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プライベートな事


 久しぶりに昼寝をしたが、寝すぎて身体がダルい。夕飯にはまだ少し早いか、軽くストレッチをして部屋を出た。

 

 ――トーマスいるかな。あぁ、魔力を感じるな。

 

 トーマスの部屋をノックする。


「ただいま、トーマスもランチ行ってたのか?」

「うん、ちょっと前に帰ってきたよ」

「どうだった?」

「うん、僕ジェニーちゃんの事、最初はバカな子だなぁって思ってたんだ。でも、あの子みたいにマイペースでプラス思考な子と一緒にいたら、すごく癒やされるんだよね……」

「そうか、なら良かった。いい子だもんなあの子」

「エマちゃんと何かあったの?」

「いや、すごく楽しかった。でもな……」


 少し考えたが、ストレートにそのままをトーマスに伝えた。


「実はな、エマの姓が……ベルフォールらしいんだよ」

「ベルフォール?」


 トーマスは少し止まった。


「ベルフォール!? え!?」

「うんそう、王家の姓だ」

「え!? 平民が名乗れる姓じゃないよね? てことは……」

「うん、そうなんだよ。両親の事は覚えてないらしいんだ。王都から両親がここに移住して、何かがあったんだろうな。小さい頃から娼館で育ったらしいから」

「王族の子なんだ……でもこの辺であまり名乗らない方が……」

「うん、トーマスも同意見か。オレもそう思ってそう伝えた。でもなぁ……」

「どう伝えようもないもんね……」

 

「……いや、エマは頭のいい子だ、事実を伝えても受け入れて、相応の対応をすると思うんだよなぁ……」

「うん、あの子は頭がいい。そうか……伝えても良いのかもね。その方があの子の今後に良いのかもしれない。別に誰に追われてる訳でもないんだ」

「トーマスも悩むか……相談してよかった。ちょっと考えみる」

「ユーゴは今晩どうするの?」

「オレは晩飯食って、エマの店行こうかなって思ってる」

「僕も一人でも行こうと思ってたんだ。一緒に行く?」

「おう、そう思ってエマにはトーマスと一緒に行くかもって言っといた」

「決まりだね、夜は冒険野郎だね」

「もちろん、あの店は外せない」


 いい時間だ、冒険野郎に向かった。と言っても道向かいだが。


 もう、入るだけで落ち着く。

 エミリーとジュリアの魔力を感じる。


 二人の席に同席してビールを注文した。

 

「お前らもか。考える事は一緒だな」

「あ、二人共! 楽しんでる?」

「うん、この店は外せないね」


 ビールをグイッと飲む。

 昼寝でだらけた身体に染み渡る。

 

「おいユーゴ、お前今日、競馬場辺りにいたよな?」

「あぁいたよ、あの辺のパスタ屋に行ったんだ。二人の魔力は近かったな、気づいてたよ」

「それはいい、なんで魔力を抑えた?」

「え……? そんな事してないよ……?」

「おいおい、魔力を抑えてアタシらを避けただろ。嘘はいけないよ」

「いや……それはプライベートな話なので……」


 ジュリアが鋭い目でユーゴを刺すように見つめる。ユーゴは堪らず目を逸らした。


「まぁいい、アタシが信用できないんだな。分かったよ」

「いや違う! 言うよ、女の子とデートしてたんだ……」

「いや、分かってたよ。なんで嘘ついた?」

「なんか言われそうで……」

「責められるような事してたのか? そうじゃないだろ? 別に責めてる訳じゃない。男だ、そういう事もあるだろう。でも嘘はつくなよ、仲間だろ」

「はい……ごめんなさい……」


 それを聞いて二人は笑い出した。


「ジュリアの言った通りだね!」

「キャハハッ! ユーゴの顔見た!? ごめんよ、からかっただけだ!」


 ――は……?


「ちょっとジュリア、ユーゴのテンション下がってんじゃん。ユーゴ意外と泣き虫なんだからイジメちゃダメだよ?」

「はぁ……おかし……ごめんごめん、あからさまに魔力を内に留めただろ? その先を見たらいい女がいたんだよ。これを問い詰めたら、正直に言うか言わないかをエミリーと賭けてたんだよ!」

「私の負けだ……明日のランチは奢るよ……でもジュリア楽しんで尋問してたじゃん! あれは白状するって! 卑怯だよ!」

「それはあるかもしれんな! 楽しみすぎたよ」


 ――コノヤロゥ……。

 

 しかし、これはあまり言い返さない方がいい。ユーゴは一瞬で練ったプランを実行した。


「嘘はつかないようにします……ごめんなさい……」

「いや、ユーゴ……? 分かればいいんだよ……?」

「いや、オレみたいな奴は、嘘ついて皆に迷惑かけるのがオチだ。すまなかった」

「ちょっと待ってくれユーゴ……アタシの悪ノリだ、悪かったって、あまりしょげるなよ……」

「いや、オレが完全に悪い……二人の叱責は受けるよ……好きなだけ叱ってくれ……」

「いや……頼むから、普通に飲もうよ……? アタシが悪かったって……」


 ――フフッ、勝った。


 徐々に機嫌を()()()()戻し、普通に宴会になった。

 ユーゴの勝利だ。


「で、二人のギャンブル運はどうだ?」

「んー、エミリーはボロ負けだが、アタシはチョイ勝ちだな」

「まぁ、私はまだまだお金あるからね! スレイプニルレースでは少し取り戻したよ!」

「今日もカジノに行くの?」

「当たり前だろ! もうディーラーのジェームスの傾向は分かった。今日も勝ちだね」


 ――誰だよジェームス。


「昨日はバーで冒険者達に魔人達の話を聞いたんだ、何年か滞在してたみたいだな」

「うん、カジノでも聞いてみたけどここ一年以上見てないって言ってたね」

「そうか、あの赤髪と金髪は目立つしな。父さんがゴルドホークを出たのが一年と少し前だ、だとしたら既にここを出て出会ってると見るのが自然だな」

「魔都シルヴァニアの方に拠点があるのかな? だとしたら近い王都の方がいい情報があるかもね」


 毎晩の会議は欠かさない。

 ユーゴ達の目的はあくまでも奴ら三人だ。


「よし、ジュリア! 今日もジェームスとの死闘を繰り広げるよ!」

「あぁ、ヤバくなったら最悪色仕掛けだ! 行くよ!」


 似たものコンビだ。

 エミリーはジュリアに育てられたようなものだ。あぁなるのも当然だろう。


「あいつら、当たり前のようにここのお代払わずに行ったな……」

「まぁそこまで高くもないしね。僕たちも行こうか」


 お代を支払い、店を後にした。

 

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