの三人パーティーでグリフォン討伐の依頼と、ランクアップ試験の手続きを終えた。

  

「グリフォンは、ライオンに大鷲(おおわし)が生えた生物だと思ってくれたらいい」

「ちょっとワタシ想像できないんだけど……」

「ボクが仙術で、グリフォンの動きを止める。良くて五秒ってとこかな」

「分かったわ、いいタイミングがあったら言うわね」

 

 

 王都の西門から出て、依頼場所である西のパラメオント山脈の麓に向かった。


「荘厳ね、パラメオント山脈は……」

「グリフォンはこの麓にいるらしい、というより、もう魔力を感じるな……」

「えぇ、美味しそうな魔力だわ」

「マモン、やめなさいよ? こんなの吸収したら魔力障害を起こすわよ?」

「大丈夫よ、ワタシなら」


 見えないが感じる、とてつもない魔力を。

 という事は、向こうも感じているという事だ。


 上半身は大鷲、下半身がライオンの魔物が、猛スピードで三人に向けて飛来した。途轍もない風魔法と共に。


「いきなりか! ボクの周りに来てくれ!」


『守護術 堅固な城壁(ロバストランパーツ)


 アレクサンドは見るからに上質な金属盾を構え守護術を張ると、グリフォンの風魔法を弾き飛ばした。


「言うだけあるわね、すごい盾だわ」

「守りは任せてくれ。キミたちは攻撃だ」

「分かったわ。マモン、私は風であなたの炎を強化するわ」

「えぇ、了解よ。少し時間をちょうだい。アレクサンド、タイミングは言うわね」


 アレクサンドは、グリフォンの鋭い爪の猛攻を受け止めている。しかし、アレクサンドの傷が増えていく。


「待たせたわね! いくわよ!」

「よし、離れて動きを止める!」


『仙術 途絶(フリーズ)


 あれだけ爪を振り回していたグリフォンの動きが、アレクサンドの仙術により動きを止めた。


『風魔法 魔神の突風(デビルズブラスト)

『火魔法 煉獄(パーガトリー)


 マモンの火魔法が螺旋を描いて直進する。モレクの突風と重なり合うと、更に激しく燃え上がってグリフォンを襲った。連携魔法、効果は数倍だ。


 炎が消える頃には、グリフォンは跡形も無かった。


「おいおい……とんでもない魔法を使うんだな……SSのモンスターを一撃で……」

「魔法が効かないモンスターじゃ、ワタシ達はいらない子だけどね」

「前魔王はこのレベルの魔法をポンポン放ってたわよ。私達はまだまだね」


 依頼品の嘴と爪、魔晶石が四つ落ちている。

 あの魔法で燃え尽きない爪、アレクサンドはよく凌いだ。

 


 ギルドに戻ると、SSランクの報酬は貴族街に行ってくれと言われた。ギルドの管轄ではないらしい。


「貴族街か……王族の城じゃなければいいか」


 アレクサンドは、偽名を使っているようだった。理由は知らないが。


 無事に報酬と、SSに更新したカードを受け取った。二人で約400万ブール、一気にショーパブの開店資金以上のお金を手に入れた。


「一気に集まったわね。明日から開店に向けて動き出すわよ」

「何か店を開くのかい?」

「えぇ、ショーパブを開くの。これはその開店資金に当てるのよ」

「なるほどね。ボクも手伝おうか? こう見えて仙神国では色々な店を経営していたんだ。レディ達のパブも手掛けてたから、役に立てると思うよ」

「そうなの? それは助かるわ。まだ出会ったばかりだから資金管理は任せられないけどね」

「もちろんだ。ボクはそれ以外をマネジメントするよ。依頼を受けてくれたお礼だ」

「じゃ、頼りにしてるわね」


 

 言うだけあってアレクサンドの手腕は凄かった。半年後に開店することができた。


「店の名前は『リバティ』よ。自由とか解放って意味なの」

「私達にピッタリの名前ね。アレクサンド、本当にありがとう」

「お安い御用だよ。開店まで共にしたんだ、見守らせてもらうよ」


 アレクサンドはその女癖の悪さから女からは嫌われていたが、仲間と認めた者には優しく信頼できた。


 ただ、自分の不利益になるような者には容赦なかった。ギルドや街中で絡まれると、路地裏に連れ込んで殺した。パーティーごと消すこともあった。

 虫でも踏み潰すかのように当然な顔で。


 

 店はすぐに軌道に乗った。

 前の店の二人の客はもちろん、口コミで広がり多くの客で賑わった。


 

 それから二年後、18歳になったあたりからマモンは変わり始めた。

 男が化粧をしてショーパブで働いていると、客から罵られる事はよくある事だった。いつも笑いに変えたり、軽くあしらったりしている。少し傷つきながらも。

 マモンはいつも、何を言われても少しも意に介さず笑って返していた。


 しかしある日、マモンが客を外に連れ出して暴行し、重症を負わせた。


「どうしたのマモン!? 何されたの!」

「男のくせに気持ち悪いって、怒りが抑えられなかったの」


 一番言われ慣れている言葉だ。

 人を傷つけられないマモンが人を殴った。何度も何度も、相手の意識がなくなるまで。

 客には回復術を施して帰ってもらった。


 そして徐々に店にも出なくなった。

 マモンは攻撃的になり、外門近くの裏路地の無法者達に喧嘩を吹っかけては半殺しにしていた。アレクサンドも一緒だったらしい。

 マモンとアレクサンドに逆らうものはいなくなった。


「マモン……どうしちゃったの?」

「うるさいわね。もうあの店アナタにあげるわ。もう飽きたの」

「あんなに優しかったあなたが……もう一度私とやり直す気はない?」

「うるさいって言ってるのが聞こえない? 殺すわよ?」


 ――違う……もうこの子はマモンじゃない。


 徐々に変質する魔力には気付いていた。マモンはもう別人の様に変わってしまった。


 そして、七年ほど前。

 マモンはアレクサンドと共に王都を出ていった。


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