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王都の軍事演習


 数日後、北門付近の演習場。

 ウェザブール王都の軍事演習が行われている。ユーゴ達も顧問として参加している。


 今回も事前に部隊長クラスの兵が集まり、聯気(れんき)魔聯気(まれんき)について指導し、各部隊に持ち帰って貰っている。

 今回は難しい事はない、前回の演習から日が経っている為、皆が武具に錬気を纏えるようになっているからだ。聯気に変わったところで扱いは変わらない、あとは各自の精度を上げる修練を積むのみだ。


聯気(れんき)は人族にとって最適な戦闘法になるょ、これ以上は無いね」

「あぁ、あとはその精度だ」


 最前列に並ぶ騎士団はエリート集団だ。

 主に王城付近の警護に当たっているが、その戦闘能力の高さからこの広い王都の警備の指揮を執るのも仕事のうちだ。

 王都での登用試験に合格した者と、各町の登用試験を経て領主が推薦する者が騎士団学校に入学し、更に訓練を受け選抜される。その狭き門を抜けた者が、騎士団の紋章が刻印された防具を身に付けることが許される。

 ロンが目指しているのはそういう世界だ。


「騎士団以外の兵士たちも騎士団に登用されることもあるんでしょ?」

勿論(ロンモチ)だよ。ウェザブール王国は実力主義だからね」


 各部隊ごとに聯気(れんき)の指導が始まった。自然エネルギーの体内増幅は説明が難しくかなり難易度が高い、聯気(れんき)の精度を上げる修練として練気による空中歩行を兵士達にすすめた。


「この演習場もそうですが、軍の設備は全て北エリアに集中してますよね。万一の敵襲に備える為ですか?」

「そうだょ、そもそも人族が生み出された経緯が他種族に対する抑えだからね」


「北のギルドをあれだけ大っきくしてるのも、北エリアに冒険者を集中させる為でしょ?」

「あぁ、結果的にそうなってるね。ただ南北に分けただけだけどね」


 ここは人族の最前線。

 北の砦から通信が来ればすぐに北エリアから軍が出動する。


「そうだ、こないだ北のギルドで他の冒険者と依頼をこなしたんですよ、結局知り合いだったんですけどね」

「知り合い? 王都の?」

「あぁ、サンディだよ。ここでソロ冒険者してた」

「あぁ、サンディね……」


「で、冒険者の質を上げるためにも有料でもいいから戦闘指南するのはどうですか? 戦力は多い方がいい」


 王二人は二、三度軽く頷いた。


「なるほどね。ただ、冒険者にも無法者がいるからね……戦力(リョクセン)のバランスは難しいよね」

「そうか……確かに一癖も二癖もある人が多いですもんね」


 腕っ節が強い者が冒険者になる傾向が強い、ケンカっ早い者が多いのも事実だ。戦闘力を上げた冒険者が暴れたらそれこそ手をつけられなくなる。確かに必要ないところに戦力を削ぐことにもなりかねない。


「浅はかな考えでしたね……」

「でもね、王国人口80万人のうち冒険者の数って六万人くらいなんだょ。その内冒険者登録してる軍人が約四万人で純粋な冒険者って二万人くらいなんだょね。年々増えてはいるけどね」


 ――へぇ、少ないと見るか……どうなんだろな。


「この国で生活するには魔石が必要不可欠だ、うちの軍人(ジングン)が副業でギルドの依頼をこなしてるのが現状だね」


 冒険者カード所持者の殆どが王国の兵士らしい。だとすれば、冒険者への指導は軍事演習で事足りるという事だ。各町からも派遣されそれぞれに持ち帰る、新しい戦闘法のアップデートは問題ない。


 今回の軍事演習は更に人族の戦闘力を上げた。



 ◇◇◇



 演習後にオーベルジュ城の玉座横、いつもの部屋で話し合っている。


「アレクサンド達は新たな戦闘法を習得しようとしているな。どんなものなのかは分からんが……」

「単純に考えると悪魔族の戦闘法であろうの」


 千里眼でアレクサンドの視界を見た様だ。

 その力があれば向こうがどう動くかが分かる。しかも向こうはそれを知らない。


「そういえば、眼の力は願望だと言う事でしたけど、仙王様はどうして千里眼を開眼したんですか?」

「えっ……? いやっ、どうだったか……昔の事だ、忘れてしまったな……」


 いや、忘れた感じではなさそうだ。

 あの目の泳ぎ様は、おそらく言うのが恥ずかしい系のやつだろう。


「色恋話だよ、こいつの最初の妻がどんな景色を見てるのかが気になっ……」

「あぁーッ!! それ以上は言うなティモシー!」

「良いじゃねぇか別に、あいつ不思議な奴だったもんな。お前が気になるのも仕方ねぇよ」

「言うなというのに!」


 何となく分かった。

 前の妻と付き合う前の話だろう。素敵な話だと思うが、本人からすれば恥ずかしい話なのだろう。


「まぁ、そんな事はどうでも良い……」と顔を赤らめながら仙王は話を進める。


「向こうには懐かしい顔がある、アザゼルとラミアだ」

「へぇ……原初の魔族じゃねぇか。あいつらまだ生きてたのか」


 ――マモン達は原初の魔族まで引きずり出したのか。


 原初の鬼族も居ると言っていた。その魔族二人は初代魔王の側近だったようだ、かなりの使い手だろう。


「何日も同じ事を繰り返している、相当難易度の高い戦闘法なのだろう。当分動くことは無さそうだ」


「では、我々も気力のみで空を駆ける修練を積む事にしようかの。仙王は仙神国に帰るのか?」

「そうだな、数日したら帰るとするか」

「あぁ、少しゆっくりしようや」

「では、儂らは明日くらいには出るかの?」


 ユーゴ達は里長に従う、皆で頷いた。


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