表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/241

戦闘力倍増勉強会


 朝には武具の整備は終わっていた。


「皆、出来てるよ」


 武器が朝日に反射して眩い。

 革の質まで新品に戻ったようだ。


「えぇ!? アタシのツヴァイハンダー光ってるぞ!」

「うん、あんまり整備されてなかったね。この剣は斬るのに特化した物じゃ無いけど、斬れるように砥いだから気をつけてね。あと、ジュリアの篭手にフェンリルの魔晶石埋め込んどいたよ」

「魔晶石を篭手に? なんで?」

「龍族の戦闘法だよ。魔晶石で魔力の増幅をするんだ」

「なるほどな。確かに効率的だ」


「よし、出発しようか!」


 昨日の復習だ。

 風のエネルギーを取込み、練気を混ぜて浮力を得る。そして、それを推進力にして進む。


「これは快適だね。使う気力も少なくて済む」

「うん、走ってもそこまで疲れないけど、これはもう疲れ無しだな。さすが自然のエネルギー、燃費がいい」

「いや、これは練気術のおかげだよ。普通はここまで速度も出ないし、もっと気力を消費する」


 ジュリアはすでに練気術を使いこなしている。剣にも練気を纏えていた。

 自然エネルギーを気力に混ぜるというのが、練気を武具に練る、練気に魔力を練る行為によく似ているからだ。


 ユーゴ達も昨日の焚き火や湖、日光や月明かりの自然エネルギーを体内に取り込みながら過ごした。それを色んな術に組み込んでみるのが今日の課題だ。

 

「あ、ユニコーンが歩いてるよ」

「よし、アタシのニューツヴァイハンダーの試し斬りだ。練気を纏ってみよう」


 錬気を綺麗に纏えている。さすがは仙族の誇る天才だ。方法が似ているから習得しやすいのもあるが、それだけじゃなくセンスがいい。


 あんなに大きな両手大剣を、小枝でも振り回すように軽々と振り回している。


 そのままユニコーンを綺麗に両断した。


「おいおい、怖いほど斬れるぞ……凄いな練気術。いや、それだけじゃない。トーマスの整備がすごいんだ」

「今まではどういう風に剣を使ってたんだ?」

「これも自然エネルギーだ。風のエネルギーで剣に浮力を持たせて軽くする。斬りつけるタイミングで重さを持たせるんだ。アタシの剣は重いからな。刀には要らないテクニックかもな」


 ジュリアの話では、火や水、風などのエネルギーだけじゃなく、自然界の治癒力、地を動かす力、岩や金属の硬さ、音や光の速さ、引力の重さ、様々な自然エネルギーを使うのが仙術だそうだ。


「なるほど、普段の呼吸で色々なエネルギーを感じないとな。勿体ないな」


 ジュリアが風属性の仙術を実演してくれた。


『仙術 風魔の罠(ジントラップ)


 ペガサスが無数の風の刃に飲み込まれた。

 跡形もない。


「魔晶石の増幅効果も凄いけど……気力を練気に置き換えたら別物になったぞ……いい事教えてもらったよ」


「凄いね……よし、風遁に取り込んでみよっか! まずは風刃ね!」


 練気に風属性の魔力と、風の自然エネルギーを練り込む。それを魔力に乗せて放出した。


『風遁 風刃(ふうじん)!!!』


 三人で放った風遁の基本術が、とんでもない風切音と共にユニコーンを切り刻んだ……。


「ちょっと待ってよ……風刃でこの威力って……」

「嵐塵とか使うのが怖いんだけど……」


 後ろに流れた風刃が別のユニコーンの脚を切断した。


「そうだ、自然の治癒エネルギーを治療術に組み込んでみるよ。ユニコーンの脚、くっつくかな?」


 エミリーがユニコーンの脚に治療術を掛けた。


『治療術 四肢再生』


 ユニコーンの脚が元通りになって走り去って行った。


「くっついた!」

「おいエミリー! どんな回復術だよそれ!」

「回復術の上位で、治療術だよ! これ強化術にも組み込んだら別物になるね。ねぇ、ジュリア、相手の足止めをするような術はないの?」

「あるよ。大地の自然エネルギーを気力に混ぜて、地面から相手に干渉させて動きを止める」


『仙術 途絶(フリーズ)


