表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/241

仙術の基本


 さて、レトルコメルスに向けて移動だ。

 二日はかからないだろう。


「オレらは高速移動で走るんだけど、仙族はどう移動するんだ?」

「アタシたちは基本的には浮遊術だね。走って移動もするよ」


 魔人とシュエンも浮遊術を使っていた。仙族だけの力という事でも無さそうだ。


「僕らも出来るようになるのかな?」

「あぁ、別に仙族の特殊能力じゃないよ。訓練すれば出来るはずだ。お前らはどういう術で移動するんだ?」

「私達は練気術で高速移動するんだ! 空も駆けるよ」

「レンキジュツ?」

「そうだ、移動しながらお互いの術を教え合わないか? お互いの戦闘力が上がりそうだ。じゃ、まず今日の野営地を探してそこで話そう!」


 四人で走って北へ向かう。

 ペガサスやユニコーンの捕獲も忘れない。今日の食料と依頼品の採取だ。

 ジュリアの戦闘はまだ見ていない。まずは三人の戦闘を見学したいらしい。


 

 

 日が西に傾きかけている。

 いい感じの湖がある。特に強い魔物の気配は感じない。ケルピーの例がある、邪魔はされたくない。


「ここにするか。まだ日没までには時間があるな。ジュリア、仙族の戦闘法を教えてくれるか?」

「分かったよ!」


 ジュリアの講義が始まった。


「アタシたち仙族は『仙術』で戦う。その基本は『呼吸法』にある。仙術は自分の魔力や気力に自然のエネルギーを取り込んで発動させるんだ」


 ――自然のエネルギーか。壮大だな……。

 

「焚き火をしているときの火や、水浴びの水、吹き当たる風、陽の光や月の明かり、全ての自然エネルギーを呼吸で取込み、全身に蓄えておくんだ」


 その呼吸法が出来るかどうかだ。教わってすぐにできる様な事ではなさそうに感じる、


「例えば、火魔法は魔力を火属性に変換させて放つだろ? 仙術は、火のエネルギーそのものを魔力と共に放つ。浮遊術は、風のエネルギーを浮力に使う。飛んで移動するから常に風を感じるだろ? それを普段の呼吸で取り込むから、風のエネルギーが切れることなく飛び続けられるんだ。すごく簡単に言えばそういう原理だ」

「その呼吸法、僕らもできる?」

「コツさえ掴めば大したことはないんだけどな。呼吸は誰でもするもんだから。知らずに使ってるかもしれないぞ?」


 ――へ? どういうことだ?


「お前ら、無意識に風属性の術を多く放ってないか? 火や水に比べて、風は一番身近なんだよ。常に感じられるからな」

「確かに、風属性が圧倒的に多いかもな……」

「この呼吸方は鼻から吸って自然エネルギーを取込み、口から吐くのが基本だ。まずは意識して風のエネルギーを感じてみてくれ、深呼吸すれば分かりやすい。魔法が使えるお前らなら無意識に自然エネルギーを感じているはずだ」


 目を瞑り、身体全体に当たる風を感じる。耳で音も感じる。鼻で大きく息を吸ってみる。肺が大きく膨らむ。

 

 ――なるほど、これの事かな。


「肺の中に風属性の魔力に似たものを感じるな」

「うん、そうだね。分かるよ」

「あ、ホントだ。これの事か」

「そうだ。それを肺から体内に取り込むんだ。身体の中心に溜め込むイメージだ」


 属性の魔力を思い浮かべると、とても分かりやすい。分かれば扱いは同じだ。


「うん、風のエネルギーが身体の中にあるのを感じる」

「それを気力と混ぜて浮力に変えるんだ。すると、体が浮く感じを得られるはずだよ」


 風エネルギーを気力と混ぜる。

 いつもの様に練り込む感じで良いだろう。


 すると三人は、浮くというよりも身体が空に()()()()()()


「は!? お前ら何した!?」


 三人は高く打ち上げられてから駆けて降りてきた。


「あぁ、ビックリしたよ……」

「何が起きた……?」

「多分だけど、僕らは自然エネルギーを気力にじゃなくて『練気』に混ぜたんだよ。いつもの癖でね……」

「なるほど。混ぜる練気が多すぎたのか……じゃあ、これをいつもみたいに練気を小出しに使えばいい訳か」


 集中だ。

 練気を小出しにして、風エネルギーに混ぜ込む。

 

 ――おぉ、身体が浮いた!


