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 日の光で目を覚ました。

 横を見ると、エマが寝息を立てている。

 最後に揉んでおこう。と思ったら、エマはゆっくりと目を開いた。


「おはよう」

「うん、おはよう。いいホテルだね、すごくグッスリ眠れたよ。じゃ、着替えて帰ろうかな……」

「うん、オレ達も今日出発だ」

「また会えるよね……?」

「うん、また来るよ。その時は店に寄る」


 綺麗な身体も見納めだ。着替えを観察する。


「じゃ帰るね。またね……」


 ハグとキスをして、ドアまで送った。

 前回の滞在とは全く違う、いい夜だった。


 着替えて朝食だ。

 先にトーマスが楽しんでいた。


「おはよう、昨日は楽しんだか?」

「おはよう、ユーゴ。僕は何もしてないのにおこぼれ貰っちゃったね。久々にいい夜を過ごしたよ。ジェニーちゃんはさっき帰った」

「なら良かった。またここ来たらあの店に寄ろうな」


 少しするとエミリーが起きてきた。

 ニコニコしてスキップしている。


「おはよう。上機嫌だな」

「おはよう二人共! 昨日はバカツキだったよ! 私の所持金聞いてビックリしないでよ?」

「倍くらいになったか?」

「ノンノンノンだよ。なんと! 1000万ブールだよ!」

「「えぇーー!!」」


 ――凄いな……ボートで無一文だったのに……。


「さて、朝ご飯食べて出発だ!」


 皆いい夜だったようで何よりだ。

 


 ◇◇◇



 

 お気に入りのビュッフェ形式の豪華な朝食をゆっくりと楽しんだ。

 さぁ出発だ。

 

「ついでにギルドで依頼を見ていかないか? 道中に依頼の魔物がいるかもしれない」

「そうだね、そのほうが効率的だ。期限も無いしね」


 冒険者ギルドに入り、横に長い掲示板を隅から隅まで確認する。南側の依頼のみをピックアップした。


「ペガサスとユニコーンがAランクだね。ケルピーってのがSランクか。詳しい場所は書いてないけど」

「馬だらけだな。一応三つ取っておこうか」


 依頼品は、ユニコーンは角、ペガサスは羽、ケルピーはヒレ。体皮も全て貴重らしい。肉は食用で売れるようだが、さすがに日が経つと駄目だろう。

 

「思ったんだけど、街道を走って行くのに武具の装備いらないよな」

「まぁそうだね。素手で倒せる魔物ばっかりだし」

「じゃあ、このまま行くか」

「次は仙神国だね!」


 仙神国までは二日もあれば着くだろう。

 その上、武具はつけずに身軽だ。まるでハイキングの様なノリで出発した。


 

 しかし、仙神国に近づくにつれ魔物が強くなってきた。


「今までの街道とはレベルが違うなぁ」

「うん、AからBランクの魔物が多いね。人族が仙神国に行くのはきつそうだ」

「まぁ、ハイキング気分なのは変わりないけどね! 刀だけ出しとく? 私は苦無で良いけど」

「遁術でもいいけど……春雪持っとこうかな」

「じゃあ、僕も双葉だけ持っておこう」


 馬の魔物はスレイプニルがほとんどだったが、依頼のユニコーンや、ペガサスもいる。大きな牛の魔物もいた。


「今日はユニコーンとペガサスの馬刺しだ!」

「なんて贅沢な食べ比べなんだ……」


 エミリーは苦無を巧みに操り、次々と倒していく。


 ユーゴとトーマスは、ユニコーンとペガサスの処理をする。ユニコーンの角は、見るからに高く売れそうだ。エミリーは大きな牛の魔物を仕留めてる。


「エミリー大暴れだね」

「今のあいつは大富豪だ、勢いが違う……」

「今日は馬刺しとすき焼き食べるよ!」

「いいねぇ。酒が欲しいな」


 