「あれ! 動けない! 遁術の影縛りより上位だねこれは。飛んでる相手には無理だよね?」

「いや、空気を経て干渉すればいい。ただし、地上より格段に効果は落ちる」

「こんなの食らったらやばいな……」

「いや、相殺させればいい。静のエネルギーには動のエネルギーだ」

「なるほど……凄いね自然エネルギー」

 

 四人の勉強会は続いた。


 結果、遁術、治療術、強化術、守護術、全てにおいて自然エネルギーを組み込むことで、全くの別物に進化した。

 強化術の進化で剣技も恐ろしくパワーアップした。自身のスピードアップからの斬撃が凄まじい斬れ味を生んだ。

 

 ジュリアは自分の仙術に練気術を組み込むことで、三人と同じような効果を得た。


「一日ですごくパワーアップした気分だ」

「アタシの44年間は何だったんだ。練気術早く教えてほしかったよ」

「ほんと、仙族と龍族が手を組んだら凄いことになるよ」

「ということは、あの三人も同じパワーアップをしてるってことだね。歯が立たないはずだよ」


 ――あ、そうか……。


「ホントだな。それプラス魔族の戦闘法だ。強いはずだ……」


 しかし、四人もかなりパワーアップした。対抗出来るはずだ。

 

「ジュリア、仙術を人に教えてもいいのか? 龍王は仙族や人族には適した戦闘法だから、教えてやっても良いって言ってたけど」

「あぁ、龍族は友好関係にあるからな。問題ないよ」

「じゃ、それぞれの国に帰ったら広めたいね。国力が更に上がるよ。僕らの師匠がこれを取り入れたらどうなるんだろ……怖いよ……」


「ジュリアも龍族の移動法をマスターしといた方がいいな。空を駆ける事が出来れば空中戦での急な方向転換ができるからな。あと、錬気術の精度が跳ね上がる」

「なるほどな。移動中に練習するから教えてくれよ!」


 


 夕方前にはレトルコメルスに着いた。

 術を試しながらゆっくり移動したつもりだったが、行きより早く着いた。凄い進歩だ、新しい戦闘法はこうも自身を強くするらしい。


「ギルドに依頼品持っていくか」


 ジュリアは久しぶりの冒険者ギルドだ。

 懐かしそうにキョロキョロしている。


「おう、こりゃ沢山狩ってきたな。ちょっと待ってくれよ」


 かなりの数を報告した。

 勘定が終わるまで依頼書の掲示板を見て過ごした。


「ペガサスとユニコーンが合わせて15体、後はケルピーか。全部で550万ブールだな」


 それでもフェンリル一体分ほどだ。SSランクの魔物の報酬は破格だ。確かにあの強さだ、当然ではある。

 


「行きの分もあるけど、三人は150万で、ジュリアに100万ブールでいいか?」

「いいのか?」

「うん、問題ないよ」

「ジュリア、久々にカジノ行こうね!」

「そうだ、カジノ!」


「では、オレら二人は振込で、彼女らは現金で」

「あいよっ」

「あ、そうだ、ジュリア知ってた? SSランクは無利そ……ムゴッ!」


 急いでエミリーの口を塞いだ。


「いや、何でもないんだジュリア」

(おい、絶対にジュリアには言うなよ。破ったらギャンブル禁止令出すからな)

(ムグッ……ワガッダ……)


 ジュリアは不思議そうな顔をしたが、聞いてこなかった。債務者が二人に増えるなど、考えただけで身震いする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