「浮いたぞ!? なるほど、練気の量の調節で飛べるんだ」

「なるほど、体が軽いね。この状態で迅速かけたら相当早く動けるね」

「うん、練気術と仙術ってすっごく相性が良いのかも」

「おい! アタシにもその練気術っての教えてくれよ!」


 ジュリアは飲み込みが早かった。練気術をすぐに体得した。


「おぉ、これはすごいな……体中にパワーが漲ってる……これを自然エネルギーに混ぜたら凄そうだ。とりあえず浮遊してみるよ」


 と言って、ジュリアは空高く打ち上がった。


「ほら! そうなっちゃうよな!」

「あぁ、ビックリした……練気術凄いな……」

「お互い教え合ったら、私達もっと強くなるよ!」


 錬気の基礎術も仙術も基本は似ている。ユーゴ達もジュリアも、そこまで苦労しなさそうだ。


 明日以降、移動しながら各自練習することにした。

 


 

「よし、いい汗もかいたし、入りますか!」

「じゃあ、僕はご飯の用意するよ」

「私とジュリアは寝る用のテント張るね!」

「寝る用の……? 他に何があるんだよ」


 各自作業に入る。

 ストーブに火入れし、テント内は温度十分。エミリーがリクライニングチェアも設置した。ジュリア用にもう一脚買わないといけない。

 皆が水着に着替えた。


「おいおい、何するんだよ。湖で水泳か?」


 ジュリアの水着姿は眩しかった。

 しなやかな筋肉で引き締まった体、腹筋は見事に割れている。着痩せするタイプらしく、胸がはち切れんばかりだ。

 エミリーも新しい水着だ、可愛いらしい。


「こら、二人共。エロい目でジュリアを見ないでくれる……?」

「おいおい、水着姿を見たいがために着替えさせたのか?」


 二人の冷たい目で我に返った。


「ささっ、どうぞどうぞ! 最高の状態でございますよ!」


 四人でテントサウナに入る。四人でちょうどだ、五人はキツいだろう。

 焼けた石に水を掛ける。


『ジョワァァァ……』


「うぉー! あっつ! 火傷しないかこれ!?」

「大丈夫。このあとご褒美が待ってるから!」

 


 汗だくで外に出た。

 そのまま湖にダイブ。


「ふぅ……冷たい……ん? 暖かくなってきたぞ?」

「そうなんだよ、不思議なんだこれ」


 湖から上がり、リクライニングチェアに寝転ぶ。ユーゴは近くの岩に座った。


「これは……おいおい……確かにヤバいな……」

「はい、ジュリアもハマったね!」

 


 数セット終え、シャツに袖を通す。


「いやぁ、考えを改めざるを得んな。サウナ後のシャツは別物だ。これからは毎日洗って着替えるよ」

「ついでだから僕が洗うよ。ジュリアはそもそも洗うという行為が苦手そうだ」

「トーマス、よく分かってるな。その通りだ、頼むよ!」

 


 しっかりととのい、トーマスが下ごしらえしていた食材に火を入れる。アツアツのうちに頂こう。


「今日は馬肉の照り焼きと、馬刺し、生レバーだ。ワインも湖で冷やしてるよ」

「え……馬の魔物を生で食べるのか……?」

「美味しいんだよ! 塩でたべてみて!」


 ジュリアは、恐る恐る馬刺しを口に入れた。


「うんまっ! なにこれ! 生レバーもうんまっ! てりやきも! うんまっ!」


 目を輝かせて馬のフルコースをワインで流し込んでいる。


「こりゃ楽しい旅になりそうだ……」

「お口に合って良かったよ」

「トーマス、アタシの旦那にならないか!? あっ、だめだ、人族に手出したらお祖父ちゃんに怒られる……」

「トーマス、ジュリアの苦手なこと全部してくれそうだもんな……」


 食事を終え、焚き火を囲みワインを飲んでいる。


「ジュリアは何歳なんだ?」

「44歳だよ」


 見た目は人族で言うところの二十歳過ぎくらいか。ユーゴ達より少しお姉さんといった感じだ。


「アレクサンドとは異母兄妹なんだ。千歳くらい離れてるしね」


 千歳差。感覚ではもう兄妹って感じでもなさそうだ。


「冒険者のランクは?」

「SSランクだ」

「オレたちも数日前SSになったんだ」

「SSの四人パーティって凄いよね、多分」

「うん、何でも倒せる気がする。あ、今晩見張りしながら、皆の武具の整備しとくよ」


 トーマスはヤンガスの元で武具の整備を叩き込まれた。新しい体皮が手に入れば革のなめしもできるらしい。今の防具の革の交換もお手の物だ。


 ユーゴはトーマスと交代で見張りだ。

 ジュリアにも荷物持ちをしてもらってる。ゆっくり休んでもらおう。

 トーマスに武具を渡し、先に休んだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