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ウェザブール王都

 次の日の夕方、ウェザブール王都に着いた。


 レトルコメルスよりも厳重に囲われた都市だ。豪華な門には、とんでもない列が出来ている。やはり王が住む場所だけあって、検問も厳しく行われているようだ。

 

 ユーゴ達はいつも通り通行手形所持者用の通路を通る。

 彼等は若い、ジュリアも見た目は三人とそう変わらない。SSランクのカードを見せると驚かれる。


 冒険者カードで通行手形所持者用通路を通るには、Aランク以上でなければならない。低ランクカードは依頼品を金で買えるからだ。高ランクの依頼品も金で買えるが、相当高い。

 Aランク以上のカードを所持している者は、相応の実力者か金持ちという事になる。

 ということで、SSランク所持者の四人は、とんでもない実力者という訳だ。

 ちなみに、冒険者カードは()()()偽造ができない。詳細は知らないが、多分魔力が関係しているんだろう。

 

 

 ウェザブール王都は、仙神国に似た町並みだが自然が少ない。レトルコメルスとはまた違った大都会だ。

 人族だけではなく魔族も見かける。しかし、化粧はしていない。すごく背の高い角のある人も見かけたが恐らくあれが鬼族だろう。

 鬼人が暴れて以降、数百年の平和だ。人族の世界に興味がある他種族も移住しているのだろうか。


「私は12年ぶりかな。やっぱりよく覚えてないな」

「アタシはエミリーと出てからは数回しか来てないな」

「とりあえず、いいホテル探そうか」

「とりあえずは一週間くらい宿泊予約しようか?」

「そうだね、ご飯食べながら相談しよう」


 王都は見事に聳え立つ二つの城の周りを囲むように発展した街だ。東西南北の四つの門から、二つの城に向けて街道が整備されている。その街道に沿って、城に近づくほど豪華な建物が増えていく。

 門に近い場所でも街道沿いは比較的綺麗な建物が多いが、少し路地に入ると華やかな街道沿いとは違った印象を受けた。

 それでもユーゴにとっては大都会だ。路地裏の方が合っているかもしれない。


「とりあえず、ホテルは良いとこに泊まりたいな。城に近い場所に泊まろうよ」

「そうだな。ベッドと布団はフカフカな方がいい」


 ただ、ホテルの数がすごい。

 選べずにいるととある店が目に入った。


「お、いい感じの酒場があるな」

「本当だ、見たことあるような店構えだけど」

「そりゃ見たことあるはずだよ。店名が『冒険野郎』だ」

「ほー! 王国内に店舗広げてるんだね!」


 ならホテルは決まった、冒険野郎の道向いのこのホテルにしよう。サウナがあるかどうかの確認が必要だ。


「うん、サウナはあるみたいだ。セキュリティも当然しっかりしてるな。でも、武具を預かっておいてください……」

「トラウマだね、ユーゴ……」

「じゃ、お風呂入って酒場に集合しようか」

「また後でね!」



 脱衣所で服を脱ぎ捨て、洗い場で汗を流す。 

 かなり広い浴場だ。サウナと水風呂が温度別に三種類ずつある。一番熱いサウナに入ってみた。


「うぉぉ、これは熱いな……レベルが違うぞ……でも、いつもよりドライだな。水かけていいのか?」


 少しすると、一礼して誰かが入ってきた。


「皆様、本日担当させていただきますボブです。熱風エンターテイメントをお楽しみくださいませ」


 ――なんだ? 何が始まる?


 ボブは大量の焼石に、水を回しかけた。


『ジョワァァァ……』


「あっつ……温度が高い分熱いな……」

「これは今までで一番熱いね……」


 するとボブは大きなタオルを振り回し、客に向けて仰ぎ始めた。


「うおぉぉぉ! アッチィィー!」

「ダメダメ! 火傷するってこれ!」


 熱風エンターテイナーボブ、二つ名に偽り無し。これは水風呂が凄そうだ。


「皆様、おかわりはよろしいですか?」


 ――なんだと……?

 

 ボブからの挑戦だ。SSランクの名がすたる、受けて立とう。


「よろしくお願いします」


『ジョワァァァ……』


 ボブがタオルを振り回して、さっきより強く仰いできた。


「アッチィィー!!」

「ヤバイヤバイヤバイ!!」


 二人はサウナ室から飛び出て、一番冷たい水風呂に飛び込んだ。


「ヒャアァァ! 冷たっ!」


 一気に火照った身体が冷やされる。冷たすぎるのか、徐々に痛みを伴ってきた為、一つ隣の水風呂に飛び込んだ。


「はぁ……体が大パニックだな……完敗だよ、ボブ」

「今までで一番水風呂が気持ちいい……」


 このあとの休憩は過去イチだった。


 ――凄かったな……熱風エンターテイメント……。


 さすが王の住まう都のサウナだ、素晴らしかった。


「いやぁ、凄かったな……ビールが欲しい」

「酒場までの導線は今まで通りだね。向かおうか」


 

 レトルコメルスにもあった大衆酒場『冒険野郎』はここでも皆を楽しませてくれそうだ。

 中に入ると、エミリーとシュリアはすでにビールを飲み干していた。


 エミリーはいつも通りだが、ジュリアもオシャレに着飾っている。トーマスからのプレゼントだ、本当に良く似合っている。

 暑くて大股を開いていることに目を瞑れば。


「お先に頂いてるよ。アタシ達の身体は今、パニック状態だよ……」

「うん、熱風エンターテイナーのミアにやられたね……」

「そっちもか……こっちはボブにやられた……早くビールをくれ……」


 ビールで火照った体を冷やす。五臓六腑に染み渡るという言葉を、ここまで体感した事は無かったかもしれない。


「ほぅ、こっちの冒険野郎もまたいいな」

「メニューが一緒な訳じゃないんだね!」


 食事と酒を楽しみながら、この先一週間の予定を立てよう。

 

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