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三人の英雄 7


「こんなに早く来るとは思わなかったが、まだ体力が有り余ってるから好都合だな!」

「兄さん、これ、援軍呼んだほうがいいっしょ……」

「ですね。アレク様、私達が魔王を抑えます。援軍を要求し、魔族軍と魔王を分断してください」

「分かったよ、メイリン。気をつけるんだよ」


 アレクサンドは大人しく使者を遣わした。

 

「あいつ、メイリンの言うことは素直に聞くな……」

「おい、メイファ! 後方支援頼んだぞ!」

「分かった。危ないと思ったら直ぐに突っ込むよ」

「なるべく我慢だ。お前らの隊は龍族の生命線だ、戦況を俯瞰で見て指示を出せ」

「分かったよ」


 腕を組んで一連の遣り取りを見ていた魔王が静かに口を開いた。 


「おい、龍族共よ。相談は終わったか?」

「えらく余裕なんだな、魔王殿」

「その黒い髪を久々に見るのでな。懐かしく思っていただけだ」

「そうか、ではご覚悟を。三対一でも卑怯だと思わないでくれよ、あんたの力を認めての事だ」

「あぁ、構わん。ワシは一人がいい。周りを巻き込まずに戦闘が出来る」


 魔王一人を龍族の兄妹三人で抑える。

 暫くすると援軍が到着し、各所の戦闘が激しくなった。


「久しいな、アスタロス」


 ――えっ、仙王が前線に来ている……。


「ほぉ、臆病者のラファエロじゃないか。貴様が前線に出てくるとはな」

「お前の相手は龍族がしてくれる。安心してお前の部下共をなぎ倒せると思ってな」

「ふん、好きにしろ。こいつらの後でぶっ殺してやる」


 ――すごいことになってきた……。


「リンドウ! メイリン! 行くぞォ!」

「よっしゃ、兄さんなら勝てるっしょ。守りは任せろ」

「治療は任せてください。脚が飛んでもくっつけてあげる」

「兄さん達を魔王の相手に専念させろ! 周りの奴らを近づけるな!」

 

 メイファは、後ろで戦況を見て指示をする。


「デケェの来るぞ。守護術だ」

「了解」


『守護術 堅牢・陣』

『治療術 継続再生』


 リンドウの守護術が三人を包み、メイリンが全員に継続治療術をかけた。


『火魔法 煉獄(パーガトリー)


 とてつもない炎が三人を包む。

 堅牢が……ない。


「とんでもねぇ魔法だな……来ると分かってても防げねぇ……」

「悪い二人共、守護術が持たない……」

「大丈夫だ、死んでねぇ」


『治療術 再生』

 

「治せばいいでしょう」

「あぁ、そうだな」


『剣技 (みなごろし)


 目にも止まらぬ無数の剣戟が魔王を襲った。

 魔王は魔力の障壁で防御する。


「お前……強いな……」

「特殊な能力があるんでね……当然言わなねぇがな」


 魔王の顔に焦りの表情が浮かぶ。


「魔族軍! こっちに増援よこせーっ!」

「させん」


 メイファの後方支援隊の出番だ。完璧に魔王と魔族軍の分断に成功している。


「良し、メイファ達が止めてくれる。リンドウ、個別で堅牢くれ。メイリンは継続再生かけ直しだ」

「「了解」」

「……来るぞ、三人で水遁だ」


『火魔法 火焔流(プレゲトーン)


『水遁 大津波』

『剣技 霧時雨(きりしぐれ)


 魔晶石で増幅された三人の水遁が、魔王の強力な魔法を打ち消した。

 大量に発生した水蒸気が晴れる前に、フドウは魔王に向け斬りかかった。彼には魔王の位置が手に取る様に分かる。


「グフッ……」

 

 フドウは完全に視えている。

 しかし、流石は魔王。魔力の障壁は堅く、致命傷を避けている。が、深手を負っているのだろう。肩が上下するほど息が荒い。

  

「あっちじゃ仙王殿とその孫が大暴れだ。増援も来ねぇ。あんたは部下を何だと思ってんだ。 自分の力を過信しすぎたな、オレは強いよ。終わりだ、魔王殿」


 たしかに、フドウは強い。相手の動きが読めるのは、剣術との相性が良すぎる。

 魔王は回復も追いつかない。


 フドウは何故か刀を鞘に収めた。


「おい貴様、この魔王に対して情けか……? ふざけるなよ」

「馬鹿なこと言っちゃいけねぇ。これで終わりだよ」


 フドウは刀を収めたまま腰を落とし、構えた。


『居合術 閃光(せんこう)


 練気術の高速移動を、抜刀の速度に乗せた一閃。一瞬で間合いを無くし、魔王の胴を切り離した。


「クソぉおー! 貴様らも道連れだァ!」


「――なんだ!? これは……リンドウ! メイファ! 皆を守れェー!」


 魔王は最期の力を振り絞り、叫んだ。


『禁呪 冥府神召喚(サモンハーデス)!』



 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 ― 


 

 ――何が起きた!?

 

 途轍もない爆発音と共に、辺りが一気に闇に染まった。

 あまりの事にさっきまでの激戦が止まった。辺りが静まり返っている。


 視界が開ける。

 魔王を相手にしていた三人が周りを守る様に立ったまま息絶えていた。

 魔王は跡形も無い。禁呪と言っていたが、自爆の類だろう。


「兄さん! 姉さん!」


 皆で駆け寄ったがもう遅い。治療術も何の意味も持たない。でも、三人は命懸けで皆を守った。そして魔王を葬った。


「龍族が、魔王アスタロスを討ち取ったぞー!!」


 メイファは大声で叫んだ。

 悲しむのは後回しだ。事実を伝え味方の士気を上げるのが先だ。


 その後、総大将を失った魔族は総崩れ。

 仙龍連合軍の大勝に終わった。

 

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