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二大マフィアの会合


 バーレオパルドの二階入口。

 ヴァロンティーヌとエヴァン、その他数人が丁度出てくる所だった。


「タイミング良く来たな、行こうか」


 歩きながら話を聞く限りでは、ヴァロンティーヌの実弟であるフェリックス以下、次期ボスのエヴァンを含む五人が最高幹部らしい。レパーデスからはその七人、エマとユーゴとロンの合わせて十人で向かっている。



「いいか、こっちからは手を出すなよ。あくまでも今日は不戦協定を結びに行くだけだ」

「分かっていますよ、うちにそんな好戦的な者はいない」


 マフィアはもっと野蛮で好戦的な集団だと思っていたが、レパーデスに関してはその物腰の柔らかさからか、知性溢れるスマートな集団の様に感じる。ただ、それが逆に不気味ではあるが。



 西の繁華街『オヴェスト・アベニュー』一帯が蛇神の王(ナーガラージャ)の縄張りだ、街の規模は東のソレムニー・アベニューとさほど変わらない。

 中心部にある領主の屋敷の周辺を境に東西に分かれている。


「オレこっちに来るの初めてだな」

「私も用事がないとなかなか来ないもん」



 大通りの呼び込みの多さはここも変わらない。流石にこの十人が歩いていると異様に映るのだろう、誰も声をかけてこない。


「あそこだな」


 大通りから路地に入ると、突き当たりに大きな屋敷が見えた。どうやらあれがナーガラージャの根城らしい。


 門前には大男が二人。


「レパーデスのヴァロンティーヌだ」

「お待ち致しておりました、こちらへどうぞ」


 厳つい風貌には似つかわしくない丁寧な対応だ。屋敷の中を歩き、一室に案内された。

 広い部屋に大きな正方形のテーブルが置かれている、奥には昇化した五人が座り、後ろに数人が(はべ)っている。


「よく来た、まぁ座ってくれ」

「あぁ、久しぶりだな。お邪魔するよ」


 ヴァロンティーヌとフェリックス、エヴァンが座り、促されエマとユーゴが席に着いた。


「まず、三連符(トリプレット)を壊滅させてくれた事には感謝しないとな。で、いきなり会合を持ちたいとはな、どういう用件だ」


 まず口を開いたのはナーガラージャのボス『リカルド・スネーク』だ。昇化しているため年齢は分からないが、40歳前後に見える。


「トリプレット……いつの話をしている。それ程までに私たちが会うことは無いということだな。今日ここに来たのは、ナーガラージャと我々の不戦協定を結ぶ為だ」


 リカルドが怪訝な表情を浮かべる。


「不戦協定だと……? 我々に何のメリットがある」

「私たちは東西で上手く住み分けが出来ている。トリプレットの様な奴らが出てこない限りは私たちが交わる事は無い。この際お互い手出ししないように、完全に東西で住み分けないかという提案だ。私たちが争う方がメリットが無いと思わないか?」


 二人の話に割って入るように後ろの若者が声を上げた。


「おい親父! コイツらもヤッちまえば良いだろ。話し合う事なんてねぇ!」

「うるさいぞディエゴ、下がってろ」


 息子か。

 向こうの親子の話を聞いてヴァロンティーヌが組んだ腕を解いた。


「おい……こいつら()ってどういう事だ……?」

「あぁ? テメェらのアジトにウチの構成員を()ったんだよ! オメェらは終わりだよ。Perchだっけ? そこにも数人遣ったからよ」


 リカルドは狼狽した表情で息子に向け声を上げた。


「なんだと!? 何を勝手な事を!」

「ウチが大きくなるチャンスだろうがよ。親父のやり方はヌルいんだよ!」


「おい、ロン」

「うん、行ってくる」


 ロンに刀を渡し、Perchに向かわせた。

 ヴァロンティーヌも四人の部下を向かわせた。


「おいリカルド、やってくれたな」

「待てっ……違う! こいつが勝手に!」

「息子の教育が足りなかったせいだろう」


 そんな事よりだ。


 ――エマの店に手下を遣っただって……?


