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仙神国オーベルフォール


 次の日、夕方前には目的地に着いた。

 仙王が治める国『仙神国オーベルフォール』だ。

 自然に溶け込むように、石造りの建物が綺麗に並んでいる。遥か先に見える大きな山々、その麓に広がる広大な湖に浮かぶ、あの城が仙王の居城だろう。


「これは綺麗な国だなぁ……あの聳え立った城、異世界に来たみたいだ……」

「ここがジュリアの国かぁ。会えるかな」

「じゃ、まずはホテルにチェックインしようか。その後、城の門番に里長の手紙と僕らのホテルの部屋番号を渡そう。返事がホテルに届くはずだよ」


 さすがトーマスだ。

 段取りをすぐに提案してくれる。



 適当なホテルにチェックインし、仙王の城に向かう。

 かなり大きな町だ。城まで一直線に伸びる美しく舗装された大通りには、夕刻にもかかわらず多くの人々が行き交っている。

 皆、眼が青い。髪色はまちまちだ。


 大通りの幅そのままに、湖に浮かぶ城までを繋ぐ橋を渡ると、立派過ぎる石造りの門が出迎えた。二人の門番に声を掛ける。

 

「こんにちは、龍王様の手紙を届けに参りました。仙王様への取次をお願いします。私共の宿泊先の部屋番号もお渡ししておきますので、お返事はこちらにお願いします」

「龍王殿からの……。こちらでお預かり致します」


 手紙には里長の魔力が込められている。

 必ず仙王の元に届けられるだろう。


 街を散策しよう。

 日が沈み始め、街灯が灯り始めた。大通り沿いの店の灯りが、賑やかに歩く人々を照らす。


「一通り歩いたな。ホントに綺麗な街だなぁ。でも、そろそろ腹減ったな……」

「門番さんにおすすめ聞けば良かったね」

 

 ホテルへの帰り道、三人でキョロキョロと店を探すが、選びきれない。


「店選びは、エミリーに任せる! 何せあなたは大富豪だから!」

「んー! 責任重大だね……。ココだー!」


 エミリーが適当に選んだ、門構えから高そうなお店に入る。冒険者丸出しな格好の場違いな三人に、華美な服装の人々の視線が刺さる。

 ユーゴとトーマスは怯んだが、エミリーは案内に付いていく。ペコペコと頭を下げながら円卓に案内され、席に着いた。


「いらっしゃいませ。当店はおまかせのディナーコースのみとなりますが、宜しいでしょうか?」

「えぇ、大丈夫よ」


 エミリーがすまし顔で答えた。

 一品づつ運ばれて来るシステムのようだ。

 

「こちらは前菜の、パテ・ド・カンパーニュでございます」


 ――は? 何だって……?

 

 両側に並んだ食器の数々、何故こんなに並んでいるのか、使い方も分からない。


「皆、食器は外側から使うのよ」


 さすが王都の貴族出身。ナイフとフォークは外側から……なるほど。


 ――うん、何か分からないけど美味いな。


「お次は、エビのビスクでございます」


 ――ビスク……? 何だ? あぁ、スープか。ならそう言えよ!


「本日の魚料理は、マグロのポワレ・ミィキュイでございます。こちらの白ワインと共にお召し上がりください」


 ――もう、分からん。何だ? マグロの炙りか?


 旨い。ワインとの相性も抜群だ。

 エビにマグロ、この国は海にも面しているらしい。


「ソルベでございます」


 ――そるべ……?

 

 シャーベットが出てきた。


 ――うん、なんでこのタイミング? まだ、あるよな?


「お口直しよ」


 なるほど、エミリーが珍しく上品だ。


「続いて、肉料理でございます。仔ペガサスのロティ・ソース・マデラでございます。お次はこちらの赤ワインで」


 もう、ペガサスの肉である事しか分からない。焼き加減といい味付けといい、絶品だ。

 メインを飾るに相応しい。


「デザートです。フォンダン・オ・ショコラでございます」


 名前は難解だが、これも美味い。



 全てを食べ終わると、シェフが出てきて深々と礼をして語りかけてきた。


「お口に合いましたでしょうか?」

「えぇ、とても美味しかったわ。ごちそうさま」


 エミリーの振る舞いが貴婦人のようだ。


「ではお会計をこちらでお願いします」

「私が支払うわ。あなた達は外に出てなさい」

「いいのか? ごちそうさま!」


 支払いを終えたエミリーが出てきた。


「あぁー! 緊張した!」

「緊張してたのかよ。堂々としてたけど」

「半分以上何言ってるか分からなかった……」

「オレらには大衆酒場が合ってるんだな……」


 美味かった。けど、食べた気がしない。

 ユーゴとトーマスには上品過ぎた。


 

 ホテルに戻ると、フロントから手紙を渡された。


「何て書いてある?」

「明日の朝に使いをよこすから、一緒に城に来いってさ」

「対応が早いなぁ。さすが里長の手紙」

「んじゃ、ゆっくり休むか。また明日な!」

「おやすみー!」


 明日は仙王に会う。

 度の疲れはさほど無いが、身体を包み込むフカフカのベッドで深い眠りに落ちた。

 

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