 日も沈みかけた頃、湖を見つけた。


「こりゃでっかい水風呂だな」

「今日は暑かった。ここでサウナにしようか」

「ユニコーンくらいなら、水着でも倒せるよ!」


 今日はサウナの火入れをトーマスに頼み、ユーゴはすき焼きの準備だ。エミリーは就寝用テント二つの設営を終え、中で水着に着替えている。


 サウナの準備は完了。

 たっぷり汗をかいて、湖にダイブした。


「あぁ、素晴らしいねぇ……」

「川とはなんか違うね……」

「この湖、なんかいるな……」


 魔物の気配が急速に近付いて来た。


「二人共! 上に駆け上がれ!」


 何かが襲いかかってきた。

 湖から駆け上がった三人に向け、馬にヒレがついたような魔物が水面から跳ね上がった。三人は丸腰で水着だ。


「馬が多いなこの辺は」

「もう馬刺しはいいって」

「依頼の魔物だね。ケルピーだ、Sランクだよ」


 三人は陸から応戦する。


「水魔法来るぞ!」


『守護術 炎牢・陣』

 

 ケルピーは、水圧を高めた水のレーザーを無数に放ってきた。

 が、トーマスの炎の守護術で蒸発させた。弱点属性なのに大したもんだ。


「ほぉー、あの水のレーザーいいねぇ。水遁でやってみよっか」


『水遁 水噴射!』


 水のジェット噴射がケルピーを貫く。が、致命傷にはならない。


「んー、名前がイマイチだけど、威力はいいね」

「よし、守りはトーマスに任せて、二人で烈風斬だ。風で斬ろう」


『風遁 烈風斬!!』


 ケルピーは湖を縦横無尽に泳ぎ回り、二人の風遁を巧みに避けた。


「水面に逃げるね。厄介だ」

「よし、オレが囮になるから、仕留めてくれ」


 ユーゴはそう言って湖に飛び込んだ。

 決して泳ぎが得意な訳ではないが、龍眼で対処ができる。


 ケルピーは湖に入ってきた獲物目掛けて、超高速で襲いかかった。

 水上に駆け上がると、ケルピーは水面からユーゴ目掛けて飛び出した。


『剣技 横薙一閃!』

 

 二人の斬撃が空中のケルピーを両断し、落下した死骸が水面に大きな水飛沫を上げた。


 ケルピーの馬刺しも食べ比べに参戦だ。

 


 サウナを三セット終えた、食事にしよう。

 すき焼きの匂いが食欲をそそる。


「エミリー、吟醸酒出してくれよ」

「はいよっ、トーマスも飲むでしょ?」

「もちろん!」


 お楽しみの馬刺しの食べ比べだ。

 三種類の赤身肉が並んでいる。面白い事に同じ馬でも三者三様、色も違えば肉質も違う。


「うん、ケルピーが美味いな。魔力の質が肉質に影響するのかな?」

「うん、僕もケルピーだ。他も美味しいけどね」

「すき焼きも美味しいね! 酒がすすんでしまうよ……そういえば、昨日は二人で飲んでたんでしょ? どこ行ってたの?」

「昨日は、レストランに紹介してもらったバーに行ってきた。Sランクの冒険者に絡まれたけど……」

「へー、次行ったとき私も連れてってよ!」


 ――なにっ……!?


「い……いや、カウンター越しに女性がいるバーだぞ……?」

「別にいいじゃん。なんでダメなの?」

「いや……駄目なわけじゃないけども……」


 トーマスは何も言わずに、馬刺しを酒で流し込んでいる。何故か魔力を極限まで抑えている。矛先が向かない様にしているらしい。


「うん……考えとくよ」

「さては、いやらしいお店だね……?」

「いや! そういうお店ではない!」

「ふーん、まぁいいか。カジノ優先になるだろうし」


 ――オレは何を言い訳じみた事を言ってるんだろう……。


 美味しい馬たちを頂いて、エミリー姫を二人で交代して守った。

 

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