 ユーゴは立ち上がり、魔力を全解放した。


「おい、バカ息子。Prechになんの関係がある……?」


 ユーゴの魔力に、ナーガラージャの幹部達の表情が強ばった。その為の全解放だ。

 ただ、ディエゴと呼ばれたバカ息子は魔力量を測れないようだ。


「あぁ……? バカ息子ってのは俺の事か?」

「お前以外に誰がいる」


 突っかかる息子をリカルドが急いで制止する。


「やめろと言っている! お前ら、こいつを抑えろ!」


 リカルドの指示でディエゴは取り押さえられた。


「お前みたいなバカ息子が動員出来る様な構成員はどうせ下っ端ばかりだろ? そんなのが何人束になってもPerchは潰せねーよ。もちろんレパーデスもな」


 もちろんこれは事実だが、横で狼狽えているエマを落ち着かせる為の言葉でもある。


 そうこうしているうちにロンが帰ってきた。


「全員店の前で伸びてたよ、ジェニーさんとニナさんが追い返したみたい。レオパルドも見てきたけど、おんなじ状態だよ」


「なんだと……? そんな……」


 ディエゴは信じられないといった表情で落胆している。


「なぁ、リカルドさんって言ったかな。こういうバカは後日オレに仕返ししてくるだろうな。その時はナーガラージャからのケンカと受け取っていいのか? オレ達がこの程度の組織を壊滅出来ないと思うか……?」


 ユーゴの啖呵でリカルドが狼狽えている。昇化しているとはいえ、人族にとってユーゴの魔力量は相当恐ろしいらしい。


「待ってくれ……こいつにはキツく言っておく。腹の虫が治まらんのならあんたの手で殺してくれても構わん……ヴァロンティーヌ、お前らの提案は理解した、不戦協定を結ぼう……」


「あぁ、分かった。ではこの書類に目を通して魔力を注げ」


 王国内の契約は、魔力を蓄える特殊な紙で書類を作成し、互いの魔力を注ぐ事で結ばれる。


「うちの次のボスはこのエヴァンだ。こいつの魔力で契約する」


 二つの組織の不戦協定は締結した。

 紙切れだけの約束だが、これだけ脅せば手を出してくることは無いだろう。


「そのバカ息子のした事は今回は大目に見よう。ただ、次は無いぞ?」

「あぁ……悪かった。組織内の規律を正すとしよう……あと、そちらに損害が出ていれば言ってくれ、もちろん修繕費は出す」


 


 ナーガラージャのアジトを後にした。

 目的は達した、悠々とソレムニー・アベニューに向かって歩く。


「まさか最高幹部同士の会合中にアジトに襲撃をかけるとは……バカというのは時に想定を上回ってくる物ですね、勉強になりましたよ」

「まぁ、そのバカのお陰でスムーズに協定が締結したんだ。感謝しようか」


 ヴァロンティーヌがユーゴの方を向き話しかけてきた。


「しかしお前の啖呵も大したもんだな。本気でビビってたぞアイツら」

「あのバカ息子には本気で腹が立ちましたよ。我ながら良く抑えられたもんだ」


「私達はいつとは言わないが、一、二ヶ月内にはここを出る。うちの管轄で店を開いているお前はうちとは無関係じゃない、また世話になる事もあるかもな。もちろん何かあれば言ってくれ」

「分かりました、ありがとうございます。ところでヴァロンティーヌさん、洋服はまだ作るんですよね?」

「いや、それも廃業だ。趣味程度では作るかもな」


 ――洋服……?


 不思議そうな顔をしているユーゴに気付き、エマが説明してくれた。


「ヴァロンティーヌさんは超有名ファッションデザイナーだよ。そっか……毎回新作を楽しみにしてたんですけどね……残念です」

「最期に新作を多めに出すつもりだ、お前の店に持っていくよ。お前は乳がデカイからな……また採寸に行くよ」

「ホントですか!? やった!」


 ――へぇ、デザイナーなのか。


 確かに凄くオシャレだ。ユーゴには分からない世界だが。



 Perchの前でレパーデスの面々と別れた。

 確かに店の前に十人ほどの男達が倒れている。中に入ると何事も無かったように営業していた。


「お帰りなさいませ、オーナー」

「ただいま。外で倒れてる人達は店の物壊してない?」

「えぇ、ジェニーさんとニナさんが二人で対応しました。店の中は無傷です」


 ――二人で……相当強くなってるんだな……。

 

 当の本人達は何事も無かったように普通に接客している。


「いやぁ……あと二年もあれば何が来ても大丈夫だな……」

「私たち相当強くなってるみたいだね。頑張るよ」



 とりあえず後顧の憂いは消えた、ここには一日で着く。ユーゴは里に帰る事にした。

 またエマも連れて帰ろう。

 

